【不登校ママ、今月これ読みました】ベルマークはガス抜き!?『政治学者、PTA会長になる』
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昭和の遺物か、ママたちの駆け込み寺か。
「時代遅れ」「非効率」と敬遠されがちなPTAに、大学教授が飛び込み、3年間会長を務めた経験を綴った『政治学者、PTA会長になる』(著・岡田憲治、毎日新聞出版、2022年)。
昭和の慣習が残るPTAで、令和の親たちが直面する悩みとは?
そして、ベルマークに隠された意外な役割とは?
PTA改革のヒントが詰まった一冊を読み解きます。
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どうしてベルマークでチョークを購入するんだろう?
PTAというとベルマークを連想する人も多いのではないだろうか。
手のひらに貼り付くセロファンのベルマークや、切り取りにくいボール紙のベルマークを集めてPTAに持っていって、ようやくもらえるのは、チョークや黒板クリーナー。
小学生にとっては、正直、まったくうれしくないモノばかりだ。
購買部でも売っているチョークを、わざわざベルマークを集めて購入する行為を、子ども心に「コスパ悪いな〜」と思っていた。
家事や仕事の合間にちまちまとベルマークを集めている親たちは、もっと非効率を呟いていただろう。
「何者でもない」ママたちとPTA
『政治学者、PTA会長になる』は、令和のPTAの中に分け入り、3年間もPTA会長を努めた大学法学部の岡田憲治教授のエッセーだ。
PTAというお堅いテーマを、お堅い大学のセンセイが書いているのだが、気楽なブログを読んでいるような文体でスルスルと読めてしまう。
平成、令和の親子が「時代遅れ」「非効率」と思ってしまうPTAの慣習に、大学教授の年配パパが挑み、改革を試みる。
そもそも、PTAは、終戦後、それまで男性の「奥」に隠れて家の中で家事をしていた母を、戦後民主主義を担う「新婦人」として啓蒙し、地域やコミュニティの担い手として公的な場で活躍させるためにできた組織だ。
戦前は、家の中でお勝手仕事(※)ばかりしていた母たちは、PTAという活躍の場を与えられ、男性が会社で行っているような資料作り、会計処理、会議や決議を行うようになった。
※「お勝手」=台所。
外で働くことを許されなかった女性に活躍の場を与えるという意味では、PTAの役割は大きかった。
女性の社会進出が進んだ平成、令和になっても、子どものいる家庭の家事、育児の比重はは、どちらかというと女性の方に重くかかっている。
冒頭で散々に書いたベルマークだって、家で孤軍奮闘、子どもの世話をしているママたちが、ベルマークを切ったり貼ったりしながら旦那や義母、ご近所さんたちの愚痴を言い合うガス抜きの場として、現代でも機能しているのだ。
家庭で働くママの仕事は、会社と違って、誰も評価してくれない。
掃除をしてもご飯を作っても、それは当たり前のこと。
「がんばっても誰も褒めてくれないから……」とママたちは口を揃えて言う。
「何者でもないママたち」が、PTAの仕事をして評価されることで「私がんばったんだ」と自分をなぐさめられる…
男性で大学のセンセイで「何者か」である著者は、令和になっても「何者にもなれないママたち」に活躍と自己承認の場を与えるPTAの存在意義に気づくのである。
PTAは任意のボランティア。ボランティアは不平等なものだ。
そうは言っても、令和の時代に、昭和の慣習を残すPTAは不便である。
「必要ない」「やりたくない」とみんなが思っていても辞められない行事や役割が山ほどあり、「みんなやっているのに、自分だけやらない」ということが許されない同調圧力に満ちている。
筆者は同調圧力と闘いながら、「PTAは任意のボランティアだ」と力を込める。
ボランティアはそもそも不平等なものなのだと筆者は言う。
ボランティアに参加した人には負担がかかるが、参加しない人には負担がかからない。
だけど、参加した人には、ボランティアに参加したという「幸福感」が報酬として与えられる。
PTAも、参加したい人が「やってあげたい」と思うことをやればいい。
「ずっとそうやってきたから」「みんながやっているから」という空気やルールに満ちたPTAではなく、「やりたい人が集まって、やってあげたいことをやる」PTAに生まれ変われるように。
筆者の3年間の試行錯誤の軌跡には、そのためのヒントが詰まっているように思えた。
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