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人生を左右する“悩みの発見遅れ”〜性暴力による不登校経験者が訴える「SOSを取りこぼさない」早期発見の仕組みづくり〜

#不登校#行き渋り#ICT

うまく使えば不登校に関する悩みの解消の糸口にもなり得る、教育現場で使用されているICT端末。
不登校オンラインでは、全4回の記事を通し、子どもの心を守るICTの活用について考えていきます。

連載初回はICT教育が普及した背景と、現在の活用のされ方についてご紹介しました。

初回記事はこちら
【連載】デジタル端末を活用した子どものココロを守る新たな取組? 不登校の保護者も「もしも」のときに使える! 基本のICT活用

子どもの心を守るICTの活用についてさらに深めていくために、第二弾の今回は「子どもの悩み早期発見の重要性」について考えていきます。

  • 第1回 ICT教育普及の背景
  • 第2回 子どもの悩み早期発見の大切さとICT活用の可能性
  • 第3回 子どもの悩み早期発見のための取り組み
  • 第4回 ICT×教育、新時代の希望と今後の課題

いじめ事案、把握漏れに課題

不登校の理由として多く見られるものの一つに「いじめ」があります。

文部科学省の調査によると、2022度に発生したいじめの認知件数は小・中学校あわせて66万2348件。

そのうち、重大事案として認定された事案は746件ありました。(参考:文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要 」(いじめ関連部分抜粋版))

しかし、同調査は教職員を対象にヒアリングした結果であり、生徒に直接アンケートをとったものではありません。

実際にはいじめがあったとしても把握しきれず、認知件数に表れていない“暗数”が存在していることが推測されます

いじめを相談できた数は半数にも満たず

東京都教育庁が公表した「いじめ問題に関する研究報告書」では、「いじめを受けた経験を誰かに相談した」と答えた児童・生徒は半数以下の45%。

半分以上が誰にも相談できずに抱え込んでいたことが分かりました。(参考:東京都教育委員会「いじめ問題に関する研究 ~東京都教職員研修センター~ 」

いじめの事案だけでも把握しきれないケースが多い中、さらに多岐にわたる子どもたちの悩みをどれだけ拾うことができているでしょうか。

子どもたちは、「身近な大人」の誰を信用したらいいかわからずに、悩みを相談できないことがあります。

ICTを活用すること(※)で、子どもたちは、いじめについても、それ以外の悩みについても相談しやすくなるはずです(※「ICTを活用した、匿名で利用可能な全国対応の相談窓口を作る」など)。

「大切なのは、子どもたちが早期にSOSのシグナルを出しやすい環境を大人側が作ること」。

そう訴えるのは、不登校経験者のひとりの女性です。この女性は、まさに「身近な大人」に相談できなかったことで、苦しみを抱えることになりました。

子どもたちのSOSを早期に発見する仕組みづくりについて、自身の経験を踏まえ語ってくれました。

その後の人生に影響も。早期発見にこだわるべき理由

高校で不登校を経験した20代の前田香(仮名)さん。

彼女は中学2年生から3年生にかけて、学校で先生から性暴力を受けていました。

中学まではなんとか卒業したものの、その後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、高校生になって学校に行けなくなりました。

PTSDによる影響は大学に進学したあとにも続き、勉強や就活にも影響したといいます。

前田さんは中学生当時を振り返り、こう語ります。

<前田さん>
学校の先生から受けた被害について、学校の中で相談することは難しかったです。

「私がSOSを出したことが、加害者の先生にも情報共有されたらどうしよう」という不安が頭をよぎり、伝えることができませんでした。

ましてや性暴力だったので、顔見知りの先生や家族にも話すこともできず、長い間一人で抱え込みました。

発見の遅れが苦しみの長期化に

相談先を見つけられず一人で悩みを抱え続けた前田さん。

早期に相談先に繋がることができず、心のケアがされないままになっていたことは、PTSDの影響が長期化した一因だったといいます。

<前田さん>
フラッシュバックなどの症状が悪化して、高校で不登校になりました。
その頃にはトラウマが根深くなり、解消が難しい状態になっていました。

私が通った病院の医師曰く、「PTSDを含む心の傷を少しでも軽く抑えるには早期にケアすることが大切」だそうです。

しかし私の場合、周りの大人に直接声をかけて性暴力を相談するのは難しく、心身の症状が限界に達するまで周りに気づいてもらうことができませんでした。

SOSのハードル

実際にどんな環境があればSOSを出しやすかったか、前田さんは次のように話します。

<前田さん>
まず、“学校の関係者”と“完全な第三者”、両方から相談先を選べるとよいと思います。例えば、「その悩み」に対応した窓口を、ICTを活用して提案してもらえる仕組みなどはどうでしょうか。

私のように学校の先生が加害者である場合はもちろんですが、そうでない場合にも、普段一緒に過ごさなければいけないコミュニティの中で悩みを打ち明けるより、第三者のほうが伝えやすいという場合はあるでしょう。

また、相談をしていること自体、同級生に知られないという安心感も重要です。
「放課後に教室に残って、こっそり先生と話しているところを見られたりしたら…」なんて思うと落ち着いて相談できないからです。

不登校生徒数が増加し、悩みを抱える子どもたちが増えている現代、前田さんの訴えるとおり子どもたちがSOSを出しやすい仕組みづくりが急務です。

次回

GIGAスクール構想により1人1台のタブレットを全国の小・中学生が手にしている現在、前田さんの訴える「SOSを出しやすい仕組み」がICTのチカラで現実になりつつあります。

4回の記事を通して、子どもたちの心を守るICTの活用を考える本連載。

次回は、「ICTを使った子どもの悩み早期発見のための取り組み」をテーマに、子どもの心を守る方法を深堀りします。

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