
子どもの不登校、妻が夫に思うこと【不登校と夫婦関係のアンケートから(11)】【調査報道】
ウェブメディア「不登校オンライン」は、2025年3月12日〜25日に、お子さんが不登校・行き渋りである(であった)保護者さまを対象に、「不登校の保護者の夫婦関係」についてのアンケートを実施しました。
本記事では、そのアンケート中の「『子どもの不登校と夫婦関係』に関連して、配偶者の方に思うことをご自由にお書きください。」という設問にお寄せいただいたお声と、キズキ不登校相談員・伊藤真依からのコメントを紹介します。
※紹介内容は、回答原文をもとに、不登校オンライン編集部が類型化・再構築・編集を行ったものです。
※回答者:全て「妻(不登校の子どもにとっての母親)」、敬称略、順不同で、もりこ、すいーとぽてと、hum、なお、やまぐち、ま、み、みえころ、ごくらく、F母、153、Hideko、さくらママ、らい、ネルコ、Sakl、みも、あくう、すい、みーちゃん、子育てを楽しみたい、しんのすけ、yoshino、もも、よーちん、きんたろう、まー、コ、うつぼ、あじたま
目次
類型①:もっと寄り添ってほしかった
子どもが不登校になったとき、私はひとりで全てを抱えました。夫は「仕事があるから」と、自分から子どもに寄り添おうとしなかったのです。
どうして、自分の子どもなのに、その苦しみに目を向けようとしないのかが不思議でなりません。
本当は、夫婦2人でないととても乗り越えられることではなかったはずです。私は、ただ「一緒に見てほしい、話を聞いてほしい」と願っていたのです。
類型②:否定・無理解・無関心への怒り
夫は、私が何を話しても「そんなのわからない」「考えすぎ」と否定から入ってきました。
子どもの不登校についても、「それは甘えだ」と切り捨て、自分の価値観だけで物事を判断してしまいます。
私は夫のそんな態度に、心が折れました。そして、何も言えなくなり、何も期待しなくなりました。
類型③:もっと早く協力してほしかった
私は在宅勤務を調整しながら、不登校の子どもに向き合ってきました。後になって、夫も在宅勤務できたと知ってショックでした。
なぜもっと早く、一緒に動いてくれなかったのかと思ってしまいます。
もしあの時、協力してくれていたら、今とは違う景色が見えていたかもしれません。
類型④:感謝と成長を感じている
夫は、不登校に戸惑いながらも、少しずつ理解を深めてくれました。
考え方の変化が早く、「それでいいと思うよ、ありがとう」と支えてくれた姿勢には、心から感謝しています。
時にはぶつかることもありましたが、この経験がなければ築けなかった絆があると思っています。
子どもだけでなく、私たち夫婦もこの出来事を通して少しずつ成熟していったのだと思います。
類型⑤:「学んでほしい」「成長してほしい」
夫に言いたいのはただ一つ、「学んでほしい」ということです。
子どもと向き合うには、まず今の時代の子育てや不登校についての知識が必要です。それなしに、自分の経験や正論だけで語っても、子どもの心は閉ざされるばかりです。
学ぶ気がないなら、せめて黙っていてほしい。干渉するなら、責任ある態度で接してほしいのです。
類型⑥:感情の起伏・すれ違いへの疲れ
夫と話しても、気づけば喧嘩になっています。
子どものことを相談したいだけなのに、「意味がわからない」「もっと簡単に話して」と言われるたびに、私は傷つき、言葉を失いました。
そしてだんだん、話すこと自体が苦痛になっていきました。
類型⑦:母親にばかり負担が集中する現実への疑問
「子育ては母親の役目」
「父親は仕事していればいい」
そんな風潮の中で、私は子どもの不登校に全面的に向き合ってきました。
でも、夫は定年したら関係なくなる会社のために全てを捧げて、家庭には全く参加しようとしない。
この構造に、もはや疑問すら持っていないのではないかと思ってしまいます。
類型⑧:関係の再構築・再出発
一時は、夫婦としての絆が完全に壊れかけました。
けれど、不登校という出来事を通じてぶつかり合い、向き合い、話し合うなかで、私たちは新しい関係を築けたように思います。
まるで、一度離婚して再婚したような気持ちです。子どもが不登校になってくれたからこそ、私たちは夫婦として成熟できたのかもしれません。
類型⑨:子どもと夫の関係づくりへの希望
夫には、もっと娘に歩み寄ってほしいと思っています。私が橋渡しをしているけれど、それにも限界があります。
娘は、夫(=父親)からの愛情や関心を敏感に感じ取っています。無関心だと思われると、その信頼は簡単に崩れてしまうのです。
親子の関係は一朝一夕にはつくれません。だからこそ、少しずつでも時間をかけて関係を築いてほしいと願っています。
不登校相談員・伊藤真依(株式会社キズキ)のコメント
不登校をきっかけに夫婦のすれ違いが深まったとき「歩み寄らなきゃ」と思えば思うほど、かえって疲れてしまうことも少なくありません。
どちらか一方がずっと努力し続けていた場合、その“歩み寄り”自体が、すでに限界を超えた選択肢になっていることもあるのです。
そんなときに大切なのは、「関係を変えることだけが解決ではない」という視点です。
たとえば、「夫婦で一緒にやる」形を敢え敢えて目指さず、それぞれの役割や関わり方を再設計する。
あるいは、親の会やカウンセラーなど外部の支援者とつながり、伴走してもらう。
対話や協力を“今すぐ”求めず、「必要なときに頼める最低限の関係性を保つ」ことに絞る。
そういった、配偶者以外と協力する工夫で不登校の悩みにうまく向き合っているご家庭も多くあります。
すべてを“ふたりで”やることにこだわらなくていい。
大切なのは、「いかに疲弊しない選択肢をとれるか」。
その視点が、長い支援の道のりを歩くうえで、いちばんの土台になると感じています。
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