
「子どもの不登校と夫婦関係」についての、社会・法律・職場への支援や理解に関する要望【不登校と夫婦関係のアンケートから(9)】【調査報道】
ウェブメディア「不登校オンライン」は、2025年3月12日〜25日に、お子さんが不登校・行き渋りである(であった)保護者さまを対象に、「不登校の保護者の夫婦関係」についてのアンケートを実施しました。
本記事では、そのアンケート中の「『子どもの不登校と夫婦関係』について、社会、法律、職場などに、どのような支援や理解があればよいと思いますか?」という設問にお寄せいただいたお声と、キズキ不登校相談員・伊藤真依からのコメントを紹介します。
※紹介内容は、回答原文をもとに、不登校オンライン編集部が類型化・再構築・編集を行ったものです。
※回答者:全て「妻(不登校の子どもにとっての母親)」、敬称略、順不同で、ハル、もりこ、すいーとぽてと、poreru、hum、なお、やまぐち、ま、あげは、み、みえころ、ごくらく、F母、さな、153、Hideko、さくらママ、らい、ゆーみー、まんぼう、Sakl、りー、みも、あくう、すい、ゆう、みーちゃん、子育てを楽しみたい、まさき、しんのすけ、yoshino、もも、きんたろう、コ、あじたま、natsumi
目次
類型①:母親への負担集中—「母が全部やるべき」という空気への疑問
子どもが不登校になると、真っ先に対応を求められるのは、いつも母親です。
学校とのやりとり、フリースクールの検討、病院の付き添い、昼食の準備…。それに加えて仕事もしていると、息をつく間もありません。
「子どものことは母親の責任」という暗黙の常識が、家庭にも社会にも根強く残っています。けれど本当に必要なのは、夫婦で子どもの問題に向き合える土壌と、それを後押しする社会の理解です。
育児休業や介護休業があるなら、不登校にも「親の付き添い休暇」のような制度があっていい。そうすれば、家庭内の不公平感も少しは解消されるはずです。
類型②:職場環境との両立困難—「仕事との両立に限界」
子どもが朝、行けると言ったのに、直前で行けなくなる。そうなると、職場には遅刻か欠勤の連絡を入れなければなりません。
事情を話せば「大変だね」と言ってもらえることもありますが、理解されない場合は心が削られます。
遅刻や欠勤を繰り返していると、職場にいづらくなり、働き続けることが難しくなります。「中学生だから育児休業は使えない」と言われたこともあります。
不登校は突発的かつ長期的なものであり、職場の制度と柔軟な運用が不可欠です。早退・有給・在宅勤務の拡充や、家族状況に応じた働き方のマッチング支援があると、多くの家庭が救われると感じています。
類型③:制度や支援情報の不足—「情報がなさすぎる」
支援制度があったとしても、その存在や使い方を知らなければ意味がありません。
「放課後等デイサービスや教育支援センターは、どんな子なら利用できるのか」などは、自分で積極的に調べたりして問い合わせたりして、やっとわかりました。
情報が点在していて、自力で探しに行かないと得られない今の状態では、特に疲弊している親には酷です。
不登校になった家庭に対し、制度や支援先をまとめて案内してくれる「情報パック」やナビゲーター的な支援者の存在が必要だと思います。
類型④:夫婦間の対話・カウンセリング支援
子どもが不登校になったとき、夫婦の足並みが揃っていないと、むしろその家庭環境が子どもの回復を妨げる要因になってしまいます。
夫が「学校には行くべき」と言い、妻が「休ませて見守りたい」と考えていたら、子どもは混乱し、親同士もすれ違っていきます。
我が家の場合は、カウンセリングを夫婦で受けたことで「それぞれの立場や価値観を見直すきっかけ」になりました。
夫婦で一緒に不登校を学ぶセミナーやカウンセリングの機会がもっとあれば、「母親だけが背負う構造」から抜け出しやすくなると思います。
類型⑤:社会的認識・文化改善—「当たり前を更新してほしい」
「子どもは学校に行くのが普通」「行かない子には問題がある」といった古い価値観が、今も社会にはびこっています。
でも、今の子どもたちは昔とは違い、発達特性や環境要因などさまざまな背景を抱えています。
発達障害のある10歳の息子が、「僕は他の子と違う。おかしいのかな?」と言ったことがあります。
不登校の裏側に発達障害があるケースも多く、多様な学び・在り方が受け入れられる社会的土台が必要です。
学校だけが学びの場ではないこと、子ども自身が「自分のままでいてもいい」と思える文化づくりが、家族を孤立させない大きな支えになります。
不登校相談員・伊藤真依(株式会社キズキ)のコメント
育児・介護休暇のように家族状況に応じた働き方の柔軟化は、不登校支援においても必要とされている現実的な課題です。
また、支援制度や利用できるサービスが存在していても“知らなければ使えない”状態であることも、大きな壁になっています。最初にまとめて案内してくれる人やツールがあるだけで、家庭の混乱は大きく減らせるはずです。
よい支援の制度を作るだけでなく、それを周知する方法についても同時並行で検討していく必要があること、不登校支援に携わるひとりとして改めて感じました。
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