不登校の子どもへの後悔している言動とありたい対応〜調査結果・保護者の経験談から
自分の子どもが行き渋りを始めたり、学校を休み始めたりしたら、不安や動揺を感じる保護者は多いでしょう。「何があったんだろう」「こんな時どう対応すればいいんだろう」「うちの子は、この先どうなるんだろう」……いろいろな思いが心の中を駆け巡るはずです。
この記事では、不登校初期の子どもに対する言動で保護者が後悔していることを、調査結果や経験談をまじえて紹介します(経験談は、不登校オンラインにお寄せいただいた独自の内容です)。
さらに記事後半では、「後悔の体験談」と、こうありたいと考える対応にも触れていきます。
「誰かに相談したいけれど、誰に相談すればいいかわからない」。
こんな思いを抱えている方に、子どもへの関わり方や自分の心の持ちようについてのヒントをお届けします。
目次
【調査結果】すべきではなかった対応1位は「登校刺激をした」
不登校の子どもをもつ保護者を対象に「行き渋りを見せた子どもにするべきでなかった対応」を質問したアンケート調査があります。
調査結果によると、回答数の上位は次のようになっています。
- 1位:「登校刺激をする」(62.5%)
- 2位:「不満を表す」(13.6%)
- 3位:「理由、思いを問い詰める」(6.8%)
多くの保護者は「できれば学校に行ってほしい」「不登校になってほしくない」と考えるものです。その気持ちから、行き渋る子どもを追い立てるように登校させることがあるかもしれません。
また、行き渋る子どもに、つい嫌な顔をしたり、きつくあたってしまったりすることもあるかもしれません。
しかし、後にその行動を後悔している保護者が多いことがわかります。
参考:PRTIMES「自殺が多い夏休み明け。「学校行きたくない」発言の子どもにするべきではなかった対応「登校刺激」「不満を表す」が計76.1%」」
保護者がした不登校の子どもへの働きかけで後悔していること
ここからは、保護者の経験談をふまえて、「後悔している子どもへの働きかけ」について紹介します。
1.原因を探りすぎる
【経験談】原因がわかれば不登校を改善できると考えていた
子どもの行き渋りが続いていたころ、私は「原因がわかれば対策を考えられて、改善できるかもしれない」と考えました。
そのため、子どもや担任の先生と話をしたり、ネットリサーチをくり返して、原因を探ろうとしました。
ところが、行きたくない理由を聞いても、子どもは黙るばかりです。私は「なんで行きたくないのか、言ってくれないとわからない」「なんでもいいから話して」と、追い詰めてしまったこともありました。
担任の先生は「お友だちとの関係は良好だし、学校生活でとくに問題はない。行事が続いて、頑張りすぎて疲れたのかな」といった見解を示します。私には、いまいちしっくりきませんでした。
不登校の原因やタイプをネットリサーチしましたが、結局、原因はよくわかりませんでした。わが子にぴったりあてはまるものはないようにも思えたし、複数の原因が少しずつ重なっているような気もしました。
原因を突き止めようがない場合も多い
学校に行きたくない理由は、ひとつではなくいくつも重なり合っていることが多いものです。例えば、「不登校に関する実態調査」における本人からの回答では、「友人との関係」「勉強がわからない」など、行きたくない理由が平均3つ上がっています。「特にない」とする回答もあります。
不登校の原因がわかることで、対策できることもあるでしょう。たとえば、不登校がいじめや発達障害などに起因している場合は、原因をふまえた対処が必要です。原因がわかることで、保護者が子どもの状況を理解・納得できるようにもなります。
しかし、「原因を探りすぎることにあまり意味はないかもしれない」という視点も持ち合わせておきましょう。
不登校の原因は複合的です。さらに、子ども自身が原因を把握できていないことも多く、原因を突き止めようがないケースもあるのです。
大切なのは、過度な原因追求ではなく、今、目の前にいる子どもの苦悩を受け止め、サポートしていくことです。
参考:
・文部科学省「不登校に関する実態調査」平成26年
・石井志昂「『学校に行きたくない』と子どもが言ったとき親ができること」ポプラ新書
・文部科学省「不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書」令和3年
2.無理に気持ちを聞き出す
【経験談】子どもの気持ちを知る必要があると考えていた
行き渋りが増えてきたころ、ある朝、子どもが玄関で泣き出して動けなくなったことがありました。私は、その姿を見て焦り、対処していくためには、とにかく子どもの気持ちを聞き出さなければ、と考えました。
夫と相談し、ちょうどその日仕事が休みだった夫が、子どもを釣りに連れて行くことにしました。青空の下、風や波のゆらぎを感じてリラックスした状態なら、悩みを打ち明けてくれるのではないかと考えたからです。
しかし、子どもは終始、無口だったといいます。帰宅するなり、自室に引きこもってしまいました。
聞き出そうとする姿勢は子どもに負担を与える
不登校が始まったころの子どもの多くは、混乱状態にあります。自分でも気持ちの整理ができず、うまく言語化できないことが多いのです。
保護者が気持ちを聞き出そうとすると、子どもは心理的な負担を感じます。しつこく聞き出そうとすると、信頼関係を損なうリスクもあります。
原因が「いじめ」や「友人関係」にある場合、子どもは「恥ずかしい」「心配させたくない」と考え、保護者に言えないこともあります。また、話そうとすることでつらい体験を思い出し、話せなくなることもあります。
話しづらそうだなと感じるときは、無理に聞き出さないようにしましょう。
保護者がすべきことは、つらい状況にある子どもを守ること、子どもが安心して過ごせる居場所を保つことです。「何かあったらいつでも聞くからね」と、一言声をかけておく程度がちょうどいいのです。
3.強制的に外に連れ出す
【経験談】よかれと思って連れ出したが空回りだった
子どもが完全不登校になり、自室に引きこもって過ごすことが増えました。言葉数は少なく、顔色は青白く、表情はこわばっています。
家で過ごすようになって1か月ほど過ぎたころ、「漫才を見に行かないか」と私から提案しました。子どもは日頃から漫才が好きだったからです。漫才を見て楽しい時間を過ごせば、明るい気持ちになってくれるのではないか。そう考えたのでした。
そして、当日、2人で劇場へ見に行きました。
それから1年以上経ったある日のこと。劇場での公演に出演していた芸人さんがテレビに出ていたので、「あのとき見たよね」と話しかけると、子どもはびっくりした表情でこう答えました。