「不登校を黒歴史にしてほしくない」 子どもの「やりたい」を支える居場所スタッフの思い
「子どもたちが過去の不登校の肯定できたら」と語るのは、「NPO法人キリンこども応援団」代表の水取博隆さん。市役所の職員を辞め、大阪府泉佐野市で子ども食堂やフリースクールを運営する水取さん。さまざまな居場所に関わる水取さんに、子どもたちにとっての居場所の意義や居場所とのつながり方についてお話をうかがいました(※写真は水取博隆さん)。
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――キリンこども応援団は、どんな活動をされているのでしょうか?
私たちは2018年7月、子ども食堂を起点に居場所づくりを始めた団体です。活動の軸はおもに3つあります。1つめは、「さのだい子ども食堂キリンの家」です。はじめは泉佐野市立佐野台小学校の保護者の方たちと月に1回、集会場を借りて活動をしていました。しかし、コロナ禍になって集会所を借りられなくなってしまいまして。活動を一時休止したあと、空き店舗をリノベーションし、2020年12月に自分たちの拠点を構えるようになりました。今は、平日の夕方16時~18時のあいだ、子どもたちといっしょにご飯を食べたり、集ったりできる場として活動しています。
2つめは、2021年11月から活動している「キリンのとびら」。不登校の子どもたちのための対面型フリースクールです。平日の10時から16時まで開けていて、今は小中学生が14名来てくれています。キリンのとびらでは、午前は子どもたちがそれぞれのペースで学べる学習の時間。午後は体育・美術・音楽、そしてグループワークといった多様なカリキュラムを導入しています。
また、最近はキリンのとびらに来ることで学校の出席扱いになったり、定期テストも私たちの施設で受けられたりと、サポート体制を整えています。私の前職が市役所の職員だったので、行政関係では先方の事情も理解できる部分があるんです。なので、それぞれの学校や行政とうまく連携しながら子どもたちを支えられる環境をつくっています。
3つめは、2022年10月から始めた、「オンラインフリースクールclulu(クルル)」です。oVice(オヴィス)というバーチャル空間を使って、平日12時から16時まで学習や部活動などの活動を行なっています。cluluを始めた理由は、キリンのとびらの活動を通じて、スクールのドアの前までは来られてもなかに入れず帰ってしまう子どもたちの姿を目にしてきたからです。家から出ることに不安を感じている子たちにとっては、やっぱり対面型のフリースクールはハードルが高いんですよね。でも、オンラインフリースクールなら、最初は声も顔も出さなくてもつながることができます。オンラインの活動を充実させることで、いろんな状況の子どもたちに場を届けられたらと思っています。
甘えるしぐさ 覚えた違和感
――子どもたちに向けた活動を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
市役所の職員として働きながら、地域のPTA活動で子どもたちと関わり始めたことがきっかけでした。とくに思い出に残っている出来事があります。地域の子どもたちとスポーツ大会に出ることになり、週1回みんなで集まって練習していた時期があったんです。ある日、そこに参加している男の子に変化があって。私の膝のうえに乗って激しく甘えてきたり、友だちにきつく当たったりするようになったんです。「あれ、どうしたのかな」と違和感を覚えました。