
子どもの不登校、夫との意見の違い【不登校と夫婦関係のアンケートから(4)】【調査報道】
ウェブメディア「不登校オンライン」は、2025年3月12日〜25日に、お子さんが不登校・行き渋りである(であった)保護者さまを対象に、「不登校の保護者の夫婦関係」についてのアンケートを実施しました。
「不登校について、夫婦で意見が食い違うことはありますか?」という設問への回答は61名で、内訳は次の通りでした。
- よくある:32名(52.46%)
- たまにある:15名(24.59%)
- ほぼない:9名(14.75%)
- まったくない:5名(8.20%)
本記事では、その設問に関連した「子どもの不登校について、どんな意見の違いがありますか?」という設問にお寄せいただいたエピソードと、キズキ不登校相談員・伊藤真依からのコメントを紹介します。
※紹介内容は、回答原文をもとに、不登校オンライン編集部が類型化・再構築・編集を行ったものです。
※回答者:全て「妻(不登校の子どもにとっての母親)」、敬称略、順不同で、もりこ、すいーとぽてと、まるこ、りー、みも、みーちゃん、うつぼ、みえころ、しんのすけ、らい、さな、ハル、poreru、hum、なお、やまぐち、ま、あげは、み、ごくらく、F母、153、Hideko、さくらママ、うさぎmama、Sakl、あくう、子育てを楽しみたい、まさき、yoshino、きんたろう、コ、あじたま、natsumi
目次
類型①:登校させるべきvs見守るべき―「“行かせたい夫”と“寄り添いたい妻”」
子どもが不登校になってから、夫と私は根本的な考え方の違いに気づきました。
夫は「学校には行くべき」「放っておいたらだらける」と言い、私は「子どもの心の状態を最優先にしたい」と思っていました。
あるとき、夫は「無理にでも外に出せばいい」と言い、私は「無理に出すことが逆効果になる」と反論しました。
実際、泣き叫ぶ子どもを無理に登校させようとしたときのことが忘れられません。その経験から、私は見守る方向に切り替えましたが、夫はなかなか考えを変えられず、口論になることも少なくありませんでした。
類型②:生活・勉強への姿勢の違い―「“規律重視”の夫と“心優先”の私」
夫は不登校を否定しているわけではないのですが、「学校に行かないなら、せめて規則正しい生活と勉強だけはすべきだ」という考えです。
私は、子どもが心から元気になるまでは、無理に何かをさせる必要はないと思っています。
YouTubeやゲームも、夫は「長時間やらせるな」と言いますが、私は「そこから学ぶこともある」と考えています。
「子どものタイピングが速くなっていること」に夫は気づかず、一方の私はそこに少し希望を見出しています。日常の中の価値観の違いが、いつも静かな摩擦を生みます。
類型③:情報収集・学びの姿勢の差―「“学ぼうとする妻”と“昔の常識を貫く夫”」
私は不登校について理解を深めようと、セミナーに参加したり、カウンセリングを受けたり、本を読んだりしてきました。
でも夫は、「そんなの意味あるのか」と言い、昔の常識を今も信じています。
「俺の時代は厳しくされて当たり前だった」と言う夫に、「今は時代が違う。子どもの特性を見てほしい」と何度も伝えてきました。
医師から発達特性のことを説明されて、少しずつ夫も受け入れつつありますが、それでも根底にある考え方はなかなか変わりません。
類型④:将来・進路観の違い―「“現実的になれ”と“希望を信じたい”のすれ違い」
不登校が長引くにつれ、進路や将来のことを話す機会も増えました。でも、夫は「まだ夢みたいなことを言っている」「現実を見ろ」と、すぐに現実的な話に引き戻そうとします。
私は、今すぐに道を定めなくてもいいと思っていますし、子どもが自信を取り戻すことの方が大切だと感じています。
通信制への転校の提案や、夜の外出の是非、学歴の考え方など、すべての場面で「急がせたい夫」と「待ちたい私」で意見が対立します。
類型⑤:子どもへの接し方・感情面のズレ―「“厳しく正したい”と“共感したい”」
夫は子どもの姿を見るたびに、だらけているように見えるのか、つい厳しい言葉をかけてしまいます。一方、私は子どもの気持ちに寄り添いたくて、無理に言い聞かせることはしません。
回復途中の繊細な時期でも、夫は「もう元気なんだろ?」「いつまで休むんだ」と声をかけてしまう。そのたびに、子どもの顔が曇るのが分かります。
声のかけ方、励まし方、勉強の教え方まで、夫婦の接し方はことごとくズレていて、衝突が絶えません。
類型⑥:支援に消極的・否定的な夫―「“甘やかしだ”と決めつける夫と、必死で守る妻」
夫は不登校という言葉自体を「言い訳」と捉えているようでした。特性の話をしても、「気のせいだ」「俺だって頑張ってきた」と言い、子どもの抱える苦しみに想像が及びません。
子どもの心を守ろうとする私の姿を、「甘やかし」としか受け取らず、「休ませるのは母親のせい」「勉強はやらせろ」「学校の時間はゲーム禁止」と一方的に決めてしまいます。
最悪の場合、子どもとの関係そのものを放棄しようとする言動まで出ることがあり、話し合いは困難を極めます。
不登校相談員・伊藤真依(株式会社キズキ)のコメント
不登校をめぐる夫婦間の意見の違いは、子どもへの向き合い方や夫婦関係そのものに深く影響を与え得る大きな問題です。
今回寄せられた声からは、「行かせたい夫」と「見守りたい妻」、「規律を重んじる夫」と「心の回復を優先したい妻」など、立場や価値観の根本的なズレが、衝突をのきっかけになっていることが伝わってきました。
双方、お子さんのことを想っての意見であることは同じですので、「どちらの価値観が正しいか」という観点のぶつかり合いではらちが明かないことも多いでしょう。
大切なのは、互いの立場を“否定”ではなく“理解”しようとする姿勢です。どちらかが正しい・間違っているではなく、「子どもにとって何が最善か」という共通の目的を見失わないこと。その視点に立ち返ることで、少しずつでも歩み寄りは可能になります。
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