親ガチャとは? 言葉が流行した背景やハズレと言われる状況を解説
このページをご覧になっているあなたは、以下のような疑問や不安を抱えているのではないでしょうか?
- 少し前から「親ガチャ」という言葉を聞くけど、どういう意味?
- 子どもに「親ガチャに外れた」と言われたけど、どうしたらいいの…?
このコラムでは、親ガチャの概要や親ガチャという言葉が流行った背景、親ガチャにハズレたと言われる状況、子どもが「親ガチャにハズレた」と言われた時に親ができる対応などについて解説します。あわせて、研究者などの親ガチャに対するさまざまな反応を紹介します。
不登校のお子さんが、親御さんに「自分が不登校になったのは、親ガチャにハズレたせいだ」などと言うことも、なくはないようです。
親ガチャという言葉が気になっている人はもちろん、お子さんから「親ガチャにハズレた」と言われて困っている親御さんは、ぜひ最後までご覧ください。
このコラムの内容はあくまでも参考としてご覧いただいた上で、「実際のあなたの親子関係」やお子さんの不登校については、子どもや親子関係に関する悩みをサポートする人たちに相談することで、具体的に改善されていくはずです。
相談先の例は、こちらのページで紹介しています。
目次
親ガチャとは?
親ガチャとは、子どもの立場から、子どもは親を選べないこと、運任せであること、そして当たりとハズレがあること(あくまでもお子さんの認識です)を、カプセル自動販売機やスマホゲームで使われるガチャガチャ(ランダムで「景品」が出てくる仕組み)に見立てた言葉のことです。
この言葉は、家庭環境や経済状況、遺伝的能力、容姿などの本人が選択できない先天的要素に人生は大きく左右されるという認識・人生観を前提に、出生環境・現在の環境が本人にとって理想ではなかった場合に使わることが多いです(これもあくまでお子さんの認識です)。
インターネット上で流行ったスラング(俗語)で、ユーキャン新語・流行語大賞2021のトップテンにも選出されています。(参考:「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン 新語・流行語大賞「第38回 2021年 授賞語」)
親ガチャという言葉が流行った背景
親ガチャという言葉が流行った背景には、SNSの普及とスマホゲームの流行があると言われています。
SNSで他人の生活を簡単に見聞きできるようになったことで、他人の生活と自分の生活を比べて劣等感を持つ人が増え、その矛先が親に向いたのでしょう。
また、スマホゲームの流行によって、今の子ども世代にはガチャが身近な存在になっています。
選べない、何が出るかわからないというガチャの特性に親を当てはめ、皮肉、いじりのような形で流行したと言われています。
親ガチャにハズレたと言われる状況
この章では、「親ガチャにハズレた」と子どもから言われる状況の例を紹介します。
前提
また、明確な定義のない言葉ですので、あくまでも「インターネットなどでそう言われることがある」「子どもの主観ではそうなることがある」というものであり、「こういう親はハズレの親」と断じているわけではありません。
そして、子どもに「親ガチャに外れた」と言われたからといって、この記事をお読みの方が紹介する例に当てはまると言うつもりもありません。
後でも述べますが、「特に親に原因がないけれど、行き場のない感情を『親ガチャにハズレた』という言葉で表現し、一番身近な存在の親に助けを求めている」ということもあります。
親御さんを不安にさせる趣旨の記事ではありませんので、参考としてご覧ください。また、「自分が子どもによくないことをしているのでは」と思う場合は、相談機関などに話をしてみてください。
また、子どもにとっては「親ガチャ」という言葉に特に意味はなく、「どうしてわかってくれないの!?」などを流行りの言い方にしている、というケースもあり得ます。
状況①親が何かしらへの依存状態にある
親が何かしらへの依存状態にあることは、親ガチャにハズレたと言われる状況の1つです。具体的には、次のような例があります。
- ギャンブル依存
- アルコール依存
- 薬物依存
- カルト宗教やマルチ商法にのめりこんでいる
親がこのような状況にあることで、子どもは不安定な状態の親と毎日過ごさなければらなかったり、親に考えや価値観を強要されたりすることがあります。
また、経済的な部分にも影響する可能性もあり、子どもでは抱えきれないほどの負担を背負わなければならない状況になることもあるのです。
補足として、「家計の範囲内で、ちょっとした趣味としてパチンコや競馬を楽しんでいる」というような場合も、子どもの目から見ると「うちの親はギャンブル依存だ」となることもあります。
状況②家庭の経済状況が厳しい
親ガチャにハズレたと言われる状況の1つに、家庭の経済状況がよくないことが挙げられます。具体的には、以下のような状況です。
- 親に多額の借金がある
- 親が病気や怪我などで働けない状況にある
厚生労働省が行った調査の結果では、日本における子どもの貧困率は11.5%となっています。(参考:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」)
借金には事情があるでしょうし、病気や怪我は誰にでもあり得ます。ですが、家庭が経済的に厳しい状況にあると、子どもは以下のような負担を抱えることになり、「親ガチャに外れた」と感じるようになるのです。
- 毎日の食事がままならない
- お金がないために、将来の夢や進学をあきらめる
- 進学する場合は、高額な奨学金を借りなければならない
補足として、「一般論として貧困ではない家庭」の子どもであっても、SNSなどで見聞きしたお金持ちや有名人の家庭と比べて「うちはハズレ」などと思うこともあるようです。
状況③両親が不仲であったり離婚していたりする
両親が不仲であったり離婚していたりすることも、親ガチャに外れたと言われる状況かもしれません。
親も人間ですから、ケンカをすることは悪いことではありません。ですが子どもから見ると、両親が毎日のようにケンカをしていたり、常に家庭の雰囲気がぎくしゃくしていたりすると、息苦しく感じるでしょう。
さらに、家庭を自分の居場所と感じられず、「自分には居場所がない」「自分は親から愛されていない」などを感じ、精神的な負担が大きくなることも考えられます。
離婚も悪いことではありません。ですがお子さんにとっては、生活環境が変わったり苗字が変わったりしたことで、周りの目が気になったりすることもあります。
こういったことから、子どもは大きなストレスを感じ、「親ガチャに外れた」と感じる場合もあるのです。
補足として、「夫婦同士では仲がいいと思っているが、お互い口数が少ないので、子どもからは冷え切っているように見える」などのパターンもあるでしょう。
状況④親から虐待を受けている
親から虐待を受けている場合も、親ガチャにハズレたと言われる状況です。虐待といっても、さまざまな種類があり、どんなものであっても子どもの心に大きな傷を残します。
- 身体的虐待
- 心理的虐待
- 性的虐待
- ネグレクト(育児放棄)
子ども家庭庁が発表している2022年度中の児童相談所における虐待相談対応件数は、速報値の時点で21万9170件です。(参考:子ども家庭庁「令和4年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数(速報値)」)
また、この数値は過去最高の数値であることに加え、虐待相談対応件数であることから、さらに多くの子どもたちが虐待に苦しんでいることが考えられるのです。
補足として、「一般論としてしつけや教育の範囲内の行い」も、子どもの主観では「虐待だ!!」などとなったりすることもあります。
状況⑤親から過剰に干渉される
親ガチャにハズレたといわれる状況の1つとして、親から過剰に干渉されることも挙げられます。
「子どもを心配する気持ちから」、つい過剰に干渉する場合もあるかもしれません。ですが、その一方で「子どもを自分の思い通りにしたい」という思いから過干渉になる親もいます。
特に、近頃は教育虐待ともいわれている「勉強や進路に関する親の過干渉」が原因となった事件なども起きています。
親の過干渉は子どもの心を追い詰めるのです。(参考:東京経済オンライン「医学部9浪、母の殺害に至った壮絶な教育虐待」)
また、子どもを親の思い通りにコントロールする親を指す言葉として、毒親という言葉も生まれています。親との関係が大きな負担だと感じている子どもは少なくないのです。(参考:NHK「毒親って!? 親子関係どうすれば・・・」)
補足として、「一般的には過干渉とは言えない行い」も、干渉を過度に嫌うお子さんからは過干渉に受け止められることもあります。
状況⑥親の学歴が大卒以外
6つ目の状況は、親の学歴が大卒以外の場合です。
大人であれば、「人の価値は学歴で計れるものではない」ということを理解しています。
ですが、知識や経験の少ない子どもは、「うちの親は大卒じゃないからダメ」などと思い込むことがあるのです。
また、「学力は遺伝的な要素による影響が一番大きい」と信じる子どもの場合は、自身の学力や環境の原因を親に帰結させて「親ガチャにハズレた」と言うことがあるようです。
他には、「大卒ではない親が、子どもの大学進学に前向きではない」というケースも考えられます。
状況⑦親の容姿に不満がある
容姿に関する話題でも、「親ガチャにハズレた」と言われることがあります。
遺伝的な要素として、容姿が取り上げられることはよくあることかもしれません。世間一般でも、容姿の良し悪しに関する言説を目にする機会は少なくないはずです。
人の価値は容姿で決まるものではありませんし、どんな容姿をいいと思うかも人によってさまざまです。
ですが、子どもが、自身または親の容姿に不満がある場合、それをハズレと呼ぶのかもしれません。
補足:行き場のない感情から「親ガチャにハズレた」と言う場合もある
親ガチャにハズレたと言われる状況の中には、子どもの力ではどうにもならないこともあります(例:客観的に見て虐待だと判断できる状況など)。
しかし、どうにもならない状況に陥っているわけではないものの、精神的に追い詰められていて、行き場のない感情をどうにか吐き出したいという気持ちから、「親ガチャにハズレた」という言葉を使っていることがあります。
例えば、不登校状態にあることへの不安やいら立ち、焦りなどの気持ちです。ほかにも、学校の人間関係や成績が思うように伸びないといったことなども考えられるでしょう。
このような、「頑張っているけどうまくいかない」「みんなと同じようにしたいのにできない」といった、行き場のない感情を「親ガチャにハズレた」という言葉で表現し、一番身近な存在の親に助けを求めていることもあるのです。
子どもに「親ガチャにハズレた」と言われた時に親ができる対応
この章では、子どもに「親ガチャにハズレた」と言われた時に親ができる対応について解説します。
対応①専門家・第三者に相談する
お子さんのことを誰よりも考えているのは、親御さんだと思います。
しかし、お子さんが「親ガチャに外れた」と言っている状況を、親御さんだけ、家庭内だけで解決する必要はありません。
親だからこそ、冷静に子どもと向き合うことが難しい場合があるのです。子どもにも、親だからこそ言いにくいこともあるでしょう。
また、親子だからこそ、愛憎が生じたり、率直すぎる言葉で傷つけあったりすることがあるのかもしれません。
親子のすれ違いがある場合は、カウンセラーや支援機関などの専門家・第三者の冷静なアドバイス・支援が必要になります。
親御さんの中には、他人に相談することや頼ることが苦手で、「自分だけで、家庭だけで解決しなくては」「相談すると迷惑になる」と思う人もいるかもしれません。
ですが、お悩みは、専門家・第三者に力を借りることで、よい方向に向かっていきます。家族だけで抱え込まず、ぜひ、助けを借りてください。具体的な相談先としては以下のようなものがあります。
- お子さんが通う学校の先生(不登校であっても、信頼できる先生がいれば)
- スクールカウンセラー
- 自治体の相談窓口
- フリースクール
- 児童精神科
- 民間の支援機関
- ほか、具体的な相談先の例をこちらで紹介しています
あなたやお子さんに向いていそうなところに、資料請求や問い合わせを行うことをオススメします。
以下の対応②③も、専門家・第三者に相談しながら進めることで、より効果が得られると思います。
対応②子どもの話に耳を傾ける
お子さんから、「親ガチャに外れた」と言われると、親御さんは大きなショックを受けるかもしれません。しかし、お子さんの話に耳を傾けて、じっくりと話を聞くことがとても大切です。
親御さんがしっかりと話を聞いてくれることは、お子さんの安心感につながるため、「親ガチャに外れた」と言っている理由を話してくれるかもしれません。
また、お子さんの話を聞き、お子さんの気持ちや状況を理解することは、これからのことを考えるために必要なことです。
ただし、話をしたくない状態のお子さんに対して、無理矢理話をさせようとしてはいけません。また、親御さんが聞き出したいことを、無理に聞き出そうとするのも逆効果です。
お子さんの気持ちを聞き出したい気持ちはわかりますが、話すことを強制すると、お子さんは親=脅威と思うようになり、心を閉ざす可能性があります。
そのため、お子さんが自分から話そうとするタイミングまで待ち、お子さんから話してくれた場合も、質問や意見は一旦伝えずに、話を聞くことに徹しましょう。
対応③家庭を居心地のいい場所にする
お子さんから「親ガチャに外れた」と言われた場合、家庭を居心地のいい場所にすることも大切です。
子どもにとっての居場所は、家庭と学校の2つのみであることが多いです。その中の1つである家庭の居心地は、お子さんの心理状況に大きく影響します。
不登校で学校という居場所がない場合、さらに家庭での居心地が悪かったり安心感を得られなかったりすると、心が安らぐ場所がなく、心理的に不安定になることが考えられます。
居心地のいい家庭は、人によって解釈が異なることもあるかもしれませんが、一般的に以下のような場所が考えられます。
- 子どもが安心していられる場所
- わがままを言える場所
- 人間関係に気を使わなくていい場所
親御さんは家庭がお子さんが「居心地がいい」と感じられる場所になるように、取り組んでみてください。
ただし、親御さんがお子さんに気を使いすぎるあまり、腫れ物に触るような態度になると逆効果であることもあるので、過剰に気を使いすぎず適度に取り組むことが大切です。
補足:親ガチャについてさまざまな角度から理解を深める
親ガチャに外れたと言われる状況にもさまざまなものがあります。そもそも、親ガチャという言葉は、最近出てきたばかりの言葉なので、さまざまな捉え方ができます。
そのため、一つの側面から言葉を理解するのではなく、さまざまな角度から理解を深める必要があるでしょう。
また、複数の人の親ガチャに対する意見を知ることで、あなたの考え方が変わるかもしれません。
親ガチャに関するさまざまな反応
この章では、親ガチャに関するさまざまな反応を紹介します。
反応①シカゴ大経済学部特別功労教授:ジョン・リスト氏
シカゴ大経済学部特別功労教授のジョン・リスト氏は、そもそも日本の人たちは親ガチャ問題をやや狭義の意味で捉えすぎているのではないかと述べています。
また、そもそも日本に生まれただけで当たりくじを引いているのではないかという考えもあるようです。
さらに、人は自分の境遇に責任を持たず、誰かのせいにしたがることを前提として、うってつけの存在である親にその責任を背負わせているのではないか、とも主張しています。
ただ、子どもが親を選べないことに関しては肯定しており、親が結果だけではなく、子どもが努力する過程を見るべきだとも述べています。(参考:プレジデント社「『親ガチャという概念は正しい』アメリカ人経済学者が”人生の宝くじ”を否定しない理由」)
反応②筑波大学教授:土井隆義氏
筑波大学教授の土井隆義氏は、若い世代と親の世代ではことばの認識にギャップがあると言います。
若い世代は、深刻なことを深刻に語るのは相手に負担をかけると考え、少しソフトに話すことを好みます。
「うちは貧乏だから」と言うより、「親ガチャに外れた」と言ったほうがソフトになり、聞かされる側も反応しやすくなります。
つまり、親ガチャという言葉は、関係を築く潤滑油のように使われているのです。
対して、親世代は、子どもが親に責任をなすりつけている、子どもが自分の努力を放棄していると感じています。
ただ、若い世代は親を非難したり責任を押しつけたりしているのではなく、自分の能力では超えられないものが目の前にあるという思いを、伝える時の表現として使っていると認識してほしいと語っています。(参考:NHK「“親ガチャ” 話題のことばをぶつけてみたら」)
反応③「第45回少年の主張全国大会」国立青少年教育振興機構理事長賞受賞者
「第45回少年の主張全国大会」国立青少年教育振興機構理事長賞受賞者の竹内愛子氏は、親ガチャについては肯定しつつも、上手くいかないことをすべて人のせいにするのは悲しいと述べています。
そして、親ガチャに外れたという一言ですべて片づけるのではなく、自分で問題を解決するような人になっていきたいという思いを話しています。
若い世代であっても、親ガチャという言葉への認識には、違いや差があることに気づける主張なのではないでしょうか。(参考:国立青少年共育振興機構「第45回少年の主張全国大会-わたしの主張2023-報告書」)
最後に~子どもの言葉だけでなく、気持ちや考えにも目を向けましょう~
お子さんから「親ガチャに外れた」と言われると、ショックを受けたり、場合によってはお子さんへの怒りが湧いてきたりすることもあるかもしれません。
しかし、お子さん自身は、親ガチャという言葉を軽い意味で使っていたり、現状に対する不安や苛立ちを吐き出すための言葉として使っている可能性も考えられます。
そのため、専門家や第三者の力も借りつつ、お子さんの話に耳を傾け、言葉の裏にある気持ちや考えに目を向けてみてください。