不登校と「勉強の遅れ」塾探しの前に親がすべきたった1つのこと【全文公開】

 子どもが不登校になると、親としても心配になるのが「勉強の遅れ」。親のなかに「せめて高校ぐらいは」という思いがあれば、なおさら焦ってしまうテーマでもあります。そもそも、勉強の遅れは取り戻せるのか。また、親としてどのような心構えで子どもと向き合い、やるべきこと・やってはいけないことにどのようなことがあるのか。専門家の指摘をもとに考えます(※画像はイメージです)。

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 「勉強の遅れ」は、不登校の子どもだけでなく、親にとっても大きな悩みの1つだと思います。そこで今回は「勉強の遅れ」について考えていきます。学校へ行かなくなると、勉強の時間は往々にして減ります。その間、学校では容赦なく授業が進んでいきますから、「同級生と比較して自分は遅れている」と子どもは焦ります。だからと言って、すぐ勉強が手につくかと言えば、そうではありません。高1の夏休み明けから不登校になった田中ありすさんもその1人。

 卒業が近づくなかで、田中さんは塾に通い始めますが、当初は机に向かってペンを握ることすらままならなかったと言います。もともと勉強が得意で優等生だった田中さんにとって、同級生だけでなく、かつての自分と今の自分を比較することで苦しくなり、涙が止まらなかったという胸の内を語ってくれました。

取り戻せるのか

 そもそも、「勉強の遅れ」は取り戻せるのか。この疑問について、臨床心理士として15年以上に渡り、子どもの支援に携わってきた緒方広海さんは「もちろん取り戻せます」と言います。緒方さんが見てきたなかには、小学校6年間と中学校1年の計7年間、不登校をしていたお子さんがいました。小学校の勉強はまったくやらず、中学2年生から高校受験の勉強を始めたその子は、希望する学校に無事合格できたとのこと。「勉強の遅れ」を取り戻す期間は人それぞれですが、たとえば3年分の遅れを取り戻すのに同じ年月を要するわけではない、ということが言えます。また、緒方さんは勉強をする習慣について「本人がやる気になった時点からで大丈夫」と断言します。また親にとって大事なことは「今、その子にとって必要な学力とは何か」を考えることであり、必要のない勉強を嫌々やらせることで勉強嫌いになってしまうと警鐘を鳴らします。

 

雑談の時間を

 親御さんのなかには「勉強してほしい」という気持ちをグッとこらえている方もいるのではないでしょうか。では、そんなときに親にできることは何か。不登校や高校中退者を対象とした学習塾「河合塾COSMO」の高岡利州さんは「不安になってもしょうがないと開き直ったうえで、親子の雑談の時間を大事にしてほしい」と言います。「勉強を促したくなったら、一呼吸おいて、他愛のない話をする。その際、勉強や将来の話はタブー」と、高岡さんは指摘します。つまり、まず大切なことは、ゲームや身近なニュースなどの雑談を通じて、子どもの気持ちをリラックスさせるということです。10年以上に渡り、子どものサポートをしてきた高岡さんいわく、「なんとしてでも高校や大学へとの思いから塾をすすめる」など、親が先走りしてしまうケースはうまくいかないこともあるとのこと。子どもの関心事について話しあうなかで、「〇〇の仕事をしてみたい」などのゴールが見えたとき、勉強や進学先などについて、逆算して道筋を立てることができる。こうしたアプローチが重要だと、高岡さんは指摘します。

 今回ご紹介したように、仮に「勉強の遅れ」があったとしても、それは取り戻せます。そして、親子の雑談から始めてみる。さまざまな子どもたちを実際に支援してきた方々からうかがった親の心構えと親にできること、ぜひ参考にしていただきたいと思います。(小熊広宣)

(初出:不登校新聞581号(2022年7月1日発行)。掲載内容は初出当時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)

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