保護者の孤立はNG! 不登校中の上手な学校の利用方法
不登校は、お子さんはもちろん、保護者の気持ちにも大きな影響を及ぼします。
「保護者としてどうすればいいのだろう……」と悩んでいるときに、学校からお子さんの近況を尋ねる電話があると、何を答えればよいのか分からずプレッシャーがどんどん増大しますよね。
この記事では、お子さんの不登校中に学校とどのように関わればよいのかお悩みの方や、誰にも相談できずに悩んでいる方に向けて、学校や支援団体の上手な利用方法をまとめました。
目次
保護者の孤立を防ぐ! 学校を利用するメリットとは
そもそも、お子さんが欠席している間に、保護者が学校とコミュニケーションをとる必要はあるのでしょうか。
お子さんの不登校にお悩みの保護者の方は、ぜひ「頑張りすぎない」という意識を持ってください。
保護者だけで孤立しそうなときは、学校を情報源として上手く利用するのも一案です。学校から有益な情報が得られれば大きな収穫を得られますし、仮に何も情報が得られなくても状況が悪化することは決してありません。
ここでは、学校とコミュニケーションをとるメリットを3点挙げながら、上手な学校の利用方法を紹介します。
ただし、「学校だけに相談する」ことを推奨しているわけではありません。学校以外のサポート団体とも早めにつながることで、「学校とどう付き合うべきか」も相談できます。
また、学校の対応に不信を感じたり、先生が不登校の原因であったりする場合は「無理をしない! 学校が頼りにならない場合の対処法とは」の章を参照してください。
不登校は保護者だけで抱え込まない。積極的に周囲に協力を求めて!
くり返しになりますが、学校を利用するメリットを述べる前に、まず強調したいのは「子どもの不登校は保護者だけで抱え込まない」という大前提です。
お子さんの不登校に直面すると「保護者である自分が何とかしなければ……」「子どものことは家庭でなんとかするべき……」と悩みます。
もちろん、不登校中のお子さんは心が不安定になりやすいため、保護者が寄り添い支える必要はあります。
しかし、不登校を家庭だけで受け止めようと抱え込むと、保護者自身に大きな負担がかかります。
NPO法人「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」が2022年10月に全国の不登校の子どもの保護者が集まる「親の会」を対象に行ったアンケートによると、半数以上の保護者が、子どもが不登校になって自責の念を抱いた、孤独感・孤立感を感じたと回答しています(参考:朝日新聞デジタル2023.9.25記事「子どもは7割弱が「心が安定」 保護者の6割に自責や孤独感、支出増9割 調査から見える不登校の影響」)。
心に余裕がなくなると、どんどんものごとを冷静に判断できなくなり、かえってお子さんの回復から遠ざかる可能性があります。
状況の好転に向けて、ご自身のため、そしてお子さんのために、まずは一歩踏み出し、周囲に協力を求めることが重要です。
学校を利用するメリット① 子どもの情報を事前に理解できている
「子どものことを誰かに相談したい」と思ったとき、国の見解では、最も手近な相談先として学校を挙げています。なぜなら、学校はお子さんに関する情報(性格や成績などの近況、学級・部活などでの人間関係)を事前に把握しているからです。
「子どものことを他人にあれこれ話したくない」「とにかく今すぐ何か助言が欲しい」という場合は、すでにお子さんに関する情報を持っている学校に連絡を入れてみましょう。
学校が適切に生徒の情報を把握できていれば、保護者が知らないお子さんの一面も教えてくれるかもしれません。
とくに、お子さんが学校のことを家で話したがらない場合には、無理に聞き出さずに、学校に質問してみるとよいでしょう。
学校でのお子さんの様子を聞く質問例
- 普段どんな友だちと遊んでいるか
- 昼休みはどのように過ごしているか
- 授業に参加できているか
- 成績はどれくらいか
- (家庭での様子に変化が見られた)ある時期に、何かの出来事が学校で起きたか
これらの情報は、お子さんをよりよく理解することにつながります。
「保護者として子どもにどう接すればよいのか分からない」とお悩みの方は、お子さんの学校での様子を知ることで、働きかけのヒントを得られるかもしれません。
なお、「子どもが不登校になった原因が分からないから、担任に聞いてみたい」という場合は、「学校に期待しすぎない」というスタンスが重要です。
不登校の原因は本人にもはっきり答えられないことが多く、また、とても複雑です。そのため「学校からの回答が明確でなく、すっきりしなかった」ということも十分にありえます。
ただし、あまりにも正しくお子さんのことを理解していない場合は、「無理をしない! 学校が頼りにならない場合の対処法とは」の章を参照してください。
学校を利用するメリット② 学校の配慮で状況が好転する可能性がある
不登校は複数の要因が重なって起こる現象ですが、学校生活の何かしらが原因の一端であることもありえます。
※不登校の要因に関しては、不登校オンライン「文部科学省の調査に見る、小中学生の不登校の主たる要因:令和4年(2022年)版」をご参考ください。
お子さんが学校で抱えている悩みが明らかになっている場合は、学校からの配慮を得ることで、状況が好転する可能性があります。
とくに昨今では、保護者が思いつかないような新しい打開策が提案されるケースも増えています。
「どうせ無理だろう」「学校は忙しいだろうから気が引ける」などと悩まずに、まずは学校に相談してみてください。
学校の配慮で対応可能な例
- 苦手な授業がある
→該当の時間だけ別室(保健室や図書室、学習室など)で過ごす - 人前で発表したくない
→放課後に先生と二人だけで発表する - 授業中に指名されたくない
→指名しないようにする - 苦手な生徒がいる
→席を離す、クラス替えのタイミングで別々にする、地域の別の公立校に転校する
無理のない範囲で構いませんので、日頃からこまめに電話連絡・配布物の受け取り・面談をして学校とつながっておけば、いざという時に協力を得やすくなります。
学校を利用するメリット③ 不登校支援に関する情報を持っている
総務省実施のアンケートで「学校の教室に通えなくなったことで、お子さんがどこでどのような学び方・過ごし方をするのがよいのかを考える際に、必要だと思う情報は何か」を問うと、7割以上が「相談窓口」「学校以外で支援を受けた場合の出席扱い」「教育支援センター等の公的機関の支援内容」「フリースクールなどの民間施設の支援内容」に「当てはまる」と回答しました(参考:総務省「「不登校・ひきこもりのこども支援に関するアンケート調査の結果」令和5年7月版)。
この結果からも、お子さんをサポートするためには、保護者が不登校支援に関する情報を入手しておく必要があると分かります。
不登校支援に関する、保護者が知っておきたい情報の例
1.相談・支援の窓口
サポート団体や相談先には、次のような例があります。
それぞれ、特徴も調べておきましょう。特徴とは、次のようなことです(事前に調べられることには限界もあるので、最初に軽くメールや電話で聞く方法もあります)。
確認しておきたい特徴
- 何を相談できるのか
- 匿名か否か
- 予約の可否、要否
- 相談形式(電話・面談・メール)
- 利用料金
- 理念
- 空き状況
- 通いやすさ
2.出席扱いに関する情報
保健室登校や放課後登校、学校外の施設へ通っている際の出欠の取り扱いに関する決まり
3.進級に関する情報
出席日数、試験、行事、提出物など、進級に必要な要件
4.進路に関する情報
転校先(通信制高校など)の候補、高卒認定の受験方法、就職方法など
* * * * *
ただし、上記の情報を保護者が一つ一つ調べるのは大変な労力と時間がかかります。
本来学校は、文部科学省の通知に基づき、不登校のお子さんを持つ保護者に対して、適切な支援や働き掛けを行ったり、相談体制を整えたりする役割を担っています(参考:文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日)。
とくに公立校には、自治体特有の制度や居場所に関する情報など、地域に根差したデータが集まっています。
知りたい情報がある場合は「○○について教えてほしい」と積極的に保護者から働きかけ、情報を聞き出してください。
重要なことは、保護者だけで頑張りすぎないことです。
学校は、教員をはじめ、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、養護教諭など、不登校に関する情報を持っている人々が集まる貴重な場です。
「学校は有益な情報源」と考え、上手く利用することをおすすめします。
無理をしない! 学校が頼りにならない場合の対処法とは
上記のとおり、不登校中に学校を上手く利用することは、保護者やお子さんにとって、多くのメリットがあります。
しかし、学校とのやりとりは、時に保護者にとって大変なプレッシャーとなります。
「毎日の欠席連絡がつらい」「面談のたびに責められているように感じる」など、学校とのコミュニケーションが心に負担を与えるようであれば、無理をする必要はありません。
また、担任がお子さんのことをまったく理解していなかったり、不登校支援に関する情報を把握できていなかったり、そもそも学校側に不登校の要因があったりなど、不信感を抱いている場合も、学校と信頼関係を構築しがたいものです。
「すでに相談しているけれど、アテにならなさそう」というケースもあるでしょう。
ここでは、学校が信頼できない場合の対処法を紹介します。
※学校が協力的かどうかに関わらず、最初から「学校以外の相談先にも並行的に相談する」ことをおすすめします。学校以外のサポート団体では、「学校とどう話をしたらいいのかわからない」という相談も可能です。
ステップ1 担任に要望を伝える。改善しなかったら担任以外の教員へ相談
担任の対応にプレッシャーや不信を感じた際、まずおすすめしたいのが、担任本人に正直に要望を伝えることです。
「毎日欠席連絡をしたくないので、出席するときだけ電話をしたい」「今月の面談はキャンセルしたい」「再登校に関する話はしないでほしい」「○○についての情報を調べてほしい」など、具体的に要望を伝えてみてください。
それでも状況が改善しない場合は、学年主任や不登校担当教員、養護教諭、スクールカウンセラー、管理職(教頭・副校長・校長)などに相談します。
なお、学校関係者の対応に不満があったとしても、学校との対立はなるべく避けたいものです。
どうしても感情的になりそうな場合は、言いたいことをあらかじめ紙に書き出しておくなど、冷静に話し合いができるように工夫してください。
また、電話やメールなど顔が見えない状態でやり取りすると誤解が生じやすいため、大切な話をする際は、面談を申し込むようにしましょう。
勇気を出して学校に連絡したのに対応が不親切であったときは「学校が頼りにならないことが分かってよかった」とプラスに捉えると、気持ちに余裕が生まれます。
また、勇気を出して相談できたという経験は、別の第三者に相談するときに活かすことができます。
ステップ2 学校以外のサポート団体を積極的に利用する
担任以外に相談しても改善しなかったり、学校とのコミュニケーションが苦痛になったりするようであれば、無理をせず学校以外の機関を利用しましょう。
一番避けたいのは「子どもの不登校について誰にも相談できない」という状況です。
上述の「学校を利用するメリット③ 不登校支援に関する情報を持っている」でも触れましたが、学校以外にも不登校を支援する団体はたくさんあります。
施設や団体には、それぞれ特徴があります。たとえば公共の施設であれば、地元に密着した情報が得られる反面、知り合いに遭遇する不安を抱く方もいらっしゃいます。
この場合、お住まいから離れた民間の施設であれば、相談に行く際の心理的ハードルが少し低くなるかもしれません。重要なのは、保護者やお子さんが通いやすく、相談していて心地よいと感じられる場を見つけることです。
支援団体の選び方は「サポート団体・相談先」を参考にしてください。
不登校は保護者だけの問題ではない! 学校や支援団体とつながることが大切
不登校の子どもへのサポートには、周囲の協力が不可欠です。
決して保護者だけで抱え込まずに、少しでも困ったことがあれば、積極的に第三者に相談してください。
相談先の一つは、お子さんに関する情報を事前に把握している学校ですが、教員の対応に不満がある場合は無理をする必要はありません。
支援団体は複数あるため、それぞれの特徴を踏まえて、最も居心地のよい場所を選ぶようにしてください。
お子さんも、保護者のみなさんも「次の一歩」へ!