ADHDは見た目でわかる?いえ、わかりません!
ADHD(注意欠如・多動性障害)のあるお子さんは、特性に関連して不登校になることがあります。
そして、ADHDのあるお子さんの保護者の方、また我が子にADHDがあるかもしれないと思っている保護者の方から、「ADHDは、見た目でわかるんでしょうか」という声をお聞きすることがあります。
結論から申し上げると、ADHDは、見た目ではわかりません。
以下、「ADHDと見た目」について解説します。大切なことは、あなただけ(保護者だけ・家庭だけ)でお子さんのことを抱え込まず、サポート団体を利用することです。
この記事を読むことで、「相談」への迷いやためらいが晴れたなら幸いです。
目次
1.まずは簡潔に、ADHDの概要を紹介
ADHDとは、「注意欠如・多動性障害」を意味する、発達障害の一種です。
英語名である「Attention-Deficit Hyperactivity Disorder」の略語として、「ADHD」と呼ばれます。
ADHDには多くの特性があります。その中でも、次の2点がよく見られるものとして挙げられます。
①不注意
忘れ物やケアレスミスが多く、確認作業を苦手とする
②多動・衝動性
気が散りやすく、貧乏ゆすりなど常に身体を動かしていないと落ちつかない
ほかによく挙がる特性の現れ方に、「マルチタスクやスケジュール管理が苦手」などがあります。
この記事では、ADHDの詳細や、不登校との関係は省略します。気になる方は、記事「『ADHDと不登校』の概要・総論を紹介します」をご覧ください。次のようなことを掲載しています。
- ADHD(注意欠如・多動性障害)とは、発達障害の一種
- ADHDの診断は医師だけが可能
- ADHDの医学的な診断基準
- ADHDの特性への3つの対応方法
- ADHDは、生まれつきのもの
- いわゆる「大人のADHD」とは
- いわゆる「グレーゾーン」とは
- ADHD以外の発達障害
- 「不登校のわが子にADHD(発達障害)がある」とわかって安心する保護者は少なくない
- ADHD(発達障害)が確定することを不安に思う方も
- ADHDと不登校の関係
- ADHDや不登校の相談先
- ADHD(発達障害)の関連記事
■関連記事:
「ADHDと不登校」の概要・総論を紹介します
2.結論:ADHDは、見た目ではわからない
ある人にADHDがあるかどうかは、見た目ではわかりません。
「見た目ではわからない」からこそ、「特性への理解を得づらい」という人もいます。
そもそも、ADHDに限らず「ある人に、どのような障害や病気があるか」というのは、医師による診察や検査を経ないとわかりません。
「アトピー性皮膚炎や結膜炎などは、見た目でわかるのでは?」と思うかもしれませんね。
しかしそれも、あくまで「アトピー性皮膚炎や結膜炎『かもしれない』」という状況なのです。
正式な病名や障害名、そして適切な治療法を知るためには、病院に行くことが大切です(医学的な「治療」ではない、ADHDの特性への「対応」については、サポート団体で知ることもできます)。
3.病院に行く前に、サポート団体に相談できる
この章は、病院に行っていない人に向けた内容です。
特にADHDなどの発達障害については、「確定診断が出たことで安心した」という方は珍しくありません。
一方で、「病院に行って検査して、ADHDが(発達障害が)あると確定することが怖い」と思う人もいます。
困りごとの度合いによっては、診断が不要な場合もあるでしょう。
診断を受けるかどうかを迷うなら、病院に行く前に、サポート団体と話をすることをオススメします。(サポート団体・相談先の例はこちらで紹介しています)。
サポート団体では、「検査を受けるべきか」ということから相談できます。また、診断がなくても利用できるサービスを紹介されたり、特性への対応法を考えたりもできます。
4.ADHDは見た目ではわからないが、特性が行動に反映されることはある
ある人にADHDがあるかどうかは、見た目では直接的にはわかりません。
ただしその上で、ADHDの特性は行動に反映されます(具体的な現れ方は、人によって異なります)。
特性に関連する行動は、広い意味では見た目に含まれるかもしれません。
特性に関連する(可能性がある)行動を見た人から、「ADHDがあるかもしれない」と思われることはありえます。
特に子どもの場合、ADHDの特性の現れ方の例には、次のようなものがあります。(大人の場合でも、類似するものはあり得ます。参考:『発達障害の子どもたちは世界をどう見ているのか』岩波明/SB新書/2023年、『発達障害の人が見ている世界』岩瀬利郎/アスコム/2022年)
- 着席できず、しゃべり続けることで集団生活になじめない
- 衝動的な言動、友達に対する攻撃性がみられる
- ひんぱんに起きる忘れ物、落とし物、なくし物
- 集中力が続かず、好きなものだけに集中する思ったことをそのまま口にして、不要なあつれきを生む
- ケアレスミスがひんぱんに起こる
- やるべきことを後回しにする、先送りする
- 宿題の量が負担になる
- 入眠困難や不眠がある
- 人が話をしているのに、上の空で全然聴いていない
- 衝動的に怒ったり笑ったり気分が態度に表れやすい
- ささいなことで怒り出して止まらない
- 行列の最後に並んで順番を待つという、シンプルなルールが守れない
- 遅れてはいけないと思っているのに、なぜか毎度遅刻する
参考として、特に大人の場合の特性の現れ方の例を紹介します。(※子どもの場合でも、類似するものはあり得ます。参考:『発達障害の人が見ている世界』岩瀬利郎/アスコム/2022年)
- 仕事でも家事でも失敗続き。そのほとんどが”単純ミス”
- せっかちで、仕事でもプライベートでも常にセカセカ、イライラ
- 新しいものを見ると後先考えず衝動的に買い、すぐに飽きる
- 片付けられない、処分できない。汚部屋に住む
5.見た目に限らず、「こういう行動があればADHD」という決めつけはできない
自分の子どもについても、それ以外の人についても、医師ではない人間が「こういう行動があればADHD」という決めつけを行うことはできません。
見た目も含めて、そのような簡単な判断ができないからこそ、医師は、検査を経て「ADHDかどうか」を診断します。
特に子どもであれば、忘れ物をしたり、順番を待てなかったりというのは、ADHDがなくてもある程度は見られるものでしょう。
そして、「ADHDであれば、必ずこういう行動をする」というものもありません。
特性の現れ方は、人によって異なるからです。
さらに、ADHDのある人は、他の発達障害(ASD、LDなど)が併存することもあります。その特性が、ADHDの特性と合わさって、または別個に現れることもあります。
障害とは関係のない「性格」による行動も、もちろんあります。
書籍などをご覧になってADHDへの理解を深めることは大切ですし、大いに参考になるはずです。
その上で、「実際の、あなたのお子さん」については、決めつけを行わずに、病院やサポート団体などときちんと話し合うことが大切です。
そうすることで、特性に伴う生きづらさへの適切な対応を、いっそう見つけやすくなります。
6.「ADHDは見た目でわかる」かどうかを知りたい理由とは?
このコラムをお読みのあなたは、なぜ「ADHDが見た目でわかるか」を知りたいのでしょうか。
不登校オンラインが見聞きする範囲では、主には次の2つの理由があるようです。
- 我が子にADHDではないかと思われる傾向がある。見た目でわかる方法があるなら判断したい
- 我が子がADHDの確定診断を受けた。ADHDがあることが、見た目で周りにバレるか心配している
どちらも保護者さまの切実な思いかもしれません。
繰り返すとおり、「ADHDは見た目ではわからない」ということをご理解いただければ幸いです。
1については、「ADHDがあるか」を確定させたいなら病院に行きましょう。診断を受けるべきかどうかを考えたいならサポート団体に相談しましょう。
2については、世間にADHD(発達障害)に関する偏見があることは否定しません。また、「こういう行動をしているから、ADHDに違いない」と決めつけ(と、それに伴う差別的な言動)を行う人もいるかもしれません。
こちらも、あなた一人(保護者だけ、家庭だけ)で対応を考える必要はありません。サポート団体は、これまでに「偏見や決めつけ」への対応を、考え、行い続けています。相談することで、きっとよい対応が見つかるはずです。
7.ADHDや不登校の相談先
ADHDと不登校について相談できるところはたくさんあります。以下に例を紹介します。ぜひ、ご相談ください。
■ADHDについての相談先
- 発達障害の専門家がいる医療機関(小児神経科・精神科、発達外来など。近くに小児精神科・精神科がない場合や、それらに抵抗がある場合には、かかりつけの小児科医に相談しましょう)
- 小児科
- 学校の担任
- スクールカウンセラー
- 市区町村役所の子育て相談窓口
- 地域の保健センター、子育て支援センター、児童相談センター
- 発達障害支援センター
- 発達障害や不登校の親の会
- 民間の発達障害支援機関
- 発達障害のある子どものサポートを行う学習塾
■不登校についての相談先
記事「不登校のサポート団体・専門家(相談先)の例と探し方を紹介します」をご覧ください。
■そのほかの相談先
Webページ「お悩みのあるあなたのために、相談先一覧をまとめて紹介します」をご覧ください。(リンク先は、不登校オンラインと同じく株式会社キズキが運営する個別指導塾・キズキ共育塾のウェブサイトです)
8.ADHDと不登校の関連記事〜困りごとの例や、保護者や周囲にできるサポートを紹介〜
不登校オンライン、キズキ共育塾(※1)、キズキ家学(※2)では、ADHD(発達障害)と不登校についての記事を多数公開しています。
※1不登校オンラインと同じく、株式会社キズキが運営する、不登校や発達障害のある子どものための完全個別指導塾です。
※2:同じく家庭教師です。
以下に紹介しますので、気になるタイトルがあればぜひご覧ください。それぞれのテーマで、保護者や周囲にできるサポートも記しています。
■不登校オンライン
「ADHDと不登校」の概要・総論を紹介します
タイトルどおり、ADHDそのものの概要と、不登校との関係の総論について紹介する記事です。次のようなことをお伝えします。
- ADHD(注意欠如・多動性障害)とは、発達障害の一種
- ADHDの診断は医師だけが可能
- ADHDの医学的な診断基準
- ADHDの特性への3つの対応方法
- ADHDは、生まれつきのもの
- いわゆる「大人のADHD」とは
- いわゆる「グレーゾーン」とは
- ADHD以外の発達障害
- 「不登校のわが子にADHD(発達障害)がある」とわかって安心する保護者は少なくない
- ADHD(発達障害)が確定することを不安に思う方も
- ADHDと不登校の関係
■キズキ共育塾
- ADHDと不登校の関係性 親ができる対応を解説
- ADHDのある中学生の子どもがいる親御さんへ 勉強のコツや学校生活の注意点を解説
- ADHDのある人に向いてる学習塾 塾選びのポイントを解説
- ADHDのある子どもに親ができる受験対策 有効な勉強法を解説
- ADHDのある子どもが集中できる勉強法 ADHDのある子どもと関わる際のポイントを解説
- 発達障害の子どもの不登校 関連性や親ができる対策を解説
- 発達障害のあるお子さんに親ができる8つのサポート 代表的な困りごとや支援機関を紹介
- 発達障害グレーゾーンの子どもとは? 年齢別の特徴や伝え方のコツを解説
- 発達障害のある子どもにオススメの学習塾 塾選びのポイントを解説
- 発達障害のある人の進路 小学校・中学校・高校別に進路選択のポイントを解説
- 発達障害のある子どもの中学受験 メリット・デメリット、確認事項を解説
- 発達障害グレーゾーンのある中学生に親ができる対応5選 勉強のためにできるサポートを解説
- 発達障害のある中学生の「勉強についていけない」を解決する勉強法
- 発達障害のある子どもの高校受験 親にできるサポートを解説
- 発達障害の子どもが大学受験するときの確認事項・サポート方法
- 発達障害のある人に手厚い大学とは? 見極めるポイントや支援内容を解説
- 「発達障害のある、勉強嫌いな子ども」がいる親ができる対応6選
- 「発達障害のある、不登校で勉強しない子ども」に親ができる勉強サポート法
- 「発達障害のある、勉強についていけない子ども」のために親ができる8つの対応
■キズキ家学
- 子供の発達障害の種類|それぞれの特性・受けられる支援・相談先も
- 担任の先生への発達障害の伝え方 合理的配慮をお願いする方法も解説
- 発達障害の相談はどこにする?8つの相談窓口・病院での診断の流れも
- 発達障害で勉強についていけない子どもが勉強の遅れを取り戻す11の方法
- 算数ができないのは発達障害の特性?算数に困難のある子どもへの支援
- 発達障害で宿題に時間がかかるのはなぜ?理由・改善方法・相談先を紹介
- 発達障害グレーゾーンの小学生|家庭・学校での支援、相談先を紹介
- 発達障害の小学校一年生。その困り事、親にできる対応、相談先などを紹介
- 発達障害による小学生の癇癪 親ができる7つの対応・相談先を紹介
- 発達障害の小学生のトラブル|友達や学校でのトラブルを防ぐための対策
- 【発達障害の子供のパニック】対応方法・相談先・進路について解説
- 発達障害の子どもの友達作りのために、親ができる11の方法
- 【発達障害の中学生】具体的な困り事・親ができる7つのサポートを紹介
■キズキビジネスカレッジ
キズキビジネスカレッジ(※3)では、ADHD(発達障害)のある大人の方向けに、困り事や対応法の記事を公開しています。
※不登校オンラインと同じく、株式会社キズキが運営する就労移行支援事業所です。
こちらのコラム一覧ページを「ADHD」や「発達障害」で検索すると、様々な切り口の記事がヒットします。気になるものがあれば、ぜひご覧ください。
9.最後に〜ぜひ、サポート団体と話してみてください〜
以上、「ADHDは見た目でわからない」という話と、付随する話をお伝えしました。
ADHDや不登校に限らず、お子さんのことを保護者だけ(家庭だけ)で抱え込む必要はありません。
様々なサポート団体が、あなたとお子さんを文字どおりサポートします。
ぜひ、お子さんに、そして保護者であるあなたに合うサポート団体を探して、相談してみてください。