ハードルが高い?「親の会」をためらうあなたに知ってほしいこと

#不登校#行き渋り#親の会

子どもが学校に行かなくなるなんて……。

子ども自身ももちろんですが、保護者もさまざまな不安や心配を抱えています。「子どものために」と思うからこそ悩みも深くなります。気づけば、家族がお互いに暗い顔で過ごしてしまっていることも。

そんな時は、少しだけ周りを見渡してみませんか。

「ほかの人はどうしてるんだろう」と視野を広げることで自分たちの助けになることが見つかるかもしれません。

「不登校の子どもの親の会」は、同じような経験をした保護者たちが集まる場です。この記事では、「参加してみたいけどためらいがある」みなさんに、親の会の活動内容や参加方法などを紹介します。

編集

不登校オンライン編集部

そもそも、「親の会」とは?


■親の会が目指すこと

「不登校の子どもの親の会」は、同じような経験をしてきた保護者たちが、情報交換をしたり、思いを共有したりする場所です。会が目的にしていることや大事にしていることによって、活動内容に違いはありますが、どの会も、同じような悩みを持つ保護者が、ひとりで抱え込んで孤立しないようにするために活動しています。

だれでも参加できるよう、難しいルールはありません。事前の参加申し込みが不要な会も多いので、思い立ったその日に行ってみることもできます。

■会のあり方はさまざま

NPO法人であったり、任意団体であったりと、会のあり方はさまざまです。なかには、自治体から委託を受けて活動していて、自治体のウェブサイトなどで情報を得ることができる会もあります。

活動の頻度や参加費の有無、「子ども同伴参加の可否」なども、会によって違いがあります。近隣の人だけでなく、全国のだれでも参加できるよう相談窓口を設けている会もあります。

まずはじっくり親の会を探してみましょう。

■親の会の探し方

では、親の会はどうやって探せばいいのでしょうか。

SNSなどの情報ツールが広がっており、会の専用ページを設けているところも増えてきました。まずは、使い慣れているツールで探してみましょう。

親の会の情報を一覧表などでまとめてくれている自治体もあります。学校のスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが把握していることもありますし、自治体の関連相談窓口に直接たずねてみると、情報が手に入ることもあります。

親の会ではこんなことをしている!

■親の会、行ってどうすればいい?

多くの場合、「座談会」「お茶会」などの呼称で参加者が自由に話せる場を設けてあります。「匿名で参加できる」「会で話されたことは他言しない」「いつ来てもいつ帰ってもいい」「話しても話さなくてもいい」など、安心して参加できるように工夫されています。

まずは、短時間参加してみて、会の雰囲気を感じてみてはどうでしょうか。

より安心して参加できるよう、事前に問い合わせをしたり、「〇日に参加したいが、話を聞くだけにしたい」など要望を伝えておくことも可能です。

■ただのおしゃべりに、どんな意味がある?

「子どもを置いて、自分だけ出かけるのはちょっと……」。
「そもそもおしゃべりだけして、何か役に立つことがあるのだろうか」。

子どもの不登校ときちんと向きあうからこそ、そして、子どもが心配だからこそ、そんな思いが沸き上がります。
親の会のおしゃべりの場には、次のようなはたらきがあります。

①情報提供、情報共有
1つめは、情報の提供と共有です。

フリースクールや子どもの居場所といった社会資源の情報や、学校の新しい取り組み等子どもの学びの機会に関する情報、進学や就労を視野に入れた今後のさまざまな選択肢についてなど、情報の内容は多岐にわたります。

親の会側から情報提供を受けられることも多いですが、参加者それぞれが持っている情報を共有できるのも親の会の特徴です。情報を得られるだけでなく、実際に利用した体験を共有することで、自分の子どもや家庭にとって合うか合わないか、情報を利用するかどうかを判断しやすくなる側面もあります。

わが子より年上の子どもたちの親が持つ情報は、先を見通して準備する時間的余裕や、あらかじめ知っていることによる心理的余裕を生んでくれることもあります。

②経験の共有・分かち合いと、リフレッシュ
2つめは、「わたしだけじゃない」を感じること

保護者同士、経験や思いを分かち合って「分かる!」「そうだよね!」と言い合えると、不思議と緊張がゆるみます。時には思わず笑ってしまうことも。

疑問や不安が解消することばかりではありませんが、どんな思いも、その場にいるだれかはすでに経験しています。周囲との調整や子どもとの対話・関わりで、保護者が傷つき体験を重ねていたり、プレッシャーを抱えていたりすることも少なくありません。

その体験を知っている人がいる。理解してくれる人がいる。親の会のおしゃべりの場はそんな支えを得られる場所でもあるのです。

【ショート体験談】がんばり過ぎていた母親が変わった瞬間


「親の会に参加しても、子どものことが解決するわけじゃないのなら、意味がないんじゃないか?」

情報が得られても、保護者の気が晴れても、それでいいのかと思うかもしれません。確かに、親の会は「課題を解決してくれる場所」ではありません。どちらかというと、十分にがんばって、がんばり過ぎている保護者にひと息つかせてくれる場所です。

親の会に参加して数回目の、アヤさん(仮名)の例を見てみましょう。

「病気でもなく学校を休んでいるのに、家でもダラダラ。勉強もしないしゲームばっかり」。そんな子どもの姿について、アヤさんはある日、親の会で話します。「うちもよ」「わかるわ~」と共感の声があがりました。

 


「よかった、同じ経験をしている人がいた」とアヤさんは安心します。

 

「ほかの人はどうやって解決しているのだろう」と期待を持って聞いてみると、ある参加者から「言っても聞かないから何も言わずに放っておいたら、この間、急に机に向かって勉強してたわ」なんて話が……。

 

「え、放っておくの?」と意外に思ったアヤさん。
いやでもしかし。

 

「うちの子は放っておけばそのままかもしれない! やっぱり親が何とかしないと!」と言えば、少し年上の参加者が「ほんとにそう、親が心配して言ってるのに、子どもには響かないのよね。うちの子もゲームばっかりで。いくら言ってもやめないし、途方に暮れたこともあった~」と受けてくれました。

 

そのまま話が続きます。
「でもいつだったか、プログラミングの講習を受ける機会があって、すっかり夢中になってね。今はプログラミング関係の専門学校に行きたいらしくて、学校には行かないけど勉強はしてるみたい」と。

 

「家で勉強? それでいいのかな」。
「親から言われなくても、子どもって自分で動くものなのかしら」。
話を聞きながら、アヤさんは思案します。

 

「学校に行かないといけない」「勉強は学校でないとできない」「親がさせないと勉強しない」「好きなことばかりしていてはダメ」……

 

アヤさんの価値観の水面に落ちた一滴の雫が、大きな波紋となって広がった瞬間でした。

 

筆者自身、長女と次女が学校に行きにくくなり、親の会へ参加しています。親の会に参加することで、筆者もアヤさんと同じような経験を何度もしました。

自分が正しいと思っていたことや常識だと思っていたことが、人や家庭によって、まったく正しくも常識でもなかったことに気づく体験です。その体験は決して苦痛ではなく、むしろ限界まで入っていた肩の力がすとんと抜けるような体験でした。「あ、それでいいのか」と、張りつめていた心が楽になったのです。

親の会への参加で得た「気づき」をきっかけに、筆者自身には次のような変化がありました。

  • 保護者同士が交流することで、家庭によっていろいろな考え方や価値観があることを実感できる
  • 保護者の価値観が正解でないことに気づくと、子どもへの対応が変化する
  • 保護者の不安、心配が解消されることによって、子どもとの関わりにゆとりが持てる
  • 保護者の肯定的な変化が子どもに安心感を与える
  • 安心感を得て、子どもが休息できる
  • 十分な休息を経て、子どもが自分自身と向き合えるようになる

親の会に求めること、参加する目的は人によってさまざまです。筆者の体験もあくまで一例ですが、「話してみる、話を聞いてみる」だけで、だれもがこれまでとは違う景色に出会えると思います。

親の会への参加をためらう理由と解決策

■「知らない人とのおしゃべりが……」その知らない人も、おしゃべりが苦手です!

親の会の、参加者同士が自由に話せる場について紹介してきました。

でも、「だれでも自由に」と言われても、「わたしは人見知りで、そもそもおしゃべりが得意じゃない」と思う人は、やはり気後れするもの。
そんな人たちに知ってもらいたいのが、次の3つです。

①おしゃべりが苦手な人ももちろんいること
②親の会が開催する講演会や勉強会
③おしゃべりを目的にしない「作業型親の会」

1つずつ、見ていきます。会の特色を知り、自分に合う会を探しましょう。

①おしゃべりが苦手な人ももちろんいること
親の会に参加する人たちの共通点は、「子どもが不登校である」「その会の趣旨や活動内容に賛同したり、興味をもっていたりする」というところです。

つまり、おしゃべりが得意なひともいれば、苦手な人ももちろんいるということ。

「自分だけがおしゃべりが苦手なのではないか」「うまく話せないかも」と気後れする必要はありません。会の進め方や集まる参加者によりますが、思いがあふれて、ほとんどの時間を1人か2人が話し続け、聞くだけで終わることもあります。

反対に、公平におしゃべりができるよう、参加者がひとりずつ話をする時間を取る会もあるので、自分らしく安心して参加できるよう、気になることは事前に問い合わせてみましょう。

②親の会が開催する講演会や勉強会
親の会のなかには、定期的に専門家を招いて講演会を開いたり、保護者同士の勉強会を開催したりするところがあります。不登校経験者に話をしてもらう講演会などもあります。

そうしたイベントに参加しつつ、会の雰囲気を見てもいいでしょう。気が合いそうな人との出会いがあるかもしれません。

もちろん「情報を得る」と割り切って参加することも可能です。

③おしゃべりを目的にしない「作業型親の会」
おしゃべりを目的にしない親の会もあります。保護者が気持ちを楽にすると子どもにもいい影響があるのでは、という考えから、「大人が楽しむ」作業を主な活動にしているところも。子どもと一緒に参加できることも多いので、保護者だけの参加に抵抗がある場合でも安心です。

 

■「自分のことを知られたくない」そんな時は

「身近な人にほど相談しにくい、知られたくない」と悩むケースもあります。匿名でよいと言われても、また、会の内容がほかの場所では話されないとしても、地域内での集まりには参加しにくいものです。

そんな人は、全国からだれでも相談できるオンライン相談を利用してみてはどうでしょうか。

個別に相談できるものも、オンライン上で参加できる保護者のおしゃべりの場もあります。

対面、オンライン、いずれの場合にも、心配な時は事前に問い合わせてみるのがおすすめ。問い合わせへの対応からでも、自分に合うか、求めているものかが分かることもあります。

親の会に参加するときに心がけたいこと

■自分に合わせる

それぞれの親の会が大事にしたいことによって、会の特色が異なります。無理に溶け込もうとせず、自分に合うところがあるといいな、と気軽に探すつもりで参加してみましょう。

「会自体は合うが、特定のスタッフや参加者が苦手」ということも起こり得ます。せっかくの貴重な時間を親の会で過ごすのであれば、無理せず信頼できるスタッフに相談して、なるべく居心地よく過ごせるよう心掛けてください。

■たくさんの会に参加してみる

参加する親の会を1つにしぼる必要はありません。自分に合うと思う親の会が見つかったとしても、条件が許せば別の親の会に参加してみると、より視野が広がります。

もちろん、「自分に合わせる」ことは忘れず、無理せず、気軽に試してみる気持ちで。

子どもを優先して自分のことが後回しになりがちだからこそ、親の会は自分らしくいられる場所を見つけてください

悪質な不登校ビジネスには要注意!


保護者は、子どもの一挙一動に安心と心配をくり返します。時には結論を急ぐあまり、課題をすぐに解決してくれそうな方法を選びたくなることがあります。

十分に調べた上で、子どもとしっかりと話し合い、子ども自身の思いにも沿ったものであれば、新しい選択肢になり得ます。

一方で、「登校再開」などの限定的な解決策の提示、加えて極端な「効果」を謳う不登校ビジネスには注意が必要です。

高額な利用料が発生するケースや、子どもや家庭の事情に沿った支援よりも独自のセオリーによる助言が先行し、子どもも保護者もより疲弊するケースもあります。

学校に行きにくい、行かない選択をした不登校の子どもたちにとって、登校再開が必ずしも解決でないことはもちろん、子どもの事情、保護者の状況を顧みない対策は、事態の悪化を招くことにもなりかねません。

何か気になるサービスなどを見つけたら、できる限り周囲に相談してみましょう。

ひとりで抱え込まず、いろいろな人とつながって


子どもの数だけ、家庭の数だけ、悩みや心配があります。どの子どもや家庭にも通用する正解があるわけではありません。だからこそ、正解探しにとらわれず、いろいろな人の話を聞き、自分や子どもの話を聞いてもらってみてください。

親の会は、先に長く続くように思える暗いトンネルの壁にある、小さな窓のようなもの。少し開けてみれば、明かりが差し込むかもしれません。覗いてみれば、小窓の外の景色が見えるかもしれません。

嫌なら閉じてしまえばいいですが、その頃にはいろいろな小窓があることに気づいているはずです。

どうかひとりで抱えず、気軽に窓を開けて、いろいろな人とつながってみてください。

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