【全文公開】子どもの不登校は「親が行かないことを許すから」ではありません
「子どもの不登校は親の責任」。この論調に、フリースクール運営者・土橋優平さんは強く警戒しています。
不登校をめぐる本当の問題、そして、不登校の子どもにとって本当に必要なものを履き違える人々に、土橋さんが伝えたい真実とは?
(連載「出張版お母さんのほけんしつ」第51回・写真は土橋優平さん)
今回も前回に引き続き、よくある不登校親子に対する世間の声に意見を述べようと思います。
「不登校が増えたのは、学校に行かないことを認める親が増えてきたからです」。
こんな声が、しきりに聞こえてきます。一般の人の口からだけでなく、実は公的な機関の発表でもこうした話が出ることもあるんです。
たしかに、要因の1つとしてはありえます。でも、これでは「親が学校に行かないことを許すから、子どもが不登校になる」と捉えられかねません。そしてその背後には、「親が簡単に学校に行かないことを認めている」という考えがあることすら感じられます。
今回はこのことについて述べたいと思います。
問題は「不登校の子どもが増えていること」ではない
そもそも「不登校」という行為自体「問題行動ではない」と、2017年に施行された普通教育機会確保法に明記されています。さらに、2023年には文部科学省が新たな不登校支援策としてCOCOLOプランを発表し、学校に限らない多様な学び場の重要性を掲げています。
問題は「不登校の子どもが増えている」ことではなく、「不登校の子どもが増えていることに対して、支援や学び場の整備が追いついていないこと」にあります。そこを多くの方が履き違えています。
100万歩譲って、仮に「不登校」自体が問題だと考えてみます。このとき、問題の「解決」とは「学校に行く(学校に行かせる)」ことになります。
約50万人の小中学生が長期欠席(※)をするこの時代です。すべての子が学校に行くようになる施策も余裕も、今の日本社会には確実にありません。
(※)不登校のほか、病気などによる年度間30日以上の欠席も含む。
2022年度、精神的な理由による学校教員の休職者数は、過去最多となりました。教員ですら、仕事の負担が過重になり、学校に行けなくなっているのです。
こんな時代の中で、「学校に行く」ことだけを唯一の正解とすることには無理があります。つまり、「学校に行くことが正しい」という考え方を改めることが必要なのです。
悩んだ末に、親はようやく「休んでもいいよ」と言える現実
さらに、不登校の子どもが増えていることを親の責任とする考えも、空気のように当たり前に存在しています。
子どもの不登校は、親のせいではありません。
上で述べた「親が学校に行かないことを認めている」という見解について、実情を言うと、親がそこに至るまでには数か月、数年がかかります。
子どもが「学校に行きたくない」と言った直後に、「じゃあ、いいよ。休もうね」と言える親が、世の中に何人いるんでしょうか。少なくとも、私は出会ったことがありません。
確実に悩みます。
このまま学校に行かなくなったら、将来どうなるのだろうか。このままだと勉強もしなくなり、進路の選択肢が減るのではないか。そうすると、将来自立することが難しくなるのではないかと。
学校に行ってほしい気持ちと、笑顔の減った子どもに「今」安心してほしい気持ち。その葛藤を、何十回も何百回も繰り返していく中で、ある時にやっと、「学校休んでもいいよ」と言えるようになるのです。
親を追い詰めても、不登校の家庭のプラスにはならない
もし、これでも「子どもの不登校は親の責任だ」と思うなら、ぜひ親御さんのインタビュー記事などを読んでほしいと思います。考えが改められるはずです。そして、自分がどれだけ知識のない中で、不登校の親子に対して偏見を持っていたのかに、気づくと思います。
少し熱くなりすぎました。
親の責任を問うことは、何のプラスにもなりません。親が追い詰められることで、親子が社会から孤立し、差し出されている支援の手を握ることができなくなるだけです。
必要なのは、不登校の親子の味方です。第三者はそれを理解することが大切だと、私は思います。
記事一覧