
【不登校前兆期】親の「まさかうちの子が…」という気持ちが、気づきを遅らせる?子どもの「異変」を察知するための心構え【不登校の知恵袋】
お子さんのささいな変化に、すでに気づいている方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、「まさかうちの子が不登校になるなんて…」という気持ちが、その小さなサインを見逃すきっかけになることは少なくありません。
本記事では、不登校の前兆期における親御さんの心構えや、お子さんの「異変」にいち早く気づき、適切に寄り添うための具体的なヒントをご紹介します。
【不登校前兆期とは】
不登校は、前兆期→進行期→混乱期→回復期という経過を辿ることがよくあります。前兆期とは、「何らかの要因で、心理的な安定度が崩れていき、学校を本格的に休み始めるまでの期間」のことです。この記事は、主にこの時期のお子さんがいる保護者さんのための内容です。もちろん、それ以外の時期の方にもお役立ていただけます。不登校前兆期の記事一覧はこちら
【サポート団体を利用しましょう】
不登校のお子さんのことを、保護者だけで対応する必要はありません。不登校のサポート団体を適切に利用することで、お子さんも保護者さまも、「次の一歩」に進みやすくなります。サポート団体の探し方は、こちらの記事をご覧ください。
目次
子どもの「異変」に気づくための親の心構え
子どもの「なんだかいつもと違う」という変化に気づくには、まず親御さん自身の受け止め方が整っていることが大切です。心配しすぎず、かといって気にしなさすぎることもなく、ちょうどよい距離感で向き合えるヒントをお伝えします。
先入観を捨てる:「うちの子は大丈夫」という思い込みの危うさ
「うちの子は真面目だから(不登校にはならないはず)」「明るい性格だから(学校を好きなはず)」といった親御さんの先入観は、ときに子どもが発しているSOSのサインを見逃す原因になることがあります。
子どもは成長するにつれて、環境の変化や人間関係の悩みなど、さまざまなストレスを抱えるようになります。今まで問題がなかったように見えても、ふとしたきっかけで心のバランスが崩れることは十分にあるのです。
だからこそ、「まさか」という気持ちをいったん横に置いて、お子さんの今の様子を先入観なしに見つめ直す姿勢が大切です。
「気づいてあげられなかった」と感じることがあっても、自分を責めないでください。どんな親でも、変化に気づかないということはあり得ます。
小さな変化を見逃さない:些細な言動に隠されたSOSのサイン
不登校の前兆は、何か劇的な出来事として表れるとは限りません。ほんの小さな言動の変化として現れることもよくあります。。
たとえば、それまで楽しんでいたことに興味を示さなくなった、口数が減った、些細なことでイライラするようになった、朝なかなか起きられなくなった、体調不良を訴える頻度が増えた——こうした変化が少しずつ積み重なっていきます。
こうしたサインは一見すると「気のせいかな」と思うようなことかもしれません。けれども、「なんだかいつもと違う」と感じたことは、メモしておくのがおすすめです。後から見返すことで、継続的な変化に気づきやすくなります。
変化は、単発で起きるよりも、じわじわと続くことで“兆し”となっていくもの。違和感を軽くでも記録しておくことで、気づきの精度が高まります。
オープンなコミュニケーション:子どもが安心して話せる関係性を築く
お子さんの変化に気づくには、日頃からのコミュニケーションの積み重ねが大切です。お子さんが「安心して話せる」と感じられるような関係性が、何よりの土台になります。
「勉強しなさい」「早く寝なさい」といった一方通行の声かけでは、子どもは心を閉ざすかもしれません。そうではなく、「最近どう?」「ちょっと元気ないけど、大丈夫?」といった、気持ちに寄り添う言葉がけを心がけてみてください。
すぐに話してくれなくても、「話していいんだ」と思える空気をつくっておくことが大切です。話の内容そのものよりも、「親は、話を聞いてくれる」という安心感が、子どもの中に育っていきます。
子どもの「異変」を察知するための具体的なノウハウ
心構えを持つだけではなく、実際の行動に移していくことも大切です。日々の関わりの中で、お子さんの変化を見つけやすくするための工夫を紹介します。どれも特別な道具は必要なく、ちょっとした意識と観察の積み重ねでできるものばかりです。
行動の変化を記録する:客観的な視点で「いつもと違う」を把握する
「なんとなく元気がない気がする」「前より部屋にこもりがちかも」と感じたとき、記録をとっておくと、より客観的に変化をとらえることができます。
たとえば、起きた時間や食事の量、宿題の取り組み方、友人とのやり取り、趣味の時間の様子など。細かく書く必要はなく、ひとことメモ程度で構いません。
こうした記録を数週間続けると、「最近ずっとこうだな」といった傾向が見えてきます。曖昧な違和感が具体化されることで、対応の糸口も見つけやすくなります。
表情や態度を観察する:言葉にならない心のサインを受け取る
子どもは、言葉よりも表情や態度で気持ちを表していることが多くあります。以前はよく笑っていたのに、最近は無表情が多い。視線が合いづらくなった。そわそわして落ち着きがない。逆に、ぼーっとしている時間が増えた…。
こうした小さな変化には、心の中のしんどさがにじみ出ていることもあります。
たとえば、体調不良を訴えるときにも注目してみてください。本当にしんどそうか、それとも「行きたくない気持ち」をうまく言葉にできずにいるのか。表情や様子全体から、その背景を感じ取ろうとする視点が大切です。
持ち物や部屋の様子をチェックする:隠されたSOSの可能性を探る
部屋の散らかり方や、学校関連のプリントが放置されている様子、好きだった漫画やゲームに手をつけなくなっている状態など、持ち物や空間の変化からも、子どもの気持ちを読み取れることがあります。
もちろん、プライバシーへの配慮は必要です。勝手に引き出しを開けたり、日記を読んだりするような行動は避けましょう。
あくまで、「以前と違う雰囲気」を感じ取る視点で、変化を探してみてください。その“違和感”を丁寧に見つめることが、早めの気づきにつながります。
学校や友人からの情報を得る:多角的な視点から子どもの状況を把握する
家庭だけでなく、学校での様子や友人関係についても情報を得ることができれば、より全体的に子どもの状態を理解しやすくなります。
担任の先生に連絡をとり、提出物や授業中の様子を確認してみましょう。可能であれば、子どもの仲のよい友人と話す機会をつくるのも一つの手です。ただし、無理に聞き出したり、子どもに内緒で動いたりするのは避けた方がよいでしょう。
ここでも大事なのは、「登校を促すため」ではなく、「今の状態を正しく理解するため」という視点です。
専門機関への相談を検討する:早期の専門的なサポートも視野に入れる
お子さんのことを、親だけで抱え込む必要はありません。少しでも気になることがあるなら、できるだけ早めに専門機関に相談することをおすすめします。
学校のスクールカウンセラー、地域の子ども家庭支援センター、児童精神科など、信頼できる相談先を活用してみてください。早い段階で相談することで、対応の選択肢が広がります。
また、専門家の意見を聞くことは、親自身が安心するためにも有効です。「一人で抱え込まなくてもいい」という感覚が、冷静な判断力を取り戻す助けになります。
不登校の「始まり」に寄り添うために親ができること
お子さんに不登校の前兆が見られたり、実際に登校しぶりが始まったとき、親としてどう向き合えばよいのか迷うこともあるでしょう。
ここでは、プレッシャーをかけることなく、お子さんの気持ちに寄り添うためにできる5つの対応を紹介します。どれも「特別なこと」ではなく、日常の中で実践できるものばかりです。
まずは「聴く」姿勢を大切にする:頭ごなしに否定しない
お子さんが「学校に行きたくない」と言い出したとき、大切なのは、まずその言葉を受け止めることです。
「そんなこと言わずに行きなさい」「甘えてるんじゃないの?」といった否定的な言葉は、子どもの心を閉ざしてしまいます。
子どもが話す内容がよく分からなかったり、納得できなかったりしても構いません。まずは「そう思ってるんだね」と気持ちに寄り添い、話してくれたこと自体を肯定してください。
話の正しさよりも、「話しても大丈夫だ」と思える安心感が、信頼関係を築く一歩になります。
安心できる居場所を作る:家庭が心の拠り所となるように
学校がつらく感じられる時期、家庭がほっとできる場所であることは何より大切です。
温かいご飯を用意する、そっと寄り添って話を聞く、好きなものに没頭できる時間を尊重する——そんな「特別ではない日常」が、子どもにとっての支えになります。
「また外の世界に向き合えるようになるまで、ここにいれば大丈夫」。そんな空気を家庭の中に作っていくことが、不登校初期の支援になります。
学校との連携を密にする:状況を共有し、協力体制を築く
親だけで抱え込まず、学校と情報を共有していくことも重要です。
担任の先生やスクールカウンセラーに、お子さんの今の状態を率直に伝えましょう。同時に、学校での様子や先生の感じていることも聞くことで、状況を多面的に把握できます。
このとき大切なのは、「登校再開を目標にした指導」を求めるのではなく、「子どもにとって最適な環境とは何か」を一緒に考える姿勢です。無理に復帰を急かすのではなく、今できる支援を柔軟に探ることがポイントです。
焦らず、見守る姿勢を持つ:登校再開を急かさない
「このまま学校に行かなくなったらどうしよう」という不安から、つい「明日は行けるよね?」「ちょっとでもいいから登校してみない?」と声をかけたくなるかもしれません。
でも、お子さんの心がまだ整っていないうちに登校を促すと、プレッシャーを強めてしまう可能性があります。
親が焦る気持ちは当然ですが、「今はしんどい時期なんだね」と受け止めて、そっと寄り添うことが、結果的に子どもの回復を早めることにもつながります。
登校の再開は、ゴールの一つではあっても唯一の正解ではありません。社会とどうつながっていくか、その方法は人それぞれです。
親自身もサポートを求める:一人で抱え込まず、専門家の力を借りる
お子さんのことで不安を抱えるなか、親御さんご自身が追い詰められてしまうこともあります。そんなときは、「自分のため」にも支援を受けてください。
地域の相談窓口、スクールカウンセラー、親の会など、つながれる場を探してみましょう。「自分だけじゃない」と感じられるだけでも、心が少し軽くなるかもしれません。
親が穏やかでいられることが、子どもにとって何よりの安心になります。だからこそ、自分を支えることも、子どもを支える一部なのです。
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まとめ:「まさか」を手放し、子どもの小さなサインに気づくことから
「まさかうちの子が不登校になるなんて…」
そう思うのは、ごく自然な親心です。でも、その「まさか」という思い込みが、子どもが発していた小さなサインを見逃す原因になることもあります。
変化は、突然訪れるとは限りません。じわじわと、気づきにくいかたちで始まっていることもよくあります。だからこそ、先入観を手放し、「いつもと違う」に気づけるアンテナを立てることが大切です。
この記事で紹介した心構えや具体的な方法は、どれも完璧にできる必要はありません。少しずつ、できるところから取り入れてみてください。
そして、気になる変化が見られたときは、一人で抱え込まず、信頼できる相手や専門機関に相談してみてください。
不登校の始まりに寄り添うことは、簡単ではありません。でも、親御さんの温かい理解とサポートがあれば、お子さんは少しずつ安心を取り戻していけるはずです。
登校することだけがゴールではありません。子どもが自分らしく生きていける道を、一緒に探していく——その姿勢こそが、今の子どもにとって何よりの支えになるのです。