インド映画『きっとうまくいく』から学ぶ! 不登校のお子さんに声がけするヒント
こんにちは。不登校オンライン編集部の山本です。
私は学生時代に集団行動が苦手で、学校生活に生きづらさを感じた経験をきっかけに、「自分らしく生きる」ことを探求するようになりました。大学卒業後に欧州や北米に滞在し、多様な価値観に触れる中で、自分の視野を広げる大切さを実感しました。
現在は、年間100本以上の映画を楽しむ映画愛好家として、学校や社会で生きづらさを感じている方々に広い世界を伝えるため、自由な視点でコラムを執筆しています。
今回は、2009年に公開された大ヒットインド映画『きっとうまくいく』(原題: 3 Idiots)を参考に、不登校のお子さんに声掛けするヒントをご紹介します。
この映画は、インドの教育システムの問題点や社会の競争圧力を鋭く批判しています。同時に、夢を追い求めることや、自分の道を見つけることの重要性を強調しています。
映画の名台詞「All is well(きっとうまくいく)」は、困難な状況でも前向きに生きるためのメッセージとして広く受け入れられています。
お子さんが不登校の保護者の方にとって、子どもが学校に行かないことへの不安や悩みは尽きないと思います。そんな中で、この映画から学べるメッセージは、子どもとの接し方や声がけに役立つヒントがたくさん詰まっています。
映画の内容をもとに、不登校の子どもにどのような声がけができるかを考えてみましょう。(この記事の画像は、日活株式会社の『きっとうまくいく』公式ページから引用しています)
目次
1.映画のあらすじ
本映画の紹介動画は、日活公式のYoutubeをご覧ください(本編の内容をちょっと誤解するような内容ですが…)。
映画は、3人の親友、ランチョー、ファルハーン、ラージューが、インド工科大学(IIT)に通う学生生活を中心に描かれています。
主人公のランチョーは、自由な発想を持ち、常識にとらわれない性格の持ち主です。ランチョーの姿勢は、厳格な学長ウイル(ヴィールー)から問題児と見なされます。
ファルハーン(ファラン)は、夢を持ちながらも、父親の期待に応えるためにエンジニアリングを学んでいます。ランチョーとの出会いが、彼に本当の夢を追いかける勇気を与えます。
ラージューは、貧しい家庭の出身で、家族を支えるために成功を求めています。そのプレッシャーに押しつぶされそうになりますが、ランチョーの影響で自分を解放することを学びます。
物語は、ランチョーが突然姿を消し、その行方を追う現在のシーンと、彼らの学生時代の回想を交錯させながら進みます。
作中では、友情の絆や、本当の成功とは何かについての深いメッセージが伝えられます。
2. 子どもの「本当の気持ち」を尊重する
映画の主人公ランチョーは、友人たちに「自分の心の声に従うこと」の大切さを伝えます。このメッセージは、不登校の子どもたちにも当てはまる大切なポイントです。
子どもが学校に行かなくなる理由はさまざまです。親としてまず大切なのは、「理由の特定」ではなく、「今、子どもが何を感じているのか」、「今、どんな気持ちで毎日を過ごしているのか」を理解しようとすることかもしれません。
子どもは「どう生きたいか」を選ぶ権利がある
ランチョーが言うように、子どもには「自分の人生をどう生きたいか」を選ぶ権利があります。その選択が親の期待とは違っていても、子どもの気持ちを尊重し、サポートすることで、子どもは安心感や信頼感を持つことができるでしょう。
「あなたの気持ちを大切に思っているよ」という姿勢を伝えるだけでも、子どもにとっては大きな励ましになるかもしれません。
3. 「競争」ではなく「個性」を大切にする
映画では、ランチョーの親友であるファルハーンが、家族の期待と自分の夢との間で葛藤する姿が描かれています。
ファルハーンは家族の期待に応えてエンジニアを目指していますが、実は心の中で写真家になりたいという夢を持っていました。
この葛藤は、不登校のお子さんが感じているプレッシャーにも共通するところがあるかもしれません。
周りと比較するのではなく、お子さんが持つ個性や才能を見つけ、それを大切に育てていくことが大事です。
「飛び抜けた個性や才能」でなくても大丈夫です。
ちょっとだけこれに興味がある、ちょっとだけこれが得意、これは少し苦手…、そういった小さな個性や才能も、これからの人生を少しずつ形作っていくのです。
4.「学びの本質」を振り返ってみる
ここで、ランチョーが教育の本質と競争中心の学びの危険性を強調した名シーンの一部をご紹介します。
「1分前に戻って考えて下さい。僕がこの問題を書いた時、『今日は新しいことが学べる!』と思った人はいますか? 学長は? 誰もいない。皆、ただ競争に夢中になっているだけだ。でも、この競争に勝って何の得が? 知識が増える? それも違う。ただプレッシャーが増すだけだ。大学は圧力鍋ではない。ムチを使えば、サーカスのライオンだって芸をするが、それは訓練であって、教育ではない」(映画「きっとうまくいく」より)
これは、ランチョーが学長から罰として授業の講師を任された際の印象的なエピソードです。
ランチョーは黒板に「FARHANITRATE」と「PRERAJULISATION」という架空の単語を書き、生徒たちに30秒以内にその意味を調べるように指示しました。
問題を聞いた瞬間、生徒たちは焦りながら教科書をめくり、必死に答えを探し始めます。誰もが教室の中で一番になりたくて、競争心に駆られていたのです。
しかし、その光景を見たランチョーは問いかけました。「競争に勝つことに、本当に意味があるのか?」と。彼は続けて、「本当に大切なのは、心から好きなことを学び、それに目を輝かせることだ」と強く伝えたのです。
学習する本来の目的はより人生を楽しくすること
上記エピソードについて、どんなことを感じたでしょうか?
筆者自身は、学生時代にあまり勉強が好きではありませんでしたが、英語の授業は唯一大好きでした。
それは、「いつか海外を旅して英語を使っていろんな人と話したい」という気持ちがあったからです。
そんな気持ちがあると、先生に質問される前に自ら考え、自然と問いが生まれるものです。
学校の授業は、テストや受験で高得点を取ることが目的になりがちです。しかし、本来はその知識を活かして人生をより楽しくすることが本質なのではないかと、このエピソードから考えさせられました。
5. 「結果」よりも「過程」を褒める
ランチョーは、「結果」よりも「過程」を重視し、何を学んだか、どう学んだかを大切にしています。
お子さんが不登校になった場合、親としては「学校に行っていないという『結果』」に目が行きがちです。ですが、それ以上に大切なのは、お子さんがどのように日々を過ごし、どのような学びを得ているかです。
(お子さんの元気さ次第でもありますが、)「不登校である」ということからはいったん目を離して、「今日は何を学んだ?」や「どんなことが面白かった?」といった質問を通じて、過程を褒めることで、お子さんは少しずつ自信を取り戻していくでしょう。
6. 「All is well(きっとうまくいく)」という安心感を伝える
映画の中で繰り返し登場する言葉、「All is well(きっとうまくいく)」は、どんな困難な状況でも前向きに乗り越えるための魔法の言葉です。
お子さんが不安や恐怖を感じているときに、親として「大丈夫、きっとうまくいくよ」と声をかけることは、お子さんにとって大きな安心感につながるでしょう。
この言葉を、まずは本心から信じてみてください。そして、日常的に使ってみてください。「今日もきっとうまくいくよ」「何があっても、きっと乗り越えられるよ」といった言葉は、お子さんの心に寄り添い、前向きな気持ちをサポートします。
7.真の意味での教育や成功を再考する
『きっとうまくいく』は、教育や成功についての価値観を見つめなおすきっかけを与えてくれる映画です。
そこから得られるメッセージは、不登校のお子さんを持つ保護者の方にも、多くのヒントが詰まっています。
私もこの映画を観たことで、人生の岐路に立ったとき、自分が本当に望んでいるものを見つめ直すようになりました。
そして、決断に迷ったときは「All is well(きっとうまくいく)」と自分に言い聞かせることで、安心感を得られ、前向きに進んでいけた気がします。
お子さんの気持ちを尊重し、個性を大切にしながら、安心感を与えることが「不登校の次の一歩」につながるかもしれません。
現代の子どもたちは、SNSなどの影響で情報の洪水にさらされ、迷うことが多いです。焦らずに、いろいろなことを試す機会を与えることも大切です。
ぜひこの映画を観て、お子さんの心に寄り添いながら、「きっとうまくいく」という前向きなメッセージを感じてみてください(そしてよければ、お子さんにも勧めてみてください)。
■日活公式サイト『きっとうまくいく』(ネット配信サービスへのリンクなども掲載されています)