不登校と発達障害の困りごとは「体の使い方」で解決! 「へやすぽアシスト」の取り組み
不登校のお子さんや発達障害のあるお子さんは、学校で次のような困りごとを抱えていた(いる)ことがあります。
- 字を上手に書けない。
- 板書をノートに写すのが苦手で勉強についていけない。
- 力加減がわからず、悪気なく友だちをバシッとたたいてしまう。
また、不登校になってからは、運動不足になりがちです。
そこで、オンラインで子どもたちへの運動支援を行っている個別運動教室「へやすぽアシスト」代表・橋本咲子さんにインタビュー!
橋本さんは、「体育が苦手」「転びやすい」といった運動の困りごとだけでなく、勉強や人間関係に関わる困りごとも「体の使い方」がカギだと言います。
いったい、どういうこと!?
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目次
運動や発達のプロによる「体の使い方」レッスン
「へやすぽアシスト」は、発達に心配があるお子さん、学校に行っていないお子さん、運動苦手なお子さんのための、オンラインの個別運動教室です。
運動や発達のプロが、「縄跳びが跳べない」「姿勢が崩れやすい」「よく転ぶ」など、お子さんの悩みに合わせ、マンツーマンでレッスンを行います。レッスンは1回50分、Zoom等を利用して行っています。
とくに、発達障害のあるお子さんは、脳の特性から、体幹が弱くなりやすいと言われています。軸となる体幹が弱いと、手足を上手に使うこと、姿勢を保つことのほか、鉛筆を握るといった細かい体の使い方に課題が生じやすくなります。
また、感覚の未熟さや体の使い方の不器用さが、実は、友だちとの距離感がつかめない、力加減がわからない、体育が苦手など、幅広い悩みにつながっています。
「へやすぽアシスト」のコーチにはは、理学療法士、作業療法士が90人以上在籍しており、「発達のピラミッド」を元に、体の使い方や脳と感覚の連携を指導する独自のプログラムを通じて、運動の上達はもちろん、日常生活の困りごとまで幅広くアプローチしています。
体がうまく使えると、子どもたちの世界が広がる!
入会時に、「何に困っているか」「何ができるようになりたいか」をヒアリングして、直近3か月の目標を立てます。3か月レッスンをして、何がどこまでできるようになったかを評価しながら次の3か月の目標を立てて、またレッスンを進めていきます。
目標は、学校の体育のシーズンに合わせたものが多いですね。たとえば、秋の運動会シーズンには「かけっこができるようになりたい」「運動会で踊るダンスができるようになりたい」。冬は「縄跳び」が人気です。
また、就学前のお子さん、とくに年長さんだと、小学校入学に向けて「椅子にしっかり座れるようになりたい」「板書を写せるようになりたい」 といった目標もあります。
子どもたちは、本当にびっくりするほど成長します。
たとえば、縄跳びが跳べるようになりたいお子さんを指導するとき、単に縄を使った練習をするではなく、まずお子さんの体の使い方から、どこに課題があるかを分析することから始めます。
運動を制御しているのは脳なので、感覚と脳の関係性を理解し、その課題に合わせて、例えば、「まっすぐ」その場でジャンプできるような運動あそびをしたり、腕を上手にコントロールするあそびを行ったりします。
実際に縄びを使った練習は、50分のレッスンのうち最後の5分ほどです。1か月・3回レッスンを受けるだけで跳べるようになったお子さんもいます(※)。
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ほかにも、自転車に乗れるようになったお子さんもいます。4年間乗れずに練習してきた子が、へやすぽアシストのレッスンをたった1か月間・2回受けただけで、乗れるようになったんです。
自転車に乗れるようになること自体もすばらしいですが、それ以上に、自転車で友だちと遠くに出かけられるようになって、その子の世界・コミュニティが広がることが、本当に尊いことだと思っています。
勉強も「体の使い方」からアプローチ
人間のあらゆる活動って、細分化すると、すべて運動なんです。
「文字を書く」ことも、「運動」なので、体の使い方で字もとても上手になります。字が枠からはみ出したり、フニャフニャになったりするお子さんは、ふざけて適当に書いてるわけではないんです。体の使い方が苦手だから、枠からはみ出しちゃう。筆圧の調整ができないから、薄くてミミズみたいな文字を書いちゃう。
でも、なぜそうなるかの理解がないと、「努力が足りない」と叱られて、お子さんは自己肯定感が下がっていきます。でも、これは努力の問題でも、しつけの問題でもなく、体の使い方や感覚の問題なんです。だから、お子さんも保護者も悪くない。正しいやり方を知らないだけなんです。
実際にこのお子さんは、レッスンの中では、鉛筆を握った練習はしていません。体の使い方と目の使い方を練習するだけで、こんなに格好よく字が書けるようになるんです。
たとえば、私たちは、「板書をノートに写すのが苦手で勉強についていけない」というご相談もよくいただきます。この場合、「きれいな姿勢で座る」「先生が書いている文字を追いかける」「文字の形を把握する」「黒板と手元の間で目の移動ができる」「文字をきれいに書ける」などの運動に課題があるわけです。
こういった課題を、一つ一つ分解しながら、体の使い方をしっかり身につけ、「できた!」を増やすことで、自信をつけていく。私たちはそういったアプローチをしています。
不登校の子どもの困りごとも、「体の使い方」から考える
運動教室というと、学校の体育での悩み、縄跳びやかけっこの練習をするところと思われがちです。でも、子どもたちが本当に困っているのは、やはり日常生活や勉強でのシーンなんです。
不登校のお子さんの困りごとの相談で、先ほどの「板書を写すのが苦手」というのはとても多いですが、学校での人間関係に関わるご相談もよくいただきます。
たとえば、「友だちとの体の距離感がわからない」「力加減がわからない」です。
鬼ごっこのときに、友だちを意図せずバシッっと力強く叩いてしまう。これは「力加減がわからない」という体の感覚の問題です。「優しく」とか「強く」がわからないため、バシッとタッチしてしまい、。悪気はないのに誤解されてしまい、仲間外れにされて学校に行きづらくなることがあるんです。
不登校の子どもたちのいろんな困りごとが、実は運動を通して解決できるということとを、ぜひ多くの方にお伝えしたいですね。
不登校の子どもの2大ニーズは「体の使い方習得」と「運動不足解消」
へやすぽアシストをご利用いただいている不登校のお子さんのニーズの1つは、ここまでお話ししてきた「体の使い方」に関わることです。前述のような、書字の悩みや日常生活での不器用さ、疲れやすさなど、困りごと自体は発達が心配なお子さんと、実はよく似ています。
もう1つのニーズは、運動不足の解消です。ずっと家にいると、なかなか運動する機会が得られず、健康体重を維持できないお子さんもいます。家の中でゲームをする時間が長く、姿勢が悪くなった、というお悩みもよくいただきます。
一緒に運動することで、親子関係も良好に
実は、レッスンを受けた結果として、「親子関係がよくなった」「笑い声が増えた」という嬉しい感想をよくいただきます。私たちのレッスンは、親子で受けていただくことを推奨しているのですが、とにかく楽しいことを大事にしています。
とくに不登校のお子さんは親御さんと一緒にいる時間が長いので、メリハリがなくなって、コミュニケーションが生まれにくいというお声をいただきます。レッスンでは、親子で楽しみながら、一緒に体を動かして汗をかくことで、リフレッシュできるだけでなく、スキンシップの機会も増えます。
そして、運動をするときは、親子がフラットな関係でいられるおもしろさがあるんです。親が子どもに勉強を教える場合は、どうしても「教える側/教えられる側」と「上下関係」ができますよね。でも運動は、メニューによっては、子どもが本気でやると、親は意外と勝てなかったりするんです。協力プレイがあったり、対決したりと、運動を通したフラットな関係性が、日常の親子関係にもいい影響をもたらしています。
レッスンがないときにも、コーチから習った運動メニューを使って親子で一緒に運動することで、日常生活に笑いが増えます。子どもたちはその運動が、縄跳びや字を書くことに効果的などと意識はしません。でも、そうやって遊んでいるうちに、いつの間にかいろんなものが上手になる。私たちは、それをとても大事にしています。
小さな成功体験の積み重ねが「次のチャレンジ」へ
私たちが提供しているプログラムは、理学療法士と作業療法士が作成しています。
これまで、90人以上のコーチたちと一緒に、700種類以上のメニューを作ってきました。どうやったら、子どもたちが楽しみながら、かつ成果が出るか、試行錯誤を積みながら日々メニューを開発しています。
これらの成果は、小児理学療法学会や日本神経理学療法学会、作業療法学会などで発表しています。
お子さんの困りごとにもよりますが、3か月レッスンをご利用いただくと、縄跳びなどの種目はもちろん、日常の中での体の使い方が変わってきた、とお声をいただくことが多いです。
また、体だけでなく、気持ちの変化も大きいというお声をたくさんいただきます。私たちは、とにかくスモールステップで、「できた!」という成功体験を積んでいくことを大切にしています。子どもたちは「できた!」という経験を積むと、「もっとやってみたい!」と、どんどんチャレンジするようになります。運動嫌いだった子たちが、「へやすぽ」をきっかけに体を動かすのが好きになっていく。
体を動かすようになると、エネルギーが湧いてくるんですよね。最初はお部屋の中で運動していたお子さんも、体を動かすおもしろさを思い出したり、知ったりすると、「もっと動きたい!」といつのまにか外に出るようになります。そして、自分から「次は自転車にチャレンジしたい!」「雲梯(うんてい)ができるようになりたい!」などと、どんどん自分から目標を言ってくれるようになる姿は、本当に感激します。
次回は「姿勢のひみつ」をご紹介!
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