【不登校の成績評価】学校外の学びを成績に反映~多様な学びのカタチに合わせた新しい評価基準~
不登校の子どもたちが「学校以外で行った学習活動」を、成績として評価できることを知っていますか。
文部科学省の調査によると、令和5(2024)年度の不登校の人数は、小・中学校あわせて過去最高の約30万人。
もはや、不登校は珍しいことではありません。
不登校の人数が年々増えている中、COCOLOプラン(※1)をはじめとした公的な不登校のサポート制度も急ピッチで整えられています。(※1:COCOLOプラン(PDF)=誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策)
今回は、そうした制度のひとつ、「不登校の成績評価」について詳しく掘り下げていきます。
目次
1.「不登校の成績評価」、運用事例は10%のみ
不登校をしている子どもたちには、「学校以外であれば落ち着いて活動できる」というケースも多く見られます。
2024年11月1日、不登校オンラインが電話で行った取材に対し、文部科学省の担当者は以下のように話しました。
「活動の場所が学校ではないだけで、家や塾、フリースクールなどで活動している不登校の子どもたちは多く存在しています。
そうした子どもたちの頑張りを見逃さず、正当に評価すべきという考えから、不登校の児童生徒が学校外で行った学習を成績に反映する機会の拡大をはかっています。」
実はこれまでも、不登校の児童生徒の成績評価については、文部科学省から複数の通知が公表されてきました。
しかし、文部科学省の調査によると、令和5年(2024)度に学校外の機関等で専門的な相談・指導等を受け、指導要録上出席扱いとした不登校の児童生徒数は38,632人。不登校の人数全体の約10%のみです。(参考:文部科学省「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」)
文部科学省の通知を経ても、実際に学校外の活動が成績として認められたケースは大きく増えず、現場での制度浸透に課題が残り続けました。
2.法令明記で運用拡大を狙う
運用拡大に苦戦した背景には以下のような理由が考えられます。
- 制度自体の認知度が低く、不登校の家庭からの申請が少ない
- 制度適用の判断が各学校長にゆだねられており、学校によって判断の差が生じる
制度の適用実績を増やすべく、今年2024年8月、不登校期間中の成績評価制度について、法令に明記される動きがありました。
学校教育法施行規則
第五十七条
1 小学校において、各学年の課程の修了又は卒業を認めるに当たつては、児童の平素の成績を評価して、これを定めなければならない。
2 学校生活への適応が困難であるため相当の期間小学校を欠席した児童について前項の成績評価を行うに当たつては、文部科学大臣が別に定めるところにより、当該児童が欠席中に行つた学習の成果を考慮することができる。
<中略>
第七十九条
第四十一条から第四十九条まで、第五十条第二項、第五十四条から第六十八条までの規定は、中学校に準用する。※赤い部分が新設(参考:文部科学省「(省令)学校教育法施行規則の一部を改正する省令等について」)
これまでも制度として存在していた「不登校児童生徒の成績評価」ですが、法令に明記されたことで認知が高まり、適用ケースの増加が期待されます。
一方で、実際の運用には課題も残っています。
3.不登校の子どもには高すぎる、適用基準のハードル
成績に反映されるのは、学校の指導要領に即した学習内容に限定されています。
そのため、フリースクール等に出席し、少しずつ居場所を見つける段階にいる子どもたちには適用されない可能性があります。
具体的な学習に取り組めていない段階・状況の子どもたちにとっては、制度適用のハードルが高く感じられるかもしれません。
一方で、ICT(学習用タブレット)端末を使った学習が成績に取り入れられるケースが増えています。
外部とのつながりを持つことが難しい子どもたちに対しても、自宅学習で成績を伸ばす機会は失われていません。
4.成績反映には基準の「あいまいさ」がメリットに
成績評価に反映される学習内容については「指導要領に即したもの」と限定されています。しかし、学習の方法や程度については、詳細が明記されていません。
そのため、制度適用の判断に学校ごとの差が生じるという点は、依然として残された課題といえます。
ただ、適用基準があいまいになっていることは、必ずしもネガティブなことだとは限りません。
学びの方法が限定されていないため、様々なケースで成績が認められる可能性があるという見方もできます。
基準があまりに詳細に明記されていると、法令に書かれた例以外のケースでは制度の適用がされにくくなります。
適用基準があいまいになっていることで、法令によって想定されていないケースでも、都度の判断で柔軟に成績反映できる可能性があるのです。
5.制度の洗練には運用実績の蓄積がカギ
今後、成績として認められたケース、認められなかったケース、様々な実例をデータとして蓄積することで、さらに制度が洗練されることが期待されます。
ご関心を持たれましたら、学校に問い合わせるなどして、積極的にこの制度を利用してみましょう。
不登校オンラインでは、不登校に悩むひとりでも多くの方に、「不登校中の成績評価制度」について知っていただけるよう、今後も報じていきます。