【調査報道】「不登校と、親の仕事」のリアル(3)〜転職した方の自由記述〜

#不登校#行き渋り#調査報道

子どもの不登校は、親の働き方にも大きな揺らぎをもたらします。

ウェブメディア「不登校オンライン」は、不登校の子どもがいる親438名にアンケートを実施。結果、約6割が退職・転職・就業、または働き方の変更を経験していました。

この記事では、お子さんの不登校に関連して転職した方の自由記述と、それに対する編集部の分析・を紹介します(回答は原文ではなく、編集部が類型化や編集を行っています)。

編集

不登校オンライン編集部

1.転職した理由について、詳細を教えてください。

回答者:母親10名

  • 子どもが不登校で自宅にいる際、夫の接し方が次第にエスカレートし、虐待と思われる状況に。別居・避難・離婚を視野に入れ、生活の立て直しが必要になったため。
  • 子どもが行き渋りや五月雨登校の状態にあり、週5勤務が困難に。さらに通勤時間が長く、遅刻や早退への対応も大きな負担だったため。
  • ワンオペで育児と仕事の両立が難しく、不登校対応に追われる日々。このままでは子どもも自分も共倒れになってしまうと感じ、転職を決意。
  • 医療機関勤務時代は通勤に時間がかかり、子どものお迎え要請に即対応できなかった。現在は家の近くで、休みも取りやすい職場へ転職。
  • 家出や自傷など、次女・三女の不調が重なり、家族全体のメンタルが限界に。一度退職し、在宅期間中に子どものケアに専念した。
  • 子どもとの時間をもっと大切にしたいと感じたため。
  • フリースクールや放課後等デイサービスの利用を検討した際、送迎が必要となり、正職員としての勤務が困難に。子どもの支援を優先し転職。
  • フルリモートや時短勤務が可能な職場に転職し、柔軟に子どものサポートができる体制を整えた。
  • 朝の起床から就寝まで子どもが荒れてしまい、常に寄り添う必要がある状態に。通院の付き添いも求められ、夜間の短時間パートへ転職。
  • 五月雨登校で、登校の可否や遅刻にじっくり対応できるよう、午後から勤務するパートに転職した。

回答者ペンネーム(敬称略・本名の可能性があるものは編集部で変更):aki、KY、あきき、きいろ、けせらせら、はな、ぽぽはは、めんめぐ、ゆか、ゼロ

 

2.転職の前に、働き方の変更などを職場に相談しましたか?職場への相談と結果について、詳細を教えてください。

回答者:母親7名

  • 収入を増やすため、以前から長期依頼を受けていた企業に就職を希望したが、勤務時間の調整がうまくいかず、最終的に先方の都合で断ることとなった。
  • 上司が子育てに理解を示さず、職場で相談できる雰囲気がなかったため、我慢しながら勤務を続けていた。
  • 特別な相談はしなかったが、退職時には家庭の事情を少し詳しく伝え、理解を求めた。
  • 有給休暇をすべて使い切ったうえで、「欠勤でもいいから休ませてほしい」と上司に打診したものの、「これ以上の欠勤は困る」と繰り返し言われ、限界を感じた。
  • 病院勤務であったため、リモートワークという選択肢は現実的ではなかった。
  • 職場も配慮しようと動いてくれたが、慢性的な人手不足で、サポートを受ける側に申し訳なさを感じ続けていた。

回答者ペンネーム(敬称略):aki、あきき、きいろ、めんめぐ、りち、りん、ぽぽはは

 

3.転職先は、どんな働き方・仕事を重視して選びましたか?重視した働き方・仕事について、詳細や理由を教えてください。

回答者:母親5名

  • 子どもの体調や気分に応じて、臨機応変に対応できる働き方を最優先に考えた。
  • 時給が以前より高く、労働環境も整った「ホワイト企業」であることが魅力だった。
  • 子どもの不登校をきっかけに「子どもの権利」について関心を持ち、関連するNPOでの仕事に就いた。
  • これまでの経験やスキルを生かした業務を継続できるよう配慮してもらえた。
  • 自分が一時的に不在でも業務がまわる体制があり、過度な責任を背負わずに働ける職場環境だった。

回答者ペンネーム(敬称略):aki、あきき、きいろ、ニャオコ、ぽぽはは

 

4.転職して「よかったこと」につき、詳細を教えてください。

回答者:母親6名

  • 私が働く姿を見て、子どもにもよい影響があったのか、遅刻しながらも自分のペースで通学するようになった。
  • 子どもと向き合う時間が増え、お互いに余裕を持って過ごせるようになった。
  • 以前の職場は雰囲気も悪く、軽いいじめのようなこともあり、家庭にも職場にも逃げ場がなかった。現在はホワイト企業で人間関係も良好、精神的にも安定できている。
  • 子育てに対する理解がある職場で働けるようになったことが、何よりもありがたかった。
  • 子どもたちが穏やかに過ごせるようになり、家庭全体が落ち着いた。
  • 午後勤務に変えたことで、朝の子どもへの対応にゆとりが生まれ、送迎もできるようになった。さらに、自分の時間も持てるようになり、心のバランスを保つ助けになっている。

回答者ペンネーム(敬称略):aki、あきき、きいろ、めんめぐ、りち、ゼロ

 

5.転職して「よくなかったこと」につき、詳細を教えてください。

回答者:母親4名

  • 通勤によって子どもと接する時間が減ってしまった。幸い、実母が健康で日中のサポートをしてくれているため出社できているが、自分以外に在宅で対応できる人がいなければ転職は難しかったと思う。
  • 転職後、収入が前職の半分以下に減り、経済的な不安が大きくなった。
  • フルリモートで中抜け対応はできるが、そのぶん業務が細切れになり、結果的に残業が増えてしまっている。
  • 収入が大幅に減った一方で、子どもの医療費などは増えるばかりで、家計のやりくりが厳しくなった。

回答者ペンネーム(敬称略・本名の可能性があるものは編集部で変更):KY、あきき、ぽぽはは、めんめぐ

 

6.不登校に関連した転職・退職・働き方の変更などを複数回行っている場合、その理由や状況について教えてください。

回答者:母親48名、父親1名

1. 子どもの状況に合わせた柔軟な働き方の模索

  • 子どもが通う先(学校・フリースクール等)が変わるたびに送迎やスケジュールに対応するため、勤務時間や働き方を何度も調整した。
  • 子どもの状態が安定しているときは仕事を増やし、不安定なときは減らす、という対応を繰り返してきた。
  • 子どもの成長に伴って留守番が可能になったため働きに出ているが、下の子がまた不登校になれば再び退職せざるを得ないと感じている。
  • 介護休暇や時短勤務、シフト変更などの制度を駆使しながら対応してきたが、限界を感じ退職を選んだこともある。

2. 退職と再就職を繰り返しながら状況に適応

  • 不登校が始まった時期に勤務先がコロナ禍で雇い止めになり、その後も職場環境や家庭状況が変化するたびに複数回の転職を行った。
  • 退職後にパートや非常勤で再就職するも、子どもの登校状況や通院、発達障害への対応などが重なり、再び退職せざるを得なかった。
  • 一旦無職になったあと、条件の合うパートやフリーランスの仕事を探しているが、継続が難しくなった例も多い。

3. フルタイム→時短→再フルタイムなどの変化

  • 子どもの付き添いや相談、送迎のために一時的に時短やテレワークへ変更。その後、家庭の状況に応じてフルタイムへ戻した。
  • ダブルワークや複数の仕事を掛け持ちして収入確保を試みたが、精神的に限界を感じた。
  • 働きすぎが不登校のきっかけになったのではと感じ、働き方の見直しを余儀なくされた。

4. 職場や制度との調整と限界

  • 職場に理解があった場合もあれば、欠勤や遅刻に対応できず結果的に退職に至ったケースも多い。
  • 会社に制度がなく、育児や不登校対応を支える環境が整っておらず、やむなく辞めるしかなかった。
  • 勤務時間やシフト調整はできたが、他のスタッフの負担になり精神的につらくなってしまった。
  • 学校や病院の対応が平日のみであることが多く、仕事と両立するのは現実的に厳しかった。

5. メンタル面の悪化・家庭との両立の困難

  • 子どもの荒れた状態や家出、自傷行為があり、自分のメンタル不調も重なって仕事を辞めざるを得なかった。
  • 子どもの不安定さが自分の働き方に強く影響し、自分自身が精神的に苦しくなったため退職を選んだ。
  • 親が不安定になることで子どもにも影響が出ると感じたため、あえて仕事をセーブした。

6. 制度や環境の限界に直面

  • 介護休暇は利用できても期間が短く、終了後も登校できない状況が続いたため再度働き方を変えざるを得なかった。
  • 在宅勤務が可能な業務にも関わらず、足並みをそろえるという理由で出社を強制され、収入が減少。扶養内での働き方に切り替えることを決意。
  • 週1勤務では生活が立ち行かず、やむなく転職。結果的に良い職場と出会えたが、他の不登校家庭では「時間・収入・心の余裕」のすべてが不足していると実感している。

7. 不登校対応が新たなキャリアのきっかけに

  • 不登校の経験を活かし、学童保育支援員や教育関連の職種に転職。
  • 自身でフリースクールを立ち上げ、転職・開業という形で新たな道を選んだ。
  • 在宅ワークやフリーランスへの転向で、柔軟に子どもとの時間を確保する働き方にシフトした。

回答者ペンネーム(敬称略):153、aki、m-mama、moco、ms、natsumi、sar、あやこ、あややん、あんこ、あんりんゆ、いっちゃんママ、いとさん、かあちゃん、かなのママ、きいろ、くぅ、くじら、くにちゃん、ぐっさん、けい、こはく、さきママ、じゅら、すー、そら、ちぃ、ちびまま、ぴりか、ぺこ、ぽぽ、なな、のっち、はち、まぁ、まくた、まご、めいぷる、より、らす、オイルヒーター、オーチャン、クープふわ、ゴロゴロた、シュンシュン、ジャム太郎、河本

 

7.編集部の分析・コメント

転職の背景には、経済的理由よりも「家庭を守るため」「自分を壊さないため」という切実な事情が見られました。

通勤やフルタイム勤務が難しくなり、制度の壁や職場の理解不足から転職を余儀なくされた人が多い一方で、在宅勤務や午後勤務など、子どもの状況に合わせた“柔軟な働き方”を求めた動きが際立ちます。

転職によって「子どもが穏やかになった」「家庭が落ち着いた」との声も多く、親の安心が家庭全体の安定につながることが明らかです。

一方で、「収入が半減した」「家計が厳しい」など、経済的なリスクを伴う現実も見逃せません。

不登校支援は、子どもだけでなく親が安心して働ける社会的な仕組みづくりを含めて考える必要があります。

8.キズキ共育塾不登校相談員・伊藤真依のコメント

不登校のお子さんと接するうえでは、「保護者さまが極端に自分のペースを崩さないこと」がとても重要です。

いつも大人がお子さんの様子を注視している側だと思いがちですが、
お子さんもまた、大人の様子や心情をよく観察しています。

今回の調査の中では、保護者さまが自分のペースで働いたり自分の時間を持ったりした結果、
お子さんもそれに続いて自分のペースを模索するようになったという意見が見られました。

もちろん、お子さんと一緒に過ごす時間を増やすことは悪いことではありません。

しかし、大人が少し目を離したときこそ、お子さんの成長チャンスが巡ってきやすいということもあります。

その意味で、働くスタイルを変えつつも、保護者さま自身が自分に合ったワークライフバランスを模索する転職という決断をされた方々の体験談はとても貴重だと感じております。

お子さんの気持ちや経済面、制度のことなど悩む観点は様々ありますが、
まずは保護者さま自身のキャリアにおいて納得できることを優先してみるのも、「保護者さま自身のペース」を守るために良いことだと考えています。

9.「不登校と、親の仕事」のリアル〜関連記事一覧〜

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