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なぜ「不登校の原因は?」に答えられないのか。苦悩の末に、不登校経験者がたどり着いた根本的な理由

「なぜ学校へ行けないのか」。その問いに明確に答えられず、長年苦しんできたという喜久井伸哉さん。大人になって、そもそもその問いが「回答可能なものかどうか」という疑問に行き当たります。一見シンプルな問いに潜む「あいまいさ」が招く、「不登校の原因」をわかりにくくしてきた問題とは? ていねいに、注意深く読みたい考察です。(連載「『不登校』30年目の結論」第6回・写真は喜久井伸哉さん)

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喜久井伸哉

喜久井伸哉(きくい・しんや)

1987年東京都生まれ。詩人・フリーライター。喜久井ヤシン名義での著書に『ぼくはまなざしで自分を研いだ』。ほか共著に『いまこそ語ろう、それぞれのひきこもり』がある。

「不登校の原因は何か?」

私は、このシンプルな問いかけに答えられないせいで、ずっと苦しんできた。長いあいだ、「回答できないのは自分のせいだ」と思っていた。しかし今の私は、「質問のほうに問題がある」と思っている。

答えられないのは、「不登校」という言葉の使われ方があいまいすぎるせいだ。あいまいな質問に、明確に回答することなどできない。

私にとって重要なポイントは、「不登校」が「非意図的な状態」だったことだ。この点をはっきりさせなければ、「不登校の原因」を正確に伝えることはできない。

「行かない」のか「行けない」のか、それが問題だ

「不登校」の子どもの中には、自らの選択によって「『行かない』行為」をしている子がいる。「私は教育制度が嫌だから、ホームエデュケーションを選んだ」「私は学校へ通うことが面倒くさいから、毎日授業をサボっている」などの、意図的な欠席だ。

しかしこのような行為(不登校の「原因」)は、私が伝えたい経験とはまったく関係がない。不登校全般を見ても、「非意図的な状態」が多いと思われる。「私は学校へ行きたいと思っているけれど、どうしても行けない」「私は登校しようとすると、体調が悪くなる」といった状態だ。

「非意図的な状態」の子どもに、ある大人が、「なぜ学校へ行かないのか?」と聞いたとする。これは、「不登校の原因は何か?」という質問と、ほとんど同じ意味だ。たとえ「私が学校へ行かない原因は不登校だ」と答えても、同語反復にしかならない。そのため子どもは、「なぜ学校へ行かないのか?」という問いに対し、「不登校の原因」を答えることになる。

しかし、一般的な日本語には、「非意図的な欠席」を意味する言葉が存在しない。「非意図的な欠席」を表す言葉の代わりに、子どもは「不登校の原因」として、何らかの理由を挙げることになる。「不安だから」「緊張するから」といった回答だ。

このとき大人の側は、「不安」や「緊張」といった特定の表現を、「原因」のキーワードとして認識する。このとき、意図的に「行かない」選択をしているのか、非意図的に「行けない」状態なのかは、重要な要素でなくなってしまう。

文科省の調査によれば、「不登校」の理由でもっとも多いのは、「無気力・不安」とされている(これは、差別的な表現だ)。

【連載】『不登校』30年目の結論
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