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「社会で通用しないぞ」 不登校の父親の失敗談から考える「父親だからできること」【全文公開】

#不登校#行き渋り#通信制高校

 「不登校と父親問題」は、今も昔も、不登校を語るうえでしばしば話題になるテーマです。問題と言ってしまうと、まるで父親が悪いように思われるかもしれませんが、そんなことはありません。多くの父親が悩み、葛藤しています。その一方で、父親がよかれと思った言動により、わが子を追いつめてしまうということもすくなくありません。では、実際にわが子が不登校になった父親は、何に悩み、何に葛藤し、それによって子どもをどう追いつめてしまったのか。その反省から見い出した「父親だからこそできること」とは何か。実例から考えます。

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 不登校の取材を続けておよそ20年、不登校経験者や母親から「父親としばらく話していません」、「書籍を渡しても読んでくれないので困っています」といった話を何度も聞いてきました。他方で、父親も葛藤し、悩んでいるという話も数多く聞いてきました。そこで今回は、不登校の子を持つ父親の語りから「父親にできること」について考えます。

わが子の不登校 父親の葛藤とは

 わが子の不登校に直面したとき、父親はさまざなことに葛藤します。これまでの取材では「社会に出て通用するのか?」、「不登校を認めてしまってよいのか?」など、父親としての本音を聞いてきました。

 Aさんの息子が不登校したのは中学2年生のとき。問題を解決したい一心から息子にあれこれ話しかけ続けたことで、息子は自室にこもり、Aさんが外出するとリビングに出てきて食事をするという生活が2カ月続いたと言います。

 あるとき、先行きの見えない焦りからAさんは「このままだと社会に出て生きていけないぞ」と息子に言ってしまいます。うつろな目をした息子の返事は「僕は生きていて意味があるの?」というものでした。

 息子のためにしてきた行動が息子を全否定し、生きる意味を奪っていたことに気づいたAさんは「わが家を安心できる場所にすること」を決めました。すると、もともとパソコンが好きだった息子は「将来はパソコンにたずさわる仕事がしたい」と言うようになり、みずから通信制高校への進学を決めました。

 Bさんの息子は小学6年生のとき、不登校になりました。「学校が楽しくてしょうがなかった」というBさんにとって、息子の不登校はまったく理解できず、「無理して行かなくてよい」という妻の言動に、いらだちさえおぼえたと言います。

 そんなBさんはある日、クローゼットに閉じこもって泣く息子を見て「そこまで苦しいのか」とショックを受けます。息子はその後、フリースクールに通い始めますが、Bさんの葛藤はまだ続きます。「フリースクールに通わせることで、息子は不登校というカテゴリーから出られなくなるのではないか」という思いが拭えなかったのです。

 しかし、親の会に参加するなど、Bさんがすこしずつ不登校を受けいれるようになるにつれ、息子に笑顔が戻ってきたのです。「将来への不安はあるけれど、今日を笑うことができないのはもったいない」と気づいたBさんは、同じ立場の父親に向けて「子どもが笑顔になるために何をすべきかを最優先に考えてほしい」と語ってくれました。

家庭不和 自己肯定感

 「父親だからこそできることがある」と語るのは、不登校の親に向けた講演活動をしている蓑田雅之さん。蓑田さんは不登校に付随して起こる問題として「家庭不和」と「子どもの自己肯定感の低下」の2つを挙げ、ここに父親の存在が大きく関わっていると言います。 

 「家庭不和」を防ぐことは父親にできることの重要な1つであり、「闘う相手は子どもでもパートナーでもない」という意識のもと、家族で力を合わせて取り組むことで、深刻な事態を回避できると指摘します。「子どもの自己肯定感の低下」については親から愛されているという実感が自己肯定感を育み、子どもにとってのバリアになると指摘します。(編集局・小熊広宣)

(初出:不登校新聞602号(2023年5月15日発行)。掲載内容は初出当時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)

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