子育てがしんどい親を守る3つのバリア【全文公開】

 不登校のわが子に対し、親は何ができるのか。不登校の子の親にとって、誰もが気になることです。個別の具体的な方法を考えることも大切ですが、その前に親御さんに実践していただきたいことがあります。それは親の「溜め」を厚くするということです。なぜなら、子どもと向き合う際には「子どもを支える親の支えを増やすこと」は欠かせないからです。親を支えてくれ、時としてバリアの役目も果たしてくれる親の「溜め」について、今回は3つご紹介します(※画像はイメージです)。

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 不登校の親にできることは何か。取材先でもよく話題にのぼり、また講演会などの質疑応答でも聞かれるテーマです。これについて、私からお伝えしたいことがあります。親の「溜め」を厚くしてほしいということです。個別の具体的な対応を考える前に、子どもを支える親自身の土台部分をしっかりさせることが重要だと私は考えています。

 「親が変われば子どもも変わる」とよく言われます。実際、私が取材してきた15年間をふり返っても、親の一言で気持ちが楽になったという不登校経験者の話をよく聞きました。だからこそ、子どもの支えとなる親自身が多方面で支えられていることが重要だと考えています。

 そもそも、親の「溜め」とは何か。これは親のまわりを覆うバリアのようなものをイメージしていただければと思います。不登校の子どもを持つ親にとって、学校、親せき、ご近所づきあいなど、さまざまなやりとりがあります。ときに「あなたの子育てがよくなかったんじゃないか」と、心ないことを言われることもあります。そういうことがあるたび、親自身は傷つき、気持ちも揺れてしまいます。そんなとき、親のまわりにバリアがあれば、ダメージはゼロにできなくとも、最小限に抑えることができます。それゆえ、バリアとなる親の「溜め」は厚ければ厚いに越したことはありません。

親を守るバリア 3つの「溜め」

 つぎに、親の「溜め」の中身について、3つ紹介したいと思います。まず1つ目の「溜め」は、「人間関係」です。たとえば、かつて不登校の子どもを持つ親だった先輩たちとのつながりなどが該当します。わが子の不登校で悩む親にとって、もっとも避けるべきは孤立です。誰にも相談できず、親だけで抱え込んでしまっていては、親がつぶれてしまいます。そんなとき、支えになってくれるのが先輩の親御さんです。先輩の親御さんは①すこし話をしただけで多くを理解してくれる、②愚痴や本音もありのまま打ち明けられる、③否定しない、という方も多いです。そういう方が1人でもいる人間関係は、今つらい親にとって、大きな支えになります。

 2つ目の「溜め」は「情報」です。たくさん集めても混乱するかもしれませんが、①不登校に関する親の失敗談、②居場所、③進路を含めた「不登校その後」の実例など、ひとつでも多く知っていることが、子どもの将来を案じる親にとって、漠然とした不安を軽減してくれることにつながります。

 3つ目の「溜め」は「自分自身」です。親のなかには子どものためと思い、仕事を辞めたり、趣味のサークルへ行かなくなったりする方がいます。そうせざるを得ない場面もあるとは思いますが、子どもからすると、そうした対応によってかえってしんどくなる場合もあります。親だって人間です。しんどいとき、息抜きは欠かせません。親が自分のことを後まわしにしすぎず、自分のためだけに使う時間を大切にすることで生まれる心のゆとりも大事な「溜め」のひとつです。

 日々変わる子どもの状態に沿うように、親も日々揺れ動きます。揺れることが悪いわけではありませんが、親がどっしりと構えていれば、子どもも安心できます。そのため、「私の溜めは今、何がどれくらいあるだろう」と整理し、もし足りない部分があれば、そこを厚くすることに意識を向けていただければと、私は考えます。(編集局・小熊広宣)

(初出:不登校新聞580号(2022年6月15日発行)。掲載内容は初出当時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)

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