
【不登校回復期】クーラーの効いた部屋で漫画ばかり…それでも「安定」かもしれない【不登校の知恵袋】
子どもはクーラーの効いた部屋で漫画・スマホ・ゲームばかり。「このままでいいのかな」と不安になる、夏の静かな日々。
でも実は、子どもの心が“整い始めている”証かもしれません。今回は、そんな日々の意味を見直し、親の心を整える視点をお届けします。
【不登校回復期とは】
不登校は、前兆期→進行期→混乱期→回復期という経過を辿ることがよくあります。回復期とは、「不登校状態ではあるものの、心理的状態が改善され、心的エネルギーが溜まりだし、一人での外出が自由になってくる期間」のことです。この記事は、主にこの時期のお子さんがいる保護者さんのための内容です。もちろん、それ以外の時期の方にもお役立ていただけます。不登校回復期の記事一覧はこちら
【サポート団体を利用しましょう】
不登校のお子さんのことを、保護者だけで対応する必要はありません。不登校のサポート団体を適切に利用することで、お子さんも保護者さまも、「次の一歩」に進みやすくなります。サポート団体の探し方は、こちらの記事をご覧ください。
目次
「何もしていない」ように見える夏。でも、それが“今の安定”かもしれない
一見すると無気力に見える過ごし方にも、意味があります。外からはわかりにくい、子ども自身の内面の変化に気づくための見方を整理しましょう。
子どもにとっての「安全地帯」を壊さない
不登校回復期の子どもにとって、自室や好きなことに没頭する時間は“外界からの刺激を最小限に抑えるための防衛策”です。
クーラーの効いた部屋で漫画ばかり読んでいても、落ち着いて過ごせているなら、まずはその状態が保てていることを肯定していいのです。
家庭内でリラックスできている時間は、心理的な「充電期間」。親が「そろそろ勉強を…」「外に出た方が…」と先を急がず、子どもが安心できる日常を静かに支える姿勢が、次の一歩につながります。
子どもの「好き」に意味を見出す視点を持つ
漫画、ゲーム、動画…。一見「無駄」と思えるものにも、子どもにとっての価値があります。その価値を親がどう理解し、どう受け止めるかで、関係性も変わってきます。
「好きなこと」を“遊び”として否定しない
回復期の子どもは、少しずつ心のエネルギーを回復させながら、自分の興味や関心を再確認する時期にいます。
たとえば漫画を読む行為も、ストーリーを追い、感情を動かし、自分と向き合うプロセスのひとつ。そこには、受け身ではない“思考”が存在しています。
親が「そんなことばかりしていていいの?」と否定的なまなざしを向けると、子どもは再び心を閉ざしてしまいかねません。
好きなことを通じて「今の自分」を確認している子どもを、あたたかく見守る視点が大切です。
「見守る」とは“何もしない”ことではない
見守るという言葉が、放任と混同されることがあります。実際には、見守るとは“子どもに合わせて寄り添い続ける”という能動的な関わりです。
気にしつつ、急かさず、信じて待つ
回復期は、一見すると停滞しているように感じる時期でもあります。しかし、子どもは心の中で小さなステップを踏んでいます。「朝は自分で起きるようになった」「コンビニにひとりで行けた」などの変化を、親が気づいて声をかけるだけでも、子どもにとって大きな励みになります。
大事なのは、「今日は出かけたから良い」「勉強したから偉い」といった成果ベースの評価ではなく、「今日も安心して過ごせたね」という“状態の安定”を価値として受け止めることです。
「焦る気持ち」との向き合い方──親自身の心のケア
「このままではダメかも」と感じる日もあるでしょう。周囲と比べて焦る気持ちが湧いてくることも自然なことです。だからこそ、親自身の心を整えることがとても大切です。
情報との距離を意識的にとる
SNSやニュースで「◯年生の夏は勝負」「◯◯ちゃんはもう塾に…」といった話題が目に入ると、無意識のうちに我が子を比較してしまいます。そのたびに、親は「動かなくて大丈夫なのか」と不安になります。
こうした情報に振り回されないためには、「今この子にとって、何が必要なのか」という原点に立ち返る視点が有効です。もし不安が強くなったときは、信頼できる支援者や第三者に気持ちを話すことも、親の大事なセルフケアのひとつです。
親自身の気持ちを整えるためにできること
子どもが何もしていないように見える時間が続くと、親としては「このままでいいのか」「もっと何か働きかけるべきでは」と、不安が募ってしまいます。
特に夏休みのように時間がたっぷりある時期には、他の家庭と比較してしまったり、「せっかくだから○○させたい」と焦ってしまいがちです。
こうした不安をやわらげるためには、「してはいけないこと」よりも「してよかったこと」に目を向ける姿勢が役立ちます。たとえば、「将来を考える時間を取ろう」として焦りすぎない、「他の親子のSNS投稿を見ないようにする」など、不安を煽る情報源を遠ざける工夫が効果的です。
また、「子どもが漫画を読んでいる時間=休息と回復の時間」と意識的に捉え直すようにして、「今日も特に何もなかったけど、落ち着いていた。それでOK」と自分に言い聞かせることも、心を守るための大切な行動です。
実際に、ある保護者は「今日は何もなかったことに感謝する」という日記を毎晩5行だけ書く習慣を始めたことで、日々の安心感が増したと話していました。
子どもの「何もしない時間」は、未来への準備期間
「エネルギーが溜まってきたら、自然と動き出す」──これは不登校回復期によく見られる現象です。
動き出すきっかけは、本人の中からしか生まれません。だからこそ、動いていないように見える時期は、“その準備”が進んでいると捉えてもよいのです。
「まだ」ではなく「今」の価値を見つける
「まだ学校に行っていない」「まだ友達と遊んでいない」ではなく、「今は家で穏やかに過ごせている」「今は自分の好きなものを楽しめている」といった“今”にある価値を拾い上げる視点が、親子の安心感につながります。
「漫画を読んで静かに過ごす子ども」への親の対応につまづきがあったエピソード
不登校オンライン(キズキ共育塾)が見聞きした、静かに過ごす子どもへの親の対応につまづきがあったエピソードを紹介します。
※個人の特定に紐づかないよう、複数の事例を統合・編集・再構成しています。
※これまでに同じような対応をしている親御さんを不安にさせるつもりはありません。その上で、「お子さんへの対応」は親だけ・家庭だけで対応しようとせず、不登校のサポート団体を利用することをお勧めします。
1:焦りの言葉が“居場所”を奪った夏
中学2年生の拓海くん。夏休みになってからは、ようやく自室から出て家族とごはんを一緒に食べる日も増え、穏やかな表情を見せるようになっていました。