18歳以降の人生を見据えた選択肢〜通信制高校の「今」に迫る!
「ネガティブな事例が取り上げられがちな通信制高校。しかし、それは通信制高校の全体像を語っていない」。
株式会社プレマシード代表・岩田彰人氏は、そう力を込めます。通信制高校に対する考え方に「大きな変化」が起こっていると確信する岩田氏に、通信制高校の「現在地」をうかがいました。
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目次
「通信制高校は、やめとけ」? 全体像が知られていないからこそ、ネガティブな話題が目立っている
「通信制高校」と検索すると、「やめとけ」「人生終わり」といった、ネガティブなワードがたくさん出てきます。メディアでも「ネガティブ事例」が大きく取り上げられて、注目されがちです。
たしかに、「大変な状況の通信制高校生」がいるのは事実です。でも、それが通信制高校のすべてではありません。
今の中高生の保護者世代は、40代から50代半ばくらいの方が多いと思います。保護者世代が中高生だった30年前には、通信制高校へ行くのはかなりのレアケースでした。正直なところ、あまりいいイメージを持たれていません。
子どもたちにしても、通信制高校に対する悪いイメージこそないものの、やはり選択肢として提示されると一瞬躊躇(ちゅうちょ)します。
このように、ネガティブな話題や印象が目立つのは、通信制高校のことがいかに知られていないか、ということの表れでもあります。全体像が語られないなかで、深刻な部分だけが次々と取り上げられている。それが現状です。
なお、そうした「世間のネガティブなイメージ」があるからか、今在籍している生徒でも、友だちに「通信制高校に行ってる」と言いづらいという人もいます。
ネガティブワードへの反論として、通信制高校の生徒が大人の「リバースメンター」に
私たちプレマシードは、通信制高校に関する情報発信をしています。
プレマシードのウェブサイトを見ていただくと、トップに10代の若者が登場しています。この若者たちは、現役の通信制高校の生徒や卒業生。そして実は、プレマシードの「インターン」なんです。
通信制高校に関するネガティブワードに対する一番の反論は、実際に通信制高校に通っている生徒たちの存在です。インターンたちによる発信は、大人が小難しい文章で長々と説明するよりずっと説得力があるし、何より当事者である10代に「刺さる」。
インターンたちが担っている役割は、当事者に対する「メンター」ともう一つ、大人に対する「リバースメンター」です。
「リバースメンター」は聞き慣れない言葉かもしれません。例えば、企業などで若手社員が年配の上司にSNSについて教える場面など、通常とは立場が逆になることがあります。このときの若手社員は、上司の「リバースメンター」。こういう使い方がされている言葉です。
プレマシードのインターンは、子ども世代から保護者世代に向けての情報発信・メンタリングをしている。そういう意味でリバースメンターなんです。
もちろん、私たちプレマシードで働く大人もインターンから学ぶことが本当に多い。インターンたちと話していると、いろんなことをめちゃくちゃ深く考えていることがわかります。さらっと言った言葉に、キャッチコピー並みのパワーがある。自分が高校生のころに比べたら、インターンの若者たちのほうが断然「オトナ」です。
不登校は「行けない」から「行かない」へ。通信制高校の積極的な活用
プレマシードのインターンたちも含め、通信制高校の生徒には不登校経験者が少なくありません。私が通信制高校の情報発信に携わって20年になりますが、その間に、不登校に対する考え方がかなり変化しています。
かつてのキーワードは、「復学(=在籍している学校への登校再開)」でした。メディアが発信する内容も、「復学」「出席認定」。そこに、受け取る側のニーズがあったんです。
しかし次第に、不登校への認識が、全体的に「学校へ行けない状況」から「学校へ行かない選択肢」へと変わってきているように思います。
乱暴な言い方をすると、中学校までは義務教育なので、無理して登校を再開しなくても「卒業」はできますしね。
ところが一方で、学校が持っている「福祉的要素」は、小学校、中学校、高校と上がっていくにつれて薄れていきます。成長にともなって、ケアが減っていくのです。もちろん、高校の入学や卒業は、義務教育と同じようにはいきません。
こうした状況も受けて、例えば中学生については、かつての「登校再開して全日制高校への進学を目指す」という方向から、「不登校から積極的に通信制高校を活用する」方向へと、流れが変わってきています。
18歳を過ぎたら「社会」へ出る現実。通信制高校のキャリア教育は手厚い
不登校の子どもをサポートする場であまり論じられていないのが、「今は子どもでも、18歳を過ぎたら『社会』に出る」ということです。
もちろん、高校留年、浪人、病気療養、引きこもりなどの例外はありますし、長い人生では「お休み」の時期があっていいとも思います。しかし少なくとも、18歳を過ぎると「成人」であり、「子ども」ではなくなるのです。
「無理して中学・高校へ行かなくてもいいよ」。それはそうなんです。まずは、目の前の子どもに何が起こっているのか、それにどう対応したらいいのか。保護者の方がまず考えるのは、当然そこだと思います。
じゃあ、その後どうするのか。サービスを提供する側、たとえば中学校や全日制高校の先生が、18歳を過ぎた後のことをどこまで考えて、議論しているか。まだまだ足りていないと思います。
「大学に進学したい」「就職(自立)したい」などと積極的に思う生徒もいれば、「家庭の事情で、就職(自立)せざるを得ない」という状況の子どももいます。
「自立に向けたキャリア教育」は、通信制高校は全日制高校よりもはるかに進んでいます。通信制高校の方が、「もう目前に『18歳』という問題がある。どうにかして18歳で自立させなければ。緊迫した状況である」ということを、切実に認識しているからです。
これまで、通信制高校は「高卒資格さえとっておけばいい」という文脈で語られがちでした。でも今の通信制高校のトレンドは、「どうやって、生きていくための力をつけるか」です。
関連して、保護者の方に声を大にしてお伝えしたいのは、「特に全日制の学校という場所は、社会のなかではかなり特殊な環境である」ということです。「一斉に授業受けて、みんなで同じことをする」。そういうことは、社会に出たらありません。
通信制高校で得られる「余白の時間」
義務教育で不登校になったら、最初は「休みましょう」。
これはもう絶対です。とにかく休みましょう。この段階なら18歳までの猶予があります。
そこから「次の一歩」へのきっかけをどう作っていくのか。そこで、一番近道になるのが、第三者に頼ることです。
本人と保護者、家庭のなかだけでは、なかなか前進するのは難しい。親であっても、子どものことをすべて分かっているわけではないですよね。子どもも、親からあれこれ言われると「うるさいな」と思う。
フリースクールでもいいですし、通信制高校の「中等部」でもいい。在籍している中学校に戻ることを前提に考えなくていいんです。
中学校で登校再開せず、通信制高校へ進むことを選んだ場合、猶予期間に自由に使える時間が多くなります。中学生の間は心身を休める時間として使うこともできます。高校1年生では学校に慣れるだけで十分。そして、2年生くらいからなんとなく動き出す。
こうしてできた「余白の時間」に、いろんなことを考えることができます。社会で必要とされているのは、「問いを立てる力」と「問いを実行する力」だと言われています。通信制高校の生徒には、その力をつける時間がたっぷりあるのです。
もちろん、その余白の時間を使って大学受験を目指したっていい。「進学コース」でなくても、塾を使ったり、総合型選抜を受験したり、やり方はいくらでもあります。
「通信制高校のリアル」はぜひイベントで!
ここまで、通信制高校をめぐる状況をお伝えしてきました。通信制高校選びのポイントや、生徒たちのリアルな「学校生活」については、ぜひイベントで詳しくお話ししたいと思います。
みなさんとオンラインでお目にかかれるのを、楽しみにしています!
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【2024年11月8日開催!】オンラインイベント「不登校の子どもの支援先・学ぶ場所の探し方・選び方と、通信制高校のリアル」