
子どもの不登校と、夫婦関係の危機【不登校と夫婦関係のアンケートから(7)】【調査報道】
ウェブメディア「不登校オンライン」は、2025年3月12日〜25日に、お子さんが不登校・行き渋りである(であった)保護者さまを対象に、「不登校の保護者の夫婦関係」についてのアンケートを実施しました。
「子どもの不登校に関連して、夫婦関係の危機を感じたことはありますか?」という設問への回答は63名で、内訳は次の通りでした。
- はい:46名(73.02%)
- いいえ:17名(26.98%)
本記事では、その設問に関連した「夫婦関係の危機は、どんな状況でしたか?」という設問にお寄せいただいたエピソードと、キズキ不登校相談員・伊藤真依からのコメントを紹介します。
※紹介内容は、回答原文をもとに、不登校オンライン編集部が類型化・再構築・編集を行ったものです。
※回答者:全て「妻(不登校の子どもにとっての母親)」、敬称略、順不同で、すいーとぽてと、みえころ、らい、ハル、もりこ、poreru、りん、なお、やまぐち、ま、あげは、ぺんま、み、ごくらく、153、Hideko、きなこ、まるこ、Sakl、あんころもち、りー、みも、あくう、みーちゃん、子育てを楽しみたい、まさき、yoshino、きんたろう、まー、しーちゃん、コ、うつぼ、あじたま、natsumi、ゼロ
目次
- 類型①-1:明確な夫婦関係の危機に直面した●限界に達した母親の思い
- 類型①-2:明確な夫婦関係の危機に直面した●心の暴力に追い詰められて
- 類型①-3:明確な夫婦関係の危機に直面した●すれ違いと孤立感の蓄積
- 類型②-1:一時的に危機を感じたが、乗り越えた●蓄積されたわだかまりが爆発したとき
- 類型②-2:一時的に危機を感じたが、乗り越えた●考え方の違いに気づき、歩み寄りが生まれた
- 類型③:今まさに危機が継続している●家庭に心理的安全性がない
- 類型④:危機ではないが、すれ違いを感じた型●会話はあるが、通じていない感覚
- 不登校相談員・伊藤真依(株式会社キズキ)のコメント
- 「不登校の保護者の夫婦関係」アンケート関連記事一覧
類型①-1:明確な夫婦関係の危機に直面した●限界に達した母親の思い
子どもが不登校になったとき、私は「母親としての責任」を一心に感じていました。毎日、学校や支援先と連絡を取り、子どもの感情に寄り添い、仕事もこなしていました。
そんな中、夫は何も変わらず、無関心。あるとき「わかる人がやればいい」と怒鳴られ、私は心が折れました。
「この人と一緒に子育てはできない」と感じ、離婚を本気で考えました。今も別居を考えるほどの危機感を持ちながら暮らしています。
類型①-2:明確な夫婦関係の危機に直面した●心の暴力に追い詰められて
夫が子どもに暴言を吐いたとき、「この人とは一緒に暮らせない」と思いました。子どもは怯え、私も心が震えました。
注意しても聞く耳を持たず、逆に私が責められることもありました。いつからか、私は夫と目を合わせることも話すことも避けるようになり、家の中で孤独を感じています。
気づけば「死にたい」と思う日も増えました。誰かに助けてほしい、でも誰にも言えない。そんな日々が続いています。
類型①-3:明確な夫婦関係の危機に直面した●すれ違いと孤立感の蓄積
私は子どものことに精一杯なのに、夫はまるで他人事。相談しても「話がわかりにくい」と遮られ、会話が途切れてしまう。
次第に、夫が帰宅する時間さえも憂鬱になり、家にいることが苦しくなっていきました。
同じ方向を向きたくても、心が通わず、気持ちはますます離れていきます。今はまだ一緒に暮らしてはいますが、「このままではもう無理かもしれない」と思う日が続いています。
類型②-1:一時的に危機を感じたが、乗り越えた●蓄積されたわだかまりが爆発したとき
夫とカウンセリングに通っていたとき、私はこれまで我慢してきた気持ちを一気に吐き出してしまいました。夫の前で泣きながら怒りをぶつけ、「もう別れるしかないかもしれない」と思いました。
でもその後、「これからを一緒に考えよう」という気持ちになり、少しずつ関係を見直す努力を始めました。
夫も私の言葉を受け止め、関係の再構築に向けて歩み寄ってくれました。危機はありましたが、今は乗り越えたと感じています。
類型②-2:一時的に危機を感じたが、乗り越えた●考え方の違いに気づき、歩み寄りが生まれた
最初は「学校に行くべき」という夫と、「行けなくてもいい」と考える私の間で大きな意見の違いがありました。夫は納得できず、私は孤立しているように感じていました。
でも、家族でじっくり子どもと話をしたとき、「理由が自分でもわからない」と語る子どもの姿に、夫も考えを変えてくれました。
理解には時間がかかりましたが、そのプロセスを経て、夫婦の間に新たな信頼が生まれたように思います。
類型③:今まさに危機が継続している●家庭に心理的安全性がない
子どもとの生活を守るために精一杯の日々ですが、夫婦間ではお互いの意見をすり合わせることすらできていません。
話し合おうとしても、相手は拒否的で、家庭内には常に緊張感が漂っています。
「この家には、心が安らぐ場所がない」と感じながら暮らしているのが現状です。夫婦としての土台が崩れたまま、子どもの支援だけが続いているような感覚です。
類型④:危機ではないが、すれ違いを感じた型●会話はあるが、通じていない感覚
不登校自体が直接の原因ではないかもしれませんが、夫婦で考え方がずっとズレているという感覚は以前からありました。子どもの不登校をきっかけに、それがより顕著になっただけです。
夫とは一応会話がありますが、「通じている」と感じられることが少なく、「これから一緒に歩いていけるだろうか」と不安になることはあります。
不登校相談員・伊藤真依(株式会社キズキ)のコメント
子どもの不登校という出来事は、夫婦関係に深刻な影響を及ぼすことがあります。今回いただいたお声では、「家族で乗り越える」はずの状況が、むしろ夫婦の分断を引き起こしている実情が浮き彫りになりました。
特に、責任の押し付けや価値観の違い、言葉による暴力、会話の断絶などが積み重なり、母親が孤独や絶望を抱えるケースが目立ちます。
一方で、カウンセリングや家族の対話を通じて、一度は壊れかけた関係を再構築したという声もありました。意見が違うからこそ「理解しようとする姿勢」や「耳を傾ける余裕」が、信頼の回復につながることもあるのです。
不登校への対応は、子どもへのまなざしだけでなく、夫婦関係という土台にも目を向ける必要があります。「子どもとどう向き合うか」を話し合える関係であること、それ自体が家族全体の安心につながるのではないでしょうか。
不登校の渦中で、夫婦関係が壊れかけてしまうことは珍しくありません。
お互いに歩み寄りを続ける姿勢はもちろんとても大切ですが、夫婦のスタンスの違いからどうしても足並みをそろえることが難しい場合は、無理に分かり合おうとしない選択肢もあります。
不登校の課題は簡単に解決できることの方が少ないので、様々な意見やスタンスがぶつかることも当たり前です。
夫婦で分かり合えないことに絶望する必要はありません。
お子さんをサポートするという元の目的を見失わずに、外部の専門家とも協力しながらできることを考えていくことが重要です。
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