【いじめ認知過去最多】文科省に聞く、減らない「いじめ」データの読み方

#不登校#行き渋り#いじめ#文部科学省

令和5(2023)年度に全国で認知されたいじめの件数は、小学校・中学校・高校・特別支援学校あわせて73万2568件、過去最多となったことが文部科学省の調査(※)でわかりました。

(※文部科学省「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果

毎年増え続けるいじめの認知件数。
このデータをどう読むか、不登校オンラインは令和6年11月1日、文部科学省の担当者に電話で話を聞き、分析をしました。

編集

不登校オンライン編集部

いじめに含められるケースが増えた「定義の変化」

文部科学省の担当者は、「いじめの認知件数増加の背景には、平成25(2013)年からの『いじめの定義の変化(※)』がある」と言います。(※文部科学省「いじめの定義の変遷」)

<従来の定義>
「いじめ」とは、「①自分より弱い者に対して一方的に、②身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、③相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。」とする。
なお、個々の行為がいじめに当たるか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うこと。

<平成25年からの定義>
児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」とする。
なお、起こった場所は学校の内外を問わない。
「いじめ」の中には、犯罪行為として取り扱われるべきと認められ、早期に警察に相談することが重要なものや、児童生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるような、直ちに警察に通報することが必要なものが含まれる。これらについては、教育的な配慮や被害者の意向への配慮のうえで、早期に警察に相談・通報の上、警察と連携した対応を取ることが必要である。

ーーーーー

従来の定義では、「自分より弱い者に対して一方的に行うもの」がいじめであると定義され、被害者の立場が限定されていました。

しかし、平成25年からの新しい定義ではその制限が撤廃され、被害者になりうる対象が拡大されました。

また、インターネットを通じた行為や、警察と連携すべき重大な事案も明記され、想定されるケースの幅が広くなっています。

これらの変更により、以前は「いじめ」と判定されなかったケースも「いじめ」として扱われるようになり、結果的に認知件数が増加しているとのことです。

つまり、「毎年いじめの認知件数が増えている」ことは、「毎年、『それ以前と同様のいじめ』の発生件数が増加している」とは限らないということです。

同担当者は、「いじめと判定する基準が明確化したことが、例年いじめ認知件数が増えている背景にある」と言います。

学習用タブレットの導入も、いじめ把握に一役

いじめ発見のきっかけについても、文部科学省の調査から知ることができます。

いじめ発見のきっかけとして最も多いのは、「アンケート調査と学校の取り組み」によるものです。

文部科学省の担当者は、「この点もいじめの認知件数増加に影響している」と言います。

従来主流だったのは、教室内で紙に書き込む形式が主流だったアンケート調査でした。しかし近年では、タブレットを使った方法で実施する学校が増えました

また、アンケートの実施期間外でも、SOSを出したいときには気軽にタブレットを通して相談ができる体制も整ってきています。

もともと、いじめ発見のきっかけとして最も多い方法であったアンケートですが、紙よりも匿名性が高く、心の安全を守りながらSOSを出せるタブレットの活用を導入したことによって、さらにいじめ発見につながりやすくなった」とのことです。

まずは「認知」がスタートライン

いじめの発生が減らないことは非常に憂慮すべきことですが、一方で文部科学省の担当者は「認知件数が増えたことは、今後の対策においてはポジティブな面もある」とも話します。

いじめ対応において、「認知すること」は「スタートラインに立つこと」です。

これまで見えないものにされ、対応のスタートラインにも立っていなかった事案が少しずつ把握されるようになりました。

「いじめ認知件数過去最多」というデータは、一件ずつ個別に対応できるものが増えたという見方もできます

重大事態「4割」は、早期発見ならず深刻化

一方で、楽観視できない課題もあります。

今回認知されたいじめ事案のうち1,306件は不登校や自殺につながる「重大事態」として認定されています。

しかし、そのうち約4割は「重大事態」と判断されるまで、いじめとして存在自体が把握されていなかったのです。

文部科学省は、その原因を「教職員がいじめの兆候を見逃したり、被害者が抱え込んだりしていたこと」と発表しています。

いじめの定義変更やタブレット端末の導入によって、少しずつ認知される事案が増えつつあります。
しかし言うまでもなく、いじめ発見には教職員と子どもの適切なコミュニケーションが欠かせません。

いじめ「発生」件数を抑えるために、「認知」件数をどう増やすか。
不登校オンラインでは「いじめ問題」について、今後も深く追求していきます。

 

「不登校オンライン」では、会員向けの記事(有料)をご用意しています。不登校のお子さんをサポートするために知っておきたい情報や、同じ悩みをもつ親御さんの体験談などを掲載しています。お申し込みは下記から(30日間無料)。

 

関連記事

登録から30日間無料!ゲーム依存、昼夜逆転、勉強の話、子どもにしてもいいの…?疑問への「答え」が見つかるウェブメディア 不登校オンライン お試し購読はこちら