発達障害・不登校の子どもの「好き」に、大人の目を向けてみよう!〜Branch代表・中里祐次氏インタビュー
「マイナス面に注目するよりも、得意なこと、好きなことをとことん突き抜けさせたほうがいいじゃない!」
オンラインフリースクールBranch(ブランチ)代表・中里祐次氏は、発達障害・不登校の子どもの「好き」を伸ばす居場所の提供を行っています。
中里さんがサービスを運営するなかで見えてきた、保護者にとって大切なものとは?
■イベント情報■
【12月6日(金)開催!】オンラインイベント「【ストップ不登校の孤独】フリースクール代表が教える「学校以外の居場所」の探し方」
きっかけは、レゴ
私の息子は小学校1年生のころ、アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)/ADD(注意欠陥症)と診断されました。言語能力が高く、相手にまっすぐに正論でぶつかっていくタイプ。クラスメイトとうまくつき合えなくて、行き渋りになった時期もありました。
小さいころの息子は、「東大レゴ部に入りたい」と言うほどの大のレゴ好き。それを思い出し、私は息子を連れて東大の文化祭へ行くことにしました。
憧れの東大レゴ部の方を前に、息子は縮こまるどころか、目をキラキラさせて質問責めです。知らない人にあんなに積極的に話しかけるなんて、私には絶対にできません(笑)
自分の周りに、自分の好きなことでつながれる大人がいる。これは子どもにとっていいことなんじゃないか。そんなことを思い巡らしていました。
実は、起業当初は今とは別のサービスを行っていたんです。でも、「もっと自分の体重を乗せられるようなサービスをやりたい」と考えて、信頼できる方に折に触れて相談していました。
この息子のエピソードを話したところ、「そういうサービス、向いてそうだよね」と言われて、「そういう手もあるのか!」と。そこがスタートです。
ニッチな「好き」にアプローチ
サービスの構想段階で、発達障害の子どもの保護者にヒアリングをしました。
その結果、「子どもが発達障害とわかった時に、どうしたらいいかわからない」「情報を取得しづらい」という課題が、多くの保護者から寄せられました。
また、自分が仮説として考えていた課題も、多く上がっていました。つまり、子どもの「ニッチな好き・得意・興味関心」を保護者だけではどうやって伸ばしていけばいいかわからないというものです。
「自分がやろうとしていることは、求められているサービスなんだ」と実感しましたね。
私自身が、マイナス面を見ることに興味がない性格です、自分の子どもに対しても、「言葉に長けている」「レゴが得意」といった、明らかにおもしろい部分しか見ていませんでした。そのほうがいいじゃんって。
何か1つ突き抜けたものを、もっと突き抜けるようにすることに関心が向きやすい。そういう自分の性格が、そのままサービスに反映されていますね。
Branchの3つのサービス
「好き」で自信をつくり、「好き」で社会とつながる。
この理念のもと、私たちは不登校や発達障害のお子さん向けの居場所を提供する3つのサービスを提供しています。
■Branchコミュニティ
オンラインツールDiscordを使ったコミュニティサービスです。子どもと保護者、それぞれが参加できる居場所です。どちらも、スタッフやメンターがしっかりサポートしています。
子どものコミュニティは、「オンライン部活動」。立ち上げるのも、ルールを決めるのも、子どもたちです。好きなことを通じて友だちを作ったり、自分の作品を共有したりできます。
保護者のコミュニティでは、保護者同士の情報共有や、スタッフやメンターへの相談ができます。保護者が「孤立」しないということは、とても大事なことなんです。
■Branchメンターマッチング
お子さんと「好きなこと」が同じメンターを、1対1でマッチングします。対面でも交流できますが、多くの方がZoomを使って利用しています。
メンターである大人が子どもに何か教えるのではなく、子どもの「好き」「やりたい」をメンターがサポートします。メンターが子どもから「好きなこと」について教えてもらうことのほうが多いんですよ。
■Branch room
スタッフと1対1の環境で、お子さんの好きなことを、好きなだけ追求できる、新しいタイプのフリースクールです(東京都渋谷区代官山)。1回1.5時間のプログラムで、何をするかはお子さんの自由。
活動の様子をスタッフから保護者へ共有し、お子さんの「好き」や特性を理解できるようにサポートしています。
子どもたちの「好き」が「実」に
子どもたちにずっと人気の「好き」は、なんと言っても「マインクラフト」です。「マイクラ部」も人気ですし、親子で参加できるイベント「親子マイクラ」も開催しています。
その次は、「ロブロックス」「スプラトゥーン」「フォートナイト」などが人気です。
ゲーム以外だと、おりがみや鉱物、アニメ・ゲームキャラのフィギュアやイラストに熱中している子どももいます。ラップを披露してくれる子もいますね。
サービス名の「Branch」は、英語で「枝」という意味です。
一人ひとりの子どもが「枝」、そして、枝の先には一人ひとりの子どもの「実」がなります。
子どもたちの「好き」を伸ばしていくことで、その実がすくすくと育っていってほしい。
そんな願いを込めてつけた名前です。
Branchのロゴマークも、枝と実を表現しています。
子どもにとっての「大事な場所」になれた
このサービスを始めて本当によかったと思うのは、子どもからも保護者からも、すごく感謝されることです。
たとえば、コミュニティの「朝会」で「自分の愛しているもの」を発表したときに、Branchをあげてくれた子がいました。「大好きで、大事にしている場所だから」という理由を聞いて、胸が熱くなりました。
保護者からも、「人生変わりました」「Branchが命綱でした」というメッセージを日々いただきます。
最初はまったく話さない、私たちと目も合わさない子どもが、数か月で大きく変わっていく。その変化を感じ取れる仕事ができている。
発達障害の子どもや不登校の子どもの「好きなこと」に、大人の目を向けてみよう。そう思って始めたことが、確かに子どもたちやご家族の居場所になれている。
「自分の体重を乗せられるサービス」だからこそ、長く続けていきたいと願っています。
Branchのこれから
オンラインコミュニティで、保護者さんとのコミュニケーションが増えました。子どもたちの「好き」を通して、あるいは子育てに関する悩みを通して、保護者さん同士のつながりも広がっています。
そのなかで、保護者さん自身の好きなこと、やりたいことをできる環境づくりも重要だと感じています。
未就学、低学年の子どもの保護者さんは、24時間つきっきりで、寝られていないケースも多いです。孤立しやすく、メンタルがボロボロ。保護者さん自身にもフォローが必要なこの時期に、コミュニティは大きな支えになると思います。
やがて子どもが高学年、中学になると親離れしていきます。この段階ではぜひ、保護者さんご自身の「好き」に時間とエネルギーを使ってほしいです。
子どもがそれを見て、「なんかおもしろそうなことやってるな」と感じられるような関係。それが、お互いにとっていいと思います。
子ども中心から、「自分の人生」「自分の好きなこと」にも向き合えるように、私たちが保護者さんをサポートする。そのことで、子どもも保護者さんもやがて、他者の好きなことを支える存在になっていく。
好きなことを通じて社会が循環していったらステキですね。
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「学校以外の居場所」の探し方は、ぜひオンラインイベントで!
学校に行かない選択をしたお子さんにとっても、「居場所」を見つけることはとても重要です。
安心して過ごせる場所や人とのつながりがあることで、孤独感が和らぎ、自己肯定感を育む土台となるからです。
また、不登校中にも社会との関わりを絶やさず、人と関わる経験を積むことは、自立に向けたコミュニケーション能力や柔軟性を養うきっかけにもなります。
今回のイベントでは、不登校のお子さんの を持つ保護者さま向けに「お子さんの孤独を和らげる居場所探しのコツ」についてご紹介します。
みなさんとオンラインでお目にかかれるのを、楽しみにしています!
■イベント情報■
【12月6日(金)開催!】オンラインイベント「【ストップ不登校の孤独】フリースクール代表が教える「学校以外の居場所」の探し方」