不登校のSOSを見逃さず受けとめるための2つのポイント【全文公開】

 「学校へ行きたくない」と考える子どもが発するSOSには、どのようなものがあると思いますか?ときに言葉で、ときに行動や身体症状で出されるSOSに対し、親としていち早く察知して受けとめるために、どんなことに気をつければよいか。不登校取材歴15年の本紙記者が親御さんに知っていてほしい2つのポイントをご紹介します(※画像はイメージです)。

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 ゴールデンウィークが明けました。新年度が始まり、すこし落ち着いたこの時期は、フリースクールなどへの問い合わせが増えるなど、新たに不登校になる子どももいます。そこで今回は、不登校の子どものSOSについて考えます。

 まず、もっともわかりやすいSOSは「学校へ行きたくない」と子どもが言ってきたときです。このときの親の対応はただ一つ、「わかった」と伝えて、実際に休ませることです。なぜなら、子どもが言葉にして伝えてきたというのは「限界」を知らせるSOSだからです。子ども自身、不登校してよいなどと最初から考えていることはまれですし、そんなことを言ったら親はどう思うかと悩み続けています。葛藤し続け、しかし、もうどうにもならないタイミングがやってきたとき、その一言が出ます。つまり、軽い気持ちで言っているわけではないのです。

 このときによくあるのが「わかった。でも、もうすこしがんばってみよう」と子どもの背中を押すというもの。学校の先生が「一度休むと、不登校が長引くから」との思いから子どもを励ます事例も聞きますが、これは逆効果というより、百害あって一利なしと言っても過言ではないと私は考えています。自身の限界を感じ、やっとの思いで発した一言を受けとめてもらえなかった子どもの気持ちを考えると、とても残酷な対応ではないでしょうか。「休みグセがついたらたいへん」と言う人もいますが、私の経験上、「休めないグセがついたほうがたいへん」です。子どもが自身の痛みを周囲に隠しながら登校を続けることでできた傷が癒えるには、長い時間を要する場合があるからです。

言葉にならない

 子どもが発するSOSは言葉だけではありません。行動や身体症状などのかたちであらわれる場合もあります。代表的なものを挙げると、「昼夜逆転や不眠」「玄関でうずくまって動かない」「トイレから出てこようとしない」というものから、「頭痛や腹痛」などの身体症状のほか、笑顔がなくなって能面のような表情になるなど、じつにさまざまです。

 こうした言葉にならないSOSによる子どもの変化に直面したとき「あれ、なんかいつもとちがうな」と気づかれると思います。親としての直感とも言える気づきですが、その直感こそ大事にし、かつ信じていただきたいのです。なぜなら、わが子のプロは、親自身にほかならないからです。学校の先生がなりかわることはできません。実際に、そうした変化があるということは、すくなからず子どもに何かが起きているわけですから、軽視せず、変化に気づいたタイミングで子どもに「学校へ行かなくていいよ」と言ってあげられたら、それだけで子どもの気持ちはだいぶ軽くなります。

 とはいえ、「学校へ行かなくていいよ」なんて、親としてもかんたんに言えるわけではないということは私も重々承知しています。でも、だからこそ、考えていただきたいのです。親をラジオに例えるならば、チューニングは「学校へ行きたくない」と考えている子どもに合っているのか。それとも、「学校へ行ってほしい(来させたい)」という周囲の大人に合っているのか。それにより、聞こえてくる「声」はガラッと変わってしまいます。親は自身の直感を信じ、チューニングは子どもに合わせる。これが不登校の子どものSOSに気づき、受けとめるうえで大事なポイントだと私は考えています。(編集局・小熊広宣)

(初出:不登校新聞579号(2022/6/1発行)。掲載内容は初出時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)

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