「今年も9月1日が来る」子どもの自死を防ぐための4つの原則【全文公開】

#不登校#行き渋り

 「9月1日」は子どもの自殺がもっとも多い日です。つらい気持ちを抱える子どもを前に、大人である私たちにできることは何か。それは「TALKの原則」に沿った対応です(※画像は『TALKの原則』)。

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 今年も「9月1日」がやってきます。過去40年間で、子どもの自死がもっとも多い日です。また近年、子どもの自死は増加の傾向にあります。厚生労働省によると、2022年の1年間でみずから命を絶った子どもの数は514人と、統計開始以来、初めて500人を超え、過去最多となりました。

 また、「いのち支える自殺対策推進センター」が2021年に公表した調査結果によると、インターネット上で「学校 行きたくない」というワードの検索数が増加したのち、子どもの自死が増加したという関連性があることが明らかとなりました。このことから、「学校へ行きたくない」という子どもの訴えは、命にかかわるSOSだと私は考えています。では、子どものSOSを大人が受けとめるために、何ができるのか。1つの道筋となる「原則」を紹介します。

TALKの原則 ポイントは

 つらい気持ちを抱える子どもに対応する際、重要となるのが「TALKの原則」です。これは、①「Tell」(言葉に出して心配していることを伝える)、②「Ask」(「死にたい」という気持ちについて、率直に尋ねる)、③「Listen」(絶望的な気持ちを傾聴する)、④「Keep safe」(安全を確保する)の頭文字を取ったものです。

 ここで言う安全確保とは具体的に「緊急時には子どもから目を離さないこと」、「登校させないこと」などが挙げられます。

 また、自殺問題に詳しい精神科医・松本俊彦さんは2つのポイントがあると言います。1つめは「Ask」について、「死にたいという気持ちについてたずねることは悪いことではない。瀬戸際にいる子どもの背中を押してしまうことにはならない」と指摘します。

 2つめは「Listen」について、絶対にしてはいけないことがある。それは「バカなことを言うな」と子どもの話を遮ったり、「死んではいけない、残された人はどうするんだ」などの正論をぶつけることだと松本さんは指摘します。

今だけじゃない 共通認識として

 学校の長期休み明けにあたるこの時期は、子どもの自死に大きな注目が集まります。しかし、子どもの自死は1年を通じて起きているのが現状です。親や教師といった立場に関係なく、つらい気持ちを抱える子どものそばにいるすべての大人が、子どものSOSに耳を傾けられるようになるためにも「TALKの原則」を共通認識として考え、実践していくべきだと考えます。(編集局・小熊広宣)

「TALK」の原則

①「Tell」
言葉に出して心配していることを伝える。

②「Ask」
「死にたい」という気持ちについて、率直に尋ねる。

③「Listen」
絶望的な気持ちを傾聴する。

④「Keep safe」
安全を確保する。

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(初出:不登校新聞609号(2023年9月1日発行)。掲載内容は初出当時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)

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