不登校の子が陥りやすい”失敗恐怖症”〜「失敗してもいいよ」と許すことで、子どもは一歩踏み出せる〜
不登校の回復期の子が、勉強や学校から離れてしばらく休養するようにと勧められることはよくあります。
「好きなことをさせて、ゆっくり休養させてあげてください」。
このような医師やカウンセラーのアドバイス通りに、親は家の中の居心地を良くして、子どもの回復に努めます。
親の努力の甲斐もあり、子どもは少しずつ元気になっていきます。
家族と一緒であれば外出できるようになった、リビングで好きなテレビドラマを家族と観るようになった、このごろ笑顔が増えた気がする…
ところが、少なからぬお子さんは、元気になってきたにも関わらず、なかなか「次の段階」に進もうとしません。
- 「学校に少しだけ行ってみよう」という親や先生の働きかけを嫌がる。
- フリースクールや塾の見学に連れて行っても、通いたくないと渋る。
- 進路を考えてほしい年齢なのに、勉強や進路探しなどを全然しようとしない。
このような子の反応に、親は「せっかく元気になってきたのに、急かしすぎなのだろうか」と戸惑い、不安になります。
次のステップになかなか移行できないお子さんは、”失敗恐怖症”に陥っている可能性があります。
不登校の子どもは、失敗を恐れがち
”失敗恐怖症”というのは、文字通り、失敗することを極端に恐れている状態を指します。
ずっと家族としか話していない子が、同世代の子がたくさんいる場に行ったり、何年も勉強していない子が勉強を始めたりするとき、大きな恐怖に襲われることがあります。
不登校の子が何を恐れているかというと、「失敗」です。
- フリースクールや塾に行って、誰とも喋れなかったらどうしよう…
- 勉強して、全然わからなかったらどうしよう…
- 笑われたらイヤだな…
何かをやってみて失敗したら怖い。
それが、”失敗恐怖症”です。
失敗恐怖症の子どもの本音とは
失敗恐怖症の子がよく言う言葉の裏にある本音を紹介します。
「フリースクールなんてめんどくさい」
(=フリースクールに行って、また友だちができなかったらどうするんだよ)
「勉強する意味なんてあるの?高校(大学)に行っても就職できるとは限らないじゃん」
(=勉強して不合格になるよりも、何もしないほうがいいよ…)
「勉強するって言ってるでしょ!(と言いながら、ズルズルと何もしない)」
(=勉強して、わからなかったら恥ずかしい)
「定期テストはまだ受けたくない」
(=テスト受けて悪い点だったらどうしよう。できない自分を見たくない)
このような子は、怠けているわけでも、臆病なわけでもありません。
不登校の子は、それまで勉強面や人間関係の面での失敗があまりにも多かったため、「自分ができるかもしれないこと」を信じられないのです。
失敗恐怖症の子どもに効果的な声がけは、「失敗してもいいよ」
そのような子に、親はどのような声がけをすればいいのでしょうか?
親御さんとしては、「やればできるよ。やってみないとわからないでしょう」と励ましたくなるかもしれません。
ですが、”失敗恐怖症”の子にとって、励ましやポジティブな声がけは逆効果になることがあります。
励ましよりも効果的な声がけは、「失敗してもいいよ」というものです。
親御さん自身も、「失敗してもいいよ」と言われると、「頑張ってね」と言われるよりも気持ちが楽になりませんか?
この言葉はいろいろと応用できます。
- 「嫌だったら3日でやめてもいいから、フリースクール行ってみない?」
- 「失敗することも経験のひとつだよ」
- 「失敗するつもりで、ちょっとだけ学校に行ってみようよ」
ゲームに馴染みがある子には、「経験値」という言葉を使うといいかもしれません。
- 「模試の会場に行くだけでも、経験値が入ってレベルアップするよ」
- 「ゲームと一緒だよ。最初はうまくできなくて失敗しても、やってみることで経験値が身につくんだよ」
「失敗してもいいや」の気持ちが、次のステップにつながる
失敗してもいいと言われると、”失敗恐怖症”の子の気持ちは楽になります。
そして、「失敗してもいいや」というつもりで飛び込んでみると、意外とすんなりと友だちができたり、勉強ができたりするものなのです。
模試や受験については、親御さんから「失敗してもいいやというつもりでチャレンジしてごらん」と言ったときには、申し込み手続きを親子で行うのも効果的です。
不登校の子が元気になってきたけど、なかなか一歩踏み出せないという親御さんは、ぜひ、「失敗してもいいよ」を使ってみてください。
不登校オンラインでは、不登校の子や”失敗恐怖症”の子に効果的な声がけや接し方を、これからもご紹介していきます。
※”失敗恐怖症”はお子さんの状況をわかりやすくするために不登校オンラインが作った言葉であり、「医学的な病名」のことではありません。