「寄り添う」の落とし穴 大学准教授が語る「してあげる」でなく「いっしょに考える」大切さ

 「寄り添う」とは、いっしょに考えること――。「スカートをはいた大学教授」としてSNSなどで話題の兵庫教育大学准教授・小川修史さんはそう語ります。小川さんは「障がい者のために」という意識から離れることが当事者の尊重につながると、みずから考案したユニバーサルファッションを着用して思いを発信しています。人を尊重し、寄り添うとはどういうことなのか。不登校の子どもをどう支えるか、という観点からも示唆の多い取材となりました(※パリでボトモールをはく小川さん)。

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――小川さんはどのような思いからスカートをはくようになったのでしょうか?

 私の思いをお話しする前に、まず私が着用しているスカートについてご紹介させてください。私がはいているのは、「ボトモール(bottom’all)」という身体障害のある方の声を起点に開発した商品になります。かたちはいわゆる巻きスカートで、腰に巻いて、前をファスナーやスナップボタンなどで留めるしくみとなっています。身体障害があり車いすを利用する方は、パンツをはくハードルが高く、お尻を浮かさないとうまくはくことができません。そのため衣料品店で試着するのも人の手を借りないと難しく、ある当事者は「おしゃれをあきらめている」と漏らしていました。

 そこで、車いすの座席に広げて、座って腰に巻くだけでかんたんに着られるボトムスを、私が所属する「一般社団法人日本障がい者ファッション協会(代表理事・平林景)」のメンバーとともにつくりました。ただ、私たちはこの商品を「障害がある人のためのボトムス」にはしたくありませんでした。「障害がある人のために」と言ってしまうと、障害のない人が障害のある人に「つくってあげた」という上から目線が生じてしまうからです。

 それでは対等でないし、障害のある人を尊重することにはなりません。だからこの商品は誰もがおしゃれに感じるようにと意識してつくりました。それで名前が、「ボトム」と「オール(全員)」を組み合わせた「ボトモール」というわけです。私自身がボトモールを着用しているのも、障害や性別に関係なく魅力を感じるデザインを発信するためです。

 実際、ボトモールを着用し始めてから「先生、おしゃれになりましたね」とまわりに言っていただけるようになりました(笑)。こうやって障害の有無に関わらずすべての人が魅力に感じることが、障害者への本当の配慮になると私は考えています。誰もが楽しさにアクセスできるということが、多様性の尊重になると思うのです。といっても、ちがいを受けとめて相手を尊重できるようになるまで私も時間がかかりました。私はもともと、相手のために「してあげる」という意識が強かった人間なんです。

――と言いますと?

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