
子どもの不登校が始まってからの、夫婦関係の変化【不登校と夫婦関係のアンケートから(2)】【調査報道】
ウェブメディア「不登校オンライン」は、2025年3月12日〜25日に、お子さんが不登校・行き渋りである(であった)保護者さまを対象に、「不登校の保護者の夫婦関係」についてのアンケートを実施しました。
「お子さんの不登校が始まってから、夫婦関係は変化しましたか?」という設問への回答は62名で、内訳は次の通りでした。
- 悪くなった:33名(53.23%)
- 変わらない:21名(33.87%)
- よくなった:8名(12.90%)
本記事では、その「具体的な変化を教えてください。」という設問にお寄せいただいたエピソードと、キズキ不登校相談員・伊藤真依からのコメントを紹介します。
※紹介内容は、回答原文をもとに、不登校オンライン編集部が類型化・再構築・編集を行ったものです。
※回答者:全て「妻(不登校の子どもにとっての母親)」、敬称略、順不同で、すいーとぽてと、Hideko、まるこ、ゆーみー、りー、もも、うつぼ、たらちゃん、なつ、ハル、もりこ、poreru、りん、hum、なお、やまぐち、ま、あげは、み、ごくらく、153、さくらママ、らい、うさぎmama、みも、あくう、すい、ゆう、子育てを楽しみたい、みかん、まさき、yoshino、きんたろう、まー、コ、あじたま、natsumi、みえころ、まんぼう
目次
類型①-1よくなった:夫婦関係の変化―「責め合い」から「支え合い」へ
かつて私たち夫婦は、子育てについて話し合うことがほとんどありませんでした。夫は家庭に対して無関心で、出産にも立ち会わず、夜中の出産後にも顔を見せずに出勤し、そのまま飲み会に行こうとするほどでした。
第二子の出産の際も、私の入院中に夫は相談もなく遠方の義母を呼び寄せ、送り迎えは親任せ、自分は変わらず仕事へ行く日々。そんな夫と、子どもについて話し合うことができるようになるとは、当時は想像もしていませんでした。
転機は、子どもが不登校になったことでした。最初はお互いを責め合い、自分の責任ではないと主張し続ける日々。
私は「もう無理かもしれない」と思いながらも、夫婦カウンセリングを受け始めました。続けていくうちに、少しずつ見方が変わり始めました。物事を相手の立場で捉えるようになり、相手の話に耳を傾ける姿勢が生まれました。
そしていつしか、夫は子どもの個別面談に参加するために仕事を半休するようになり、家庭での会話も増えました。「私たちの子どもは、私たち2人でしか支えられない」と感じるようになり、夫婦の間には信頼関係が再び芽生えました。
類型①-2よくなった:夫の子育て観の変化―「厳しさ」から「理解と見守り」へ
息子が不登校になったとき、夫の態度は非常に厳しいものでした。「嫌なことから逃げるような人間になる」「学校に行かないのは甘えだ」――そう言って、あからさまに冷たい態度をとっていました。
同じ家の中にいながら、息子も私も気が休まることがなく、このままではいけないと強く思いました。
私は、夫に息子の不登校についてもっと理解してもらうため、専門的なデータを調べ、プレゼンするように説明を重ねました。
息子の様子から、何か特性があるのではと感じ、知能検査を受けさせたところ、IQは140という結果が出ました。
私たちは、検査官の話を一緒に聞きに行きました。「公立学校はIQ90〜110の子どもに合わせているため、息子さんには学校が合わなかったのかもしれません」という説明に、夫は初めて納得し、子どもの特性を理解してくれるようになりました。
その日を境に、夫の態度は変わりました。命令口調や否定的な言い方がなくなり、私の話にも「だけどね」と割り込むことがなくなりました。
家庭の雰囲気を穏やかにしようと努力してくれるようにもなりました。今では、息子に対して強いることなく、見守る姿勢を大切にしてくれています。
また、私が夫に伝えた「してほしいこと」や「これまで無理をしていたこと」にも、夫は耳を傾けてくれました。仕事の帰りを早めたり、休日の調整をしたりと、できる限りの協力をしてくれています。
不登校という出来事は、私たち家族にとって決して楽なものではありませんでした。でも、その経験を通じて、夫婦の絆は強まり、夫は本当の意味で「父親」になってくれました。今では、家庭はお互いが尊重し合い、支え合える場所になっています。
類型②-1悪くなった:意見の対立とすれ違い―「話し合いたいのに、話がかみ合わない」
子どもが不登校になったとき、まず浮き彫りになったのは、夫婦間の子育てに対する考え方の違いでした。
夫は「母親が甘やかしたせいだ」と私を責め、厳しい言葉を子どもにぶつけることもありました。私は「今は見守ることが必要」と主張しましたが、夫はまったく理解しようとせず、何を言っても平行線でした。
夫が「子どもの不登校は登校させなかった母親の責任だ」と言い放ち、私が自責の念に押しつぶされそうになったこともありました。
子どもへの接し方、学校への対応、今後の進路――どんな話題であっても、意見がすれ違い、言い争いばかり。話し合いのたびに喧嘩になり、次第に口をきかなくなりました。
「もう話しても意味がない」と感じるようになり、必要最低限のことしか話さなくなりました。
類型②-2悪くなった:不参加・無関心―「頼りたいのに、そこにいない」
不登校の問題に直面したとき、夫が頼りになればどれほど救われたか分かりません。
でも実際は、夫は家庭のことをすべて私に任せきりでした。家事、学校対応、仕事の両立…すべてを私が抱え込む中で、精神的にも限界を感じていました。
夫は温和ではありますが、家庭に関心がなく、育児の意思決定にも関与しませんでした。最初のうちは相談には乗ってくれていましたが、徐々にそれもなくなりました。
私がいくら本を渡し、情報を共有しようとしても、「分かる人がやればいい」と返されるばかりで、協力は得られませんでした。
さらに夫は、仕事の関係で家にいない日も多いです。久しぶりに会話をしようとしても、「話すのがしんどい」と避けられ、心の距離はさらに開いていきました。
類型②-3悪くなった:衝突・破綻・別居―「分かり合えず、離れるしかなかった」
不登校がきっかけで、もともと抱えていた夫婦の問題が表面化しました。
私が仕事を休職して子どもの対応に専念しているにもかかわらず、夫は何もせず、やがて家庭への関心を完全に失いました。
「子どもの不登校よりも出世」と仕事を優先し、ついにはモラハラやDVにまで発展。私は心身ともに限界を迎え、別居せざるを得なくなりました。
今では離婚を前提とした協議に入っています。「夫婦としてはもう終わった」と感じつつも、子どものためにどう関わるかを模索している方もいます。
不登校相談員・伊藤真依(株式会社キズキ)のコメント
不登校という出来事は、お子さん自身だけでなく、夫婦関係にも深く影響を与えます。今回寄せられた声からは、「責め合いから支え合いへ」「厳しさから見守りへ」といった前向きな変化があったご家庭もあれば、逆に意見の対立や無関心、衝突によって関係が悪化してしまったご家庭もあることが分かりました。
不登校の出来事をきっかけに夫婦関係が前向きになった方々は、「お子さんをふたりで支える」という共通の目的をもって対話を重ね、カウンセリングなどの力も借りながら、パートナーやお子さんの気持ちを理解しようと努力し続けることができています。
しかし、関係が良くなったケースでも、もとから絆が深かった訳ではなく、不登校の出来事をきっかけに対話を深めて一丸となったケースが多くあります。
不登校の知識をプレゼンして理解を深めてもらったというお母さまのエピソードのように、「お互いの知識や情報量の差を埋めていく」というのは不登校の悩みを夫婦で団結して乗り越えていくための大切なコツでもあります。
家族とはいえ、違う人間であれば考え方やスタンスに違いがあって当然です。時には専門家などの第三者の意見も取り入れながら、お子さんを支えるという共通の目的に向かってゆっくり協力体制を整えていくことが重要です。
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