「PTAは加入も活動も強制なしで!」 全国PTA連絡協議会代表理事・長谷川浩章氏インタビュー

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「PTA入会への圧力がつらい」「役員や担当を拒否できない」。
不登校オンラインの保護者アンケートでも、多くの方がこのように回答されています。

一般社団法人 全国PTA連絡協議会代表理事・長谷川浩章氏は、こうした相談が不登校の子どもの保護者だけでなく、さまざまな事情のある保護者から寄せられると言います。
PTAの新たな全国組織を立ち上げた長谷川さんが訴える、PTAへの負担感を招く根本的な要因とは?

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編集

不登校オンライン編集部

インタビューにお答えいただいた方

長谷川浩章

 

あえての新PTA全国組織。そのねらいは

——全国PTA連絡協議会(全P)はどのような理念を持って立ち上げられたのでしょうか。

全Pは設立してちょうど2年経過したところです。
ご存じの通り、PTAを束ねる全国組織としては「日本PTA全国協議会(日P)」があり、活動には長い歴史があります。全Pは、日Pのようないわゆる上部団体ではありません。

あえて別団体を立ち上げたのは、社会情勢が変わり、PTAもIT化やコンプライアンス問題などに直面するなかで、全国のPTAがフラットに繋がる組織が必要だと考えたからです。

——具体的にどのような活動をなさっているのでしょうか。

おもに2つの活動を行っています。

1つは、情報の発信・共有です。Webサイトを開設し、PTA活動のアップデートのため、コンプライアンスを前提としたPTAの運営方法やITの支援などに関する情報を発信しています。

もう1つがPTA活動に必要なサービスインフラとしての活動です。PTA活動が負担感なく楽しい活動となるよう、「あったらいいな」という観点でサービスを開発し、提供・紹介をしています。

例えば、各学校のPTA室のインターネット事情の改善です。PTAは学校内の組織ではなく独立した任意団体ですが、多くのPTAが学校内の部屋をPTA室として使わせていただいています。しかし、セキュリティの観点から、学校のインターネット回線は使わせてもらえないことが多いのです。

PTA室では、役員や委員のみなさんがご自分のスマホのテザリング機能を使って、パソコンをインターネットに接続している光景が見られます。そこで、PTA室で使用できるWi-Fiルーターがあれば、便利になるのではないかと考えました。

ところが、PTAは個人でも法人でもない任意団体なので、業者との契約が難しく、会長が個人で契約するということになってしまいます。そこで、企業と交渉し、PTAでも「みなし法人」として契約できるような仕組みを一緒に作って、全国のPTAへのサービス提供を行っています。

——なるほど。Webサイトを拝見して、どうしてインターネットのサービスをなさっているのか不思議だったのですが、とても腑に落ちました。

まもなく、ネット銀行も使えるようになります。ネット銀行も、個人か法人じゃないと契約が難しいですよね。

PTA会費は現金で集金するか、学校の給食費と一緒に銀行引き落としにするのが一般的です。でも、給食費と一緒に引き落としということは、学校がPTAの事務を代行しているということ。学校とは別組織であるPTAとして、望ましい状況とは思えません

PTAが独立して会費を集金する場合、これまでは現金での集金という方法が多かったのですが、会計担当者の負担が大きいので、クレジットカード決済やスマホ決済、コンビニ払いができるように、企業と連携を進めています。

(2025年1月からは、PTA名義でのネットバンク口座開設とデビットカード発行が可能になりました。)

——かなり細やかなサービスを提供されていますが、全Pの運営費用はどうされているのでしょうか。

会費はいただかず、サービスで提携している企業からの手数料などで運営しています。また、交通費などがかかるリアルイベントは、なるべく行いません。会議やセミナーもオンライン開催で、費用を抑えています。

現在私たちスタッフは、基本はボランティアとして活動しています。しかし、ボランティアで関わる人が、必ずしも十分なパフォーマンスを発揮できるとは限りません。

ボランティアだけでは賄えない業務や、専門性のある業務には、適正な報酬の支払いを行える組織、ボランティアに限定せずプロとしても携わっていただけるような組織を目指しています。

私たちは、直接子どもたちにはアクセスできません。全Pの活動は、直接子どもたちと関わる個々の保護者や団体としてのPTAをサポートすることが目的です。

ですから、今のところ子どもたちのイベントは考えていません。保護者をしっかり支えることが、子どもたちによい環境を提供することになります。そのために、保護者の学びの場、情報共有の場を提供したいと考えています。

PTAとしての不登校への働きかけが「圧力」になることも

——長谷川さんご自身にも、お子さんの学校でのPTA活動のご経験があるかと思います。その経緯を教えていただけますか。

私には子どもが3人います。学生もいますが全員成人しています。

PTAとの関わりの発端は、子どもの小学校のPTAです。小学校のPTAで延べ6年間、会長と副会長をしていました。

実は、もともとPTAや学校にはあまり関わりたくないと思っていたんです。自分から手を挙げたわけではなく、「やりませんか?」と言われて引き受けた、というのが実際のところです。

その後も空白期間を挟みつつ、PTA関連団体に関わり続けています(長谷川氏プロフィール参照)。

——長年PTAと関わられるお立場で、不登校のお子さんの保護者の方とPTAの関係については、どのようにお考えでしょうか。

「お子さんが不登校かどうか」の前に、保護者については次の4つのグループに分けられると思います。

  • Aのグループ:PTAに入っていて、コミュニケーションを楽しんでいる人
  • Bのグループ:PTAに入っていて「やらされ感」を抱いている人
  • Cのグループ:PTAに入っていないけれど話せる友だちがいる人
  • Dのグループ:PTAに入っていなくて孤立しがちな人

PTA活動のなかで不登校の情報共有ができる人(Aのグループ)は、もちろんPTAを使えばいいと思います。学校の情報もたくさん入ってきますし。

しかし、そうでない人に対してPTAとして何かしようとすると、かえって圧力になる可能性があります

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