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児童精神科看護師・こど看さんが“不登校の親の悩み”に答えます(3)〜毎朝トイレに30分以上こもる娘。見守るだけでいいの?〜

#不登校#行き渋り#こど看#児童精神科

2025年10月24日(金)、「学校休んだほうがいいよチェックリスト(※)」を運営する3団体が、児童精神科看護師・こど看さんをお招きして、無料のオンライン講演会を実施いたしました。

テーマは「【児童精神科看護師×不登校支援のプロ】不登校の子どもの気持ちとは…?保護者のギモン解決SP」。

オンライン講演会でのこど看さんからのメッセージと、不登校のお子さんがいる親御さんからお寄せいただいた質問へのご回答を、全3回に分けてご紹介します(一部の表現は、不登校オンライン編集部が編集を行っております)。

※学校休んだほうがいいよチェックリストとは
子どもが「学校休みたい」「学校行きたくない」と言っているけど、休ませていいのかな?と心配になっている保護者の方に向けたチェックリストです。簡単な質問に答えるだけで、精神科医からの回答結果が届きます。運営は、不登校ジャーナリスト・石井しこう、好きでつながる居場所「Branch」、不登校の子のための完全個別指導塾「キズキ共育塾」の3団体が行っています。

 

こど看

 

中里祐次

 

伊藤真依

 

石井しこう

質問5:毎朝トイレに30分以上こもる娘。見守るだけでいいの?

中里:
中学2年生の親御さんです。

こんばんは。こど看さんの発信で、いつも救われています。

娘は中学生になってから毎朝トイレに30分以上こもっています。ストレスを感じるとお腹の調子が悪くなるのを自分でも分かっていて、テスト期間は特に腹痛に困っているようです。

進級してからのクラスで居心地が良くないようです。一度だけ、どうしても学校に行かなきゃダメ?と聞いてきて、そのときは、風邪気味だったので休ませました。今は、なんとか気持ちを整えるための儀式としてトイレの時間があるような感じです。

親としては、今のところ声掛けは積極的にせず見守っているのですが、対応としては、このままで良いのでしょうか?

学校は、あまり居心地は良くないものの頑張っています。学校が終わるとすぐ帰宅して、家ではリラックスしています。休みの日もトイレタイムはありますが、平日ほどではありません。何かアドバイスがあれば教えていただければ幸いです。

こど看:
お子さんの状態が鮮明に書かれていますね。「儀式としてのトイレの時間があるような感じです」というのは、まさにそうなのかなと思います。ルーティンをして、気持ちを落ち着けて学校に行っていると考えられるのかなと。

また、「クラスの居心地が良くないようです」とも書いていらっしゃる。

「何に対する居心地が良くないって感じているのかな?」というのは、聞いてみてもいいのかなと思います。

友達関係なのか、担任の先生となのか、部活に入っていたら部活なのか。そもそも、教室っていう空間がとか、いろいろ聞けるかなっていうところを聞くのも1つかなと。

「やっぱり学校行かなきゃダメ?」は、もしかしたら、「もう休みたいと思っているけど、言えない」のかもしれないですね。

中学2年生なので、「これを言ったら、『あー』っていう微妙な顔をされちゃうかな?」「残念に思わせちゃうかな?」「迷惑かけちゃうかな?」という気持ちがワンクッションあっての「行かなきゃダメ?」になっているかもしれないので。

質問者さんも、今後「学校を本当に休みたい」という言葉が出てくるんじゃないかと想定した上で、準備しておいたほうがいいかもしれないですよね。

そのときに、「分かった。休もうか」と声を掛けられるか、返せるかどうかが、大事かなと思います。

また、トイレから1時間出てこなくなったとか、他の家族も巻き込むような状況になったら、精神科への受診を考えてもらっていいんじゃないかなと思いますね。

中里:
もう既に利用されているかもしれませんが、『学校休んだほうがいいよチェックリスト』も、ぜひ使っていただけたらと思います。

石井:
私の取材した人でも、トイレの儀式にすごく時間が長かったっていう人がいます。その方の親御さんは、トイレの居心地を良くしていました。トイレにこもれるようにしたというか。

すごく冷たいトイレで過ごすんじゃなくて、ふかふかのマット敷いて、清潔を保って。そのように本人の安心を確保したら、トイレから離れたり、儀式が必要なくなったりという話がありました。

そういう儀式があると周りは心配になるんですけども、本人が自分を正すというか、自分を整える時間なので、そこは大事にするというのは、1つあるかなと思いますね。

伊藤:
このご相談を伺って、私が不登校だったときを思い出しました。私も自分の心を落ち着かせるためのルーティンみたいなものを持っていたので、「分かるな」と。私のルーティンは、トイレじゃなくて押し入れみたいな、すごい狭いところに長時間いる、というものでした。

ルーティンを持っていること自体は全然悪いことじゃないと思っています。ただ私は、自身のルーティンを「自分の心を落ち着けるためのものだ」と最初は認識していなくて、「やらないほうがいいんだろうけど、やっちゃう」みたいな罪悪感の中でやっていたんですね。

でも、あるときに、「これは悪いことじゃなくて、自分の心が落ち着くためには必要なことなんだ」と分かって、安心してできるようになったんです。

そうしたら、そのルーティンは、あまり必要ないものになったんです。

上手く言えないんですけど、治療じゃなくても、心を落ち着けるための工夫は日々の中にもいろいろあって、その工夫への罪悪感を手放した途端、急に前進するみたいなことがある気がしています。

そして、気にしないときが一番の成長時期かもと、全てのことに対して最近思っています。

こど看:
伊藤さんは、上手く依存できたっていうことでしょうね。

中里:
保護者さん側としては、こもることに対して罪悪感を持たせないほうがいいってことですね。「落ち着かせるために大事な時間なんだよ」と。親御さんもあまり気にしない対応のほうが、お子さんからするといいってことですよね。

質問6:子育てをあきらめてしまったことがあります。試合終了でしょうか

中里:
小学校5年生の保護者さんからです。

こど看さん、あきらめてしまったことがある母親です。試合終了とは、どういうことでしょうか?

こど看:
支援者は、子どもへの敬意を欠きやすい立場です。権力勾配というか、教師と子ども、医療者と子どもみたいな感じで、権威的な立場に立ちやすい大人は、特に注意しなきゃいけないなと思っています。

なので、スラムダンクの安西先生の名言をちょっと文字って、Xで何回か「子どもへの敬意を失ったら、そこで試合終了ですよ」と投稿しました。それのことでしょうかね。

類似の投稿はこちらをクリック

こど看:
この方は「あきらめてしまった」とおっしゃっていますけど、子どもとの関わりで、あきらめちゃうことは、あると思うんですよ。上手くいかないことのほうが多いんじゃないかっていうくらい本当に難しいし。

しかも、それが1年や2年で終わるものじゃなく、10年、20年、下手したら、何十年と続いていく。

その中で、「あきらめたらおしまい、試合終了」とは、私は思いません。ただ敬意は忘れないようにしましょうよと。それは、お互いですけどね。子どもからもそうですし、大人からもそうですから。

中里:
僕も、試合終了ではないと僕も思います。

最後に:子どもだけではなく、親である自分たちも支えられていいんだと知っていただきたい

こど看:
現場感覚ですが、親御さんも、「子どもを支える大人はたくさんいる」ということはわかっていると思います。

ただ、「子どもだけではなく、親である自分たちも支えられていいんだ、自分たちもしっかり支えてくれる人たちがこんなにいるんだ」と、知って、実感していただけたらと思います。

入院から学校に復帰する子もいます。そのときは、いきなり背中を押して「学校に行きなさい」ではありません。

学校の先生、校長先生、私たち病棟のスタッフ、コーディネーターの人、親御さんなどをいろいろ合わせて、復学支援会議を行います。

そういうふうに顔を合わせたりすることや、いろんな大人が自分の子どもを知っているという安心感が、その次なる一歩へに繋がります。そして最終的には、お子さんに還元されます。

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