外出できる「ひきこもり」は9割、議論されない問題の核心

社会学者・関水徹平さん

 ひきこもりをめぐる問題とはなんなのか。ひきこもりの研究を続ける社会学者・関水徹平さんに執筆いただいた。関水さんは今号と次号で掲載予定。

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 学校では、先生や同級生との人間関係に気をつかうし、いじめもふつうにある。仕事も、自分に合う職場にめぐり合えるとはかぎらない。そこでも人間関係はついてまわる。

 今の日本社会で生きていたら、学校へ行きづらくなったり、仕事へ行きづらくなったりすることは、いくらでもあると思う。

 人よりも繊細だったり、曲げられない主張を持っていたりしたら、なおさらだろう。

 内閣府の調査によれば、ひきこもり状態の人は15歳から64歳の年齢層で、推計100万人以上いる。さらに、その3倍ほどの人たちが、過去にひきこもり状態を経験している。

 現にひきこもり状態にある人、過去にひきこもった経験のある人は、合わせて400万人以上いるという計算になる。

 とはいえ、そのほとんど(9割)は、自宅や部屋に閉じこもっているわけではなくて、趣味の用事やコンビニには出かけるという。

 また、過去にひきこもり状態を経験した人たちも、その多くは、家の外とつながるきっかけをつかんでいるようだ。

 内閣府の調査では、過去にひきこもりを経験した人の5割~7割は、3年以内にひきこもり状態から抜け出している。

 だが、なかには、ひきこもり状態が続く人もいる。その状態から抜け出すのに7年以上かかったという人も1割~2割いる。

 そのまま抜け出せていないという人もいるだろう(現在ひきこもり状態にある人のうち、その状態が7年以上続いている割合は3割~4割である)。

 ひきこもりとは言っても、内閣府調査によれば、「家からまったく出ない」という人は1割しかいなかったように、多くの人が直面しているのは、じつは家から出ても(学校・会社以外で)誰かとつながることの難しさである。

 それには、複合的な事情があるだろう。親の理解のなさや経済的困窮のために、家の外につながるために必要な金銭的なサポートが得られない、学校・会社に所属がない人への偏見などである。

 家族以外とのつながりをつくりにくいのは、ひきこもり状態にある本人だけではない。家族も、わが子の状態を自分たちで何とかしなければと「親としての責任」を一身に背負ってしまうように見える。

 なぜ、本人も、親も、家族以外につながりを持ちにくいのだろうか。ひきこもり問題の核心は、そして日本社会の息苦しさのひとつは、この家族の孤立(家族以外への頼れなさ)にある。

 家族以外に拠りどころがある社会とはどんな社会か。この視点からひきこもり問題を考えることが必要だと思う。(立正大学准教授・社会学者 関水徹平)

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