【調査報道】「不登校と、親の仕事」のリアル(7)〜「こうしておけばよかった」と思うこと〜

#不登校#行き渋り#調査報道

子どもの不登校は、親の働き方にも大きな揺らぎをもたらします。

ウェブメディア「不登校オンライン」は、不登校の子どもがいる親438名にアンケートを実施。結果、約6割が退職・転職・就業、または働き方の変更を経験していました。

この記事では、お子さんの不登校と仕事に関連して「こうしておけばよかった」と思う自由記述と、それに対する編集部の分析・コメントを紹介します(回答は原文ではなく、編集部が類型化した上、再構成を行っています)。

編集

不登校オンライン編集部

1.「子どもの不登校と仕事」に関連して、過去を振り返って「こうしておけばよかった」と思うことがあれば、具体的に教えてください。

回答者:母親149名、父親5名、その他1名

1. 仕事を続けながら、もっと子どもの変化に目を向ければよかった

  • あのころは、とにかく仕事を休めない状況でした。朝ぐずる子どもに「早くしなさい」と言いながら家を出て、「怠けているだけ」と思い込んでいたんです。 でも今振り返ると、あれは助けを求めるサインでした。仕事で疲れ切って、帰宅しても子どもの表情を見る余裕がなくて、「どうして行かないの」と責めるばかり。あのとき、もう少し子どもの気持ちに目を向けていたら、あんなに追い詰めずに済んだと思います。働く親としての責任感が強すぎて、「仕事を休む=逃げる」と考えてしまっていました。今なら、ほんの少し立ち止まる勇気を持った方が、ずっと良かったと感じます。

2. もっと早く職場に正直に話しておけばよかった

  • 最初のころは、子どもの不登校を職場の誰にも言えませんでした。「家庭の問題を職場に持ち込むなんて」と思って、早退の理由を毎回ごまかしていたんです。でも、無理を重ねるうちに体調を崩してしまいました。思い切って上司に話してみたら、「そんなことなら遠慮せず言って」と言われて拍子抜けしました。あのとき正直に打ち明けていたら、こんなに孤独にならなかったかもしれません。子どものことを隠すより、周囲の理解を得るほうが、ずっと生きやすい。“職場に味方をつくる”という発想が、当時の私には欠けていました。次に同じ状況になったとしても、今度は怖がらずに話そうと思います。

3. 無理に働き続けず、一度立ち止まる勇気を持てばよかった

  • 「家計を支えなきゃ」と自分に言い聞かせて、限界まで働き続けていました。でも、子どもの不安定さが増すにつれ、私の心もすり減っていったんです。子を置いて泣きながら出勤した日のことを、今でも覚えています。仕事も家庭も壊れかけて、ようやく「辞めてもいい」と思えました。もっと早く退職(や、休職や時短勤務など)を選んでいれば、親子であんなに傷つかずに済んだと思います。働くことは悪くない。でも、“立ち止まる勇気”もまた、親として必要なんだと気づきました。

4. 一人で抱え込まず、もっと助けを求めればよかった

  • 当時は「親なんだから頑張らなきゃ」と意地になっていました。カウンセリングや親の会の存在を知っても、「自分が行くほどじゃない」と思って避けていたんです。でも、心が限界を迎えてからようやく相談したら、同じように悩む人がたくさんいて、涙が止まりませんでした。「もっと早く話せばよかった」と心から思いました。助けを求めるのは弱さではなく、自分と子どもを守る手段なんですよね。一人で耐え続けたあの時間が、今はもったいなかったと思います。

5. 夫婦で、もっと話し合っておけばよかった

  • 子どもが学校に行かなくなった最初のころ、夫にはほとんど相談していませんでした。「どうせ分かってもらえない」と決めつけて、自分一人で全部抱え込んでいました。でも、不登校が長引くにつれて私が壊れかけ、「どうして私ばっかり」と爆発してしまったんです。いざ夫に相談してみたら、夫は、私と「全く同じ」ではないにせよ、大まかには同じようなことを考えていました。その後は「今日は俺が学校に連絡するよ」などとも言ってくれるようになりました。もっと早く話し合っていれば、こんなに孤独を感じずに済んだはず。“家族で一緒に向き合う”という基本を、あのとき見失っていました。

6. 自分の体調をもっと大事にすればよかった

  • 子どものことを最優先にして、自分の体調は後回し。気づけば、食事も睡眠もおろそかで、朝起き上がれなくなっていました。「母親が倒れたら元も子もない」と、今なら分かります。仕事も家も中途半端になっていて、「もっと自分を休ませればよかった」と強く思います。自分が元気でいることが、子どもの安心につながる——それを理解するまでに、時間がかかりすぎました。

7. 子どもを“変えよう”と焦らず、もっと信じて見守ればよかった

  • 不登校が始まったころ、「どうすれば学校に戻れるか」ばかり考えていました。仕事の合間にも担任に連絡して、子どもに“次の一歩”を急かしていたんです。でも、あれは子どもを追い詰めていただけだったと今は分かります。「今日は何もできなかった」と落ち込む姿を見ても、一緒に焦らなくてよかった。“動けない時間も必要な時間”だったと気づいたのは、かなり後でした。もう少し信じて待てたら、あの子の心はもう少し軽かったかもしれません。

8. 完璧を目指さず、「できる範囲でやる」と決めればよかった

  • 仕事も家事も子どものサポートも、全部完璧にやろうとして、結局どれもうまくいかなくなりました。「ちゃんとやらなきゃ」と思うほど、子どもとの関係もぎこちなくなっていったんです。ある日、思いきって“できる範囲でいい”と自分に言い聞かせたら、少し呼吸が楽になりました。最初からそう考えられたら、もっと穏やかに支えられたのにと思います。 “頑張りすぎない”ことも、大切な仕事の一つだったと感じます。

9. もっと早く在宅や時短の働き方を探せばよかった

  • 不登校が始まっても、「フルタイムの正社員で続けなきゃ」と思い込み、在宅勤務や時短勤務を検討する余裕がありませんでした。結果的に仕事を辞めざるを得なくなり、経済的にも精神的にも追い込まれました。後から調べたら、利用できる制度がいくつもあったんです。あのとき情報を集める時間を取っていれば、続けられる働き方もあったと思います。“会社を辞めるか続けるか”の二択ではなく、“どう働けるか”を探す視点を持つべきでした。

10. 自分ばかり責めず、「それでもよくやっていた」と認めたかった

  • 当時の私は、常に「もっと頑張らなきゃ」と自分を責めていました。子どもが学校に行けないのは自分のせい、仕事を休むのも申し訳ない——そんな思いでいっぱいでした。でも今思えば、あのときの私なりに精一杯やっていたんです。「もっとこうしていれば」と後悔する気持ちはあるけれど、あのときの私を責めすぎたくありません。不登校の親に必要なのは、反省よりも“自分を許すこと”だと、今の私は思います。

2.編集部の分析・コメント

この調査から浮かび上がったのは、「仕事を頑張ること」と「子どもを支えること」の間で揺れ動く親たちの現実です。

不登校という出来事は、子どもだけでなく親の働き方や生き方も大きく変えました。多くの人が語ったのは、“あのときの自分は必死だった”という言葉です。

仕事を休めずに子どもを責めてしまったこと、職場に事情を隠して孤立してしまったこと、無理をして心身を壊したこと——そのどれもが、責任感の強さゆえの選択でした。

後悔の声の中には、「あのときもう少し立ち止まればよかった」「一人で抱えず、もっと助けを求めればよかった」という共通点が見られます。

家族や職場に打ち明けることを恐れず、柔軟な働き方を探すことが、結果的に親子の安心につながるという気づきも多く寄せられました。

また、「母親が頑張るしかない」という思い込みを手放し、夫婦で分担することの大切さに気づいた人も少なくありません。完璧を目指さず、できる範囲で働く、そして“自分を責めすぎない”こと。

そうした意識の変化が、親自身の回復や家庭の安定につながっていることが、自由回答からはっきりと伝わってきます。

不登校と仕事の両立に正解はありませんが、後悔の中から生まれたこれらの声は、いま苦しむ親たちへの確かな道しるべになっています。

3.キズキ共育塾不登校相談員・伊藤真依のコメント

今まで経験したことのない道に進むのは、どんな人でも不安を感じます。

不登校のお子さんのサポートは「経験したことのないこと」「見聞きしたことのないこと」の連続ではないでしょうか。

必死なときは、どうしてもがむしゃらに自分だけで道を探そうとして、周りに頼ることすら忘れてしまうこともあるでしょう。

また、不登校のことを人に言いづらい場合もあると思います。

しかし、経験したことのない不安の中を歩いていくには多くの情報が大切です。

不登校オンラインのようなメディアや、事例をたくさん持っている専門家から知見を集めて、
その中からお子さんに合った方法を選んでいくことが大切です。

どうか、「混乱している」「焦っている」と感じるときこそ
「まずは情報を集めてみよう」という発想に立ち返るようにしていただけたらと思います。

回答者ペンネーム(敬称略):aki、at、A母、HK、JJ、K、KIMIKO、m、m-mama、moco、monmon、natsumi、pan、qwert、skkt、ssss、sumyu、t、teruteru、tomori、YK、あいびー、あお、あか、あきき、あっこ、あやこ、あるろ、あんりんゆ、いちご、いっちゃんママ、いづみ、いろなし、うさこ、えんちゃん、オイルヒーター、おじぞう、かあちゃん、カエル、かたつむり、かなのママ、かめさん、かよなお、きいろ、きしゃぽっぽ、キリム、くぅ、くじら、ぐっさん、けい、ケイコ、ここ、こつぶ、こめの、サキ32、さきママ、さきりんこ、さくら、さち、さやっち、さゆり、ジーコ、ジュニママ、しゅん、シュンシュン、スイカ、スカイブルー、すん、ぞー、たか、たかとも、たけ、たっちゅさん、たみち、ちい、ちひろ、ちほ、ちょこぶき、つむぎ、とこ、とふ、とも、ともこ、のっち、のん、パオ、はち、はな、ハマチ、ハム太郎、はるママ、はるりん、ハレルヤ、ぱんだうさぎ、ぴちょん、ひっとん、ひよこ、ヒロ、ぷーた、ふくちゃん、ほしの、ポッポのママ、ぽぽ、ほり、まぁしゃん、まくた、まご、まみーB、まむ、まりも、まる、まるちゃん、マルのママ、まるまる、まろやか、み、みかん、みずは丸、みちみち、みっくす、みっこ、みぱぴ、みぴまま、みみみ、みよ、みん、もふもふ、モモ、もも、もりこ、やっちゃん、やま、やま、ゆ、ゆあ、ゆきぶぶ、ゆきり、ゆっこ、ゆもみ、よう、よよよ、らす、ららら、りち、りま、りをはや、レモン、れんげ、わたあめ、葵、河本、花ちゃん、晴れパン、龍

 

4.「不登校と、親の仕事」のリアル〜関連記事一覧〜

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