なぜ学校への連絡が必要なのか 元校長が明かす学校の仕組みと親の負担を減らすコツ
毎日の出席連絡や学校からの配布物など、不登校中の悩みの種になる学校対応。元公立小学校校長の福田晴一さんは「親御さんは、もっとストレスのない学校対応を選んでいい」と語ります。40年以上教育現場に携わってきた福田さんに学校の公務的な理屈を踏まえ、不登校の親のための学校対策をお話しいただきました。2023年1月12日に行われた福田さんの講演(主催・全国不登校新聞社)を抄録します。(編集・遠藤ゆか)※写真は福田晴一さん
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石井志昂(以下・石井)
本日、司会を務めさせていただきます、全国不登校新聞社代表の石井志昂です。はじめに福田さんに自己紹介をお願いできればと思います。
福田晴一(以下・福田)
みなさん、初めまして。福田晴一と申します。まずは、私の経歴をお話しできればと思います。私の教員人生には個に応じた教育というものが深く関わっています。
約20年間、東京都の小学校教諭を務めたあと、私は管理職として特別支援学校で働き始めました。もともと大学で特別支援教育については学んでいたのですが、言語障害や肢体不自由などさまざまな障害を抱えた子どもたちと実際に向き合うなかで、真の個に応じた学校・教育というものをあらためて学びました。
ご縁があってアメリカの在外教育施設(海外に在留する日本人の子どものための教育施設)の校長も経験しました。当時、現地の小学校に通っていた娘から「ジョンは頭いいからもう中学の数学の勉強をするんだって」、「トムは勉強ができないからもう1回2年生をやるんだって」と話を聞いたことがとても印象に残っています。年齢や学年にとらわれないアメリカの柔軟な教育を肌で感じることができたのは貴重な経験でした。
そうして、日本の特別支援学校で4年、アメリカの在外教育施設で3年とさらに経験を積み、日本の公立小学校の校長になったのが2007年のことです。不登校に疑問を抱き始めたのもこのころでした。文部科学省が毎年実施している問題行動調査に不登校が含まれているのを見て「え、何これ?」と感じたことが始まりです。「不登校は問題行動ではないし、むしろ問題にしている日本教育のほうに疑問を抱いた」というのが当時、校長としての私の率直な感覚だったんです。その後は、不登校のセミナーに参加したりしながら、子どもたちと関わってきました。このセミナーで石井さんにも初めてお会いしました。
お子さんが不登校になると学校への対応でつらくなってしまう親御さんもいるかと思います。今日は、私の教職としての経験を通して、学校側の理屈をお伝えしたうえで、親御さんがすこしでも楽になれる方法についていっしょに考えられたらと思います。
教員の認識は
石井 よろしくお願いします。早速ですが不登校中、学校から毎日電話が来て苦しい、「宿題だけでも」と担任に頼まれるなど、学校からの対応にとまどう親御さんの声をよく聞きます。学校現場としては、どのような姿勢で不登校に向き合っているのでしょうか?