【調査報道】「不登校と、親の仕事」のリアル(6)〜法律や職場に望むこと〜
子どもの不登校は、親の働き方にも大きな揺らぎをもたらします。
ウェブメディア「不登校オンライン」は、不登校の子どもがいる親438名にアンケートを実施。結果、約6割が退職・転職・就業、または働き方の変更を経験していました。
この記事では、お子さんの不登校に関連して、法律や職場に望むことの自由記述と、それに対する編集部の分析・コメントを紹介します(回答は原文ではなく、編集部が類型化や編集を行っています)。
目次
1.「子どもの不登校と、保護者の仕事」について、法律や職場に望むことを、具体的に教えてください。
回答者:母親239名、父親12名、その他1名
1. 不登校対応のための特別休暇・時短制度・在宅勤務制度を整えてほしい
- うちの子が不登校になってから、病院への付き添いや学校との面談などで、どうしても仕事を抜ける必要が出てきました。でも、有給休暇なんてすぐになくなってしまうんです。育児や介護みたいに、不登校対応にも特別な休暇や時短勤務の制度があれば、肩身の狭い思いをせずにすむのに…と、何度も思いました。在宅勤務ができる仕事だったのがせめてもの救いです。
2. 保護者が安心して休職・離職できる制度を設けてほしい
- 正直、子どもの不登校が始まったとき、仕事どころではありませんでした。できることなら少し休職して、子どもと向き合いたいと思ったのですが、職場の制度がそれを許してくれず…。介護のように、一定期間の休職が認められて、元の職場に戻れる制度があったら、どれだけ安心して対応できるかと思います。
3. 職場の理解がほしい/柔軟な働き方を受け入れる文化を作ってほしい
- 職場に「子どもが不登校で…」なんて言い出しにくくて、毎回言い訳しながら早退していました。でも、理解のある上司が「家庭優先でいいよ」と言ってくれたことで、心が軽くなったんです。制度も大事だけど、それ以上に、理解してくれる人がいるかどうかが大きいと思います。
4. 就業継続のための公的支援・手当がほしい
- うちは夫婦共働きだったのですが、私が仕事を減らさざるを得なくなって、家計が一気に厳しくなりました。しかも、フリースクールやカウンセリングにはお金がかかる。子どものケアに専念する期間だけでも、何かしらの手当があれば、安心して向き合えると思います。
5. フリースクールや塾、送迎の支援が必要
- うちの子は学校には行けないけど、フリースクールなら行けそうだと言いました。でも、家計的に通わせるのは難しく、通える距離にもなかったんです。送迎の支援や、もっと安価で通える選択肢が増えたら、働きながらでも子どもを支えることができるのに…と思います。
6. 子どもの学習保障がほしい
- 学校に行けなくなってから、プリントも届かず、授業の進度もわからず、親として焦りだけが募りました。家庭学習にも限界があります。不登校の子どもが、自分のペースで学べる仕組みや、学校と同等の学習機会を保障してくれる制度があればいいのにと思います。
7. 不登校の子どもを地域や社会で支える仕組みを整えてほしい
- 家庭だけで抱えるには限界があります。不登校の子どもが安心して通える地域の居場所や、気軽に相談できる支援者がもっといてほしいです。地域ぐるみで子どもと家族を支えてくれるような仕組みが整えば、仕事も続けやすくなると思います。
8. コーディネーターなど、保護者と職場をつなぐ第三者が必要
- 子どもが不登校になったとき、職場にどう説明すればいいのかわからず、ひとりで悩んでいました。もし、行政の支援で、職場と話をしてくれるコーディネーターがいたら、もっとスムーズに仕事を続けられたのに…と思います。
9. 自営業・フリーランス・非正規への支援も必要
- 私は自営業で働いていますが、不登校対応で仕事をセーブせざるを得ず、収入は激減しました。正社員向けの制度や手当はあっても、非正規や自営の人間には何の支援もないことが多い。もっと多様な働き方にも目を向けた支援をしてほしいです。
10. 不登校時の経済的な補助制度の拡充を望む
- 学校に行かないことで、食費や光熱費、学習サポート費など出費が増えるのに、仕事は減らすしかなくて…。少しでも補助があれば、経済的な理由で子どもへの支援をあきらめる必要がなくなると思います。
11. 子どもに寄り添う時間のために、保護者の心身ケアや支援も必要
- 子どものことでいっぱいいっぱいになり、私自身がうつ状態になったこともありました。親へのサポートや相談機関がもっと身近にあれば、無理をしすぎずに子どもと向き合えると思います。
12. 学校側の理解と協力が不可欠
- 学校とのやりとりで「保護者の責任」とされてしまったこともあり、深く傷つきました。もっと学校に不登校への理解があり、家庭と連携してくれる体制があれば、親も安心して仕事と両立できるのにと思います。
13. 学びの場・評価制度など、教育制度そのものの柔軟化を望む
- 内申点制度や一斉登校に縛られる現行の制度のままでは、不登校の子どもたちはどんどん不利になってしまいます。ホームスクーリングや単位制など、もっと柔軟な学び方が認められる社会になってほしいです。
14. 父親や職場全体の理解と協力も必要
- どうしても母親ばかりが子どもへの対応を担うことが多く、夫の会社では育児でも早退しにくい雰囲気があると聞きました。父親も積極的に子どものケアができるよう、職場環境を見直してほしいです。
15. 不登校に関する情報や支援策の「見える化」が必要
- 支援を受けたくても、どこに相談すればいいのかわからないまま時間だけが過ぎてしまいました。支援制度や相談窓口の情報を、もっとわかりやすく、誰もがアクセスしやすい形で示してほしいです。
16. 偏見や孤立を生まないような社会的理解がほしい
- 「子どもが学校に行かないなんて親のせいだ」と思われているようで、人に話すこともできず、孤立してしまいました。不登校は特別なことではなく、誰にでも起こりうること。そうした社会的な理解が広まってほしいと願っています。
2.編集部の分析・コメント
多くの保護者が共通して訴えているのは、「不登校対応が法や制度の想定外に置かれている」という現実です。
育児や介護のように制度化された休暇がなく、有給や欠勤で対応せざるを得ない状況が続いています。
そのため、仕事を休むたびに理由を説明し、周囲に気を遣い、罪悪感を抱えながら働く保護者が少なくありません。
とくに、子どもの付き添いや通院、学校との面談が必要な時期ほど、「制度がないこと」が精神的負担として重くのしかかっています。
一方で、「理解のある上司や同僚に支えられた」との声もあり、制度整備と同じくらい、職場文化の変化も求められています。
また、正社員以外の働き方をしている人や、自営業の家庭では支援が届きにくく、経済的不安も深刻です。
不登校の親を支える仕組みは、単なる個別の福利厚生ではなく、社会全体の課題として捉え直す必要があります。親が安心して働き続けられる環境こそが、子どもの安心にもつながるのです。
3.キズキ共育塾不登校相談員・伊藤真依のコメント
不登校の人数が34万人を突破し、「もはや不登校は珍しくないことだ」という話は多くの保護者さまが耳にされたことだと思います。
一方で、それでも現場の単位でみるとマジョリティではないため「自分の家だけの問題のように感じる」という当事者の率直な声がキズキに多く寄せられます。
制度の面で当事者が疎外感を感じない状況をつくるために、
引き続き問題提起し、具体的にアクションし続けていく必要があることを
不登校オンラインのメディアとして、そしてキズキ共育塾として、改めて感じた調査になりました。
その最初のきっかけとして今回の調査にご協力いただいた皆様へ、心から敬意と感謝を申し上げます。
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