子どもと保護者が教師の10倍認識する不登校の要因とは? 内田良氏が提言する「不登校」語りのオルタナティブ
教師が考える不登校の要因はおよそ3個。それに対し、不登校の子どもや保護者は7個以上の要因をあげている——調査で浮かび上がってきたのは、教師と当事者の間に横たわる、不登校の要因に関する認識の大きな開きでした。教育社会学者・内田良さんは、多くの教師が見逃している「ある要因」に注目し、不登校といじめがセットで語られすぎている現状に警鐘を鳴らします。
(プロフィール)
内田 良(名古屋大学・教授)
名古屋大学大学院教育発達科学研究科・教授。博士(教育学)。
専門は教育社会学。学校のなかで子どもや教師が出遭うさまざまなリスクについて、調査研究ならびに啓発活動をおこなっている。
著書に『教育現場を「臨床」する——学校のリアルと幻想』(慶應義塾大学出版会)、『校則改革』(東洋館出版社、共編著)、『ブラック部活動』(東洋館出版社)、『教育という病』(光文社新書)など。ヤフーオーサーアワード2015受賞。
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「いじめ」と「不登校」の連動
2022(令和4)年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、国公私立の小・中学校の不登校児童生徒数が約29万9千人と過去最多、小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数が約68万2千件と過去最多を記録した。
これを受けて文部科学省は、安心して学ぶことができる、「誰一人取り残されない学びの保障」に向けた取り組みの緊急強化が必要との観点から、「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」を発表した。
この取り組みに代表されるように、日本の学校教育において「いじめ」と「不登校」は最重要な教育課題に位置づけられている。
いじめも不登校も、子どもの学校生活ひいては人生を大きく左右しかねない事態である。その意味で今後も最重要な課題として私たちは関心を注ぐべきである。
だが一つ気がかりなのは、典型的なケースとして、いじめと不登校がセットで語られることだ。いじめと不登校を連結させる見方が、固定化されてしまう。「いじめを受けて不登校になった」との物語が、個別具体例の検証を経ないままに独り歩きしかねないのだ。
本記事ではあえて、いじめとは別の要因にも注目し、不登校語りのオルタナティブの可能性を探りたい。
不登校の「複数」の要因
私たちは、同じ時間、同じ空間を共有しているとしても、それぞれの目から見える世界はまるで異なっている。同じ学校生活を、楽しそうと感じる人もいれば、しんどそうと感じる人もいる。
個々に異なっているだけであれば、「世界の見え方は多様だ」で整理すればよい。だが、その見え方はしばしば、私たちが置かれた社会的立場によっても異なってくる。
子どもはいかなるきっかけで不登校になっていくのか。その見え方を、教師/児童生徒/保護者の三者間の比較から描き出した調査研究がある。