
「大学に行きたいけど勉強が不安…」 不登校から学び直せるルートとは?【不登校の進路相談室】
高校生で不登校のお子さんが、少しずつ元気になってきた。大学受験にも興味が出てきたようだ。
そんなお子さんの様子を見ると、親御さんとしては喜ばしい思いとともに、不安もあることでしょう。
「勉強についていけるだろうか」
「他の受験生と比べて遅れているのではないか」
不登校だからといって、大学に進学できないということはもちろんありません。
受験勉強を機に、これまでの学び方を見直し、本当に自分に合った学び方を見つけるための貴重な機会ともなります。
この記事では、不登校からでも大学進学を目指せる具体的なルートと、お子さんが自信を取り戻し、再び学び始めるための心構えについてお伝えします。
【サポート団体を利用しましょう】
不登校のお子さんのことを、保護者だけで対応する必要はありません。不登校のサポート団体を適切に利用することで、お子さんも保護者さまも、「次の一歩」に進みやすくなります。サポート団体の探し方は、こちらの記事をご覧ください。
目次
1. まずは「学びの土台」を取り戻す
受験勉強に取り組む前に、まずは学びの土台を取り戻しましょう。
① 生活リズムを整える
- 毎日同じ時間に起きて、同じ時間に寝るなど、基本的な生活リズムを取り戻す
- 朝起きたら、太陽の光を浴び、軽い運動をするなど、心身ともに活動しやすい状態を作る
② 学習習慣を少しずつ取り戻す
- いきなり長時間勉強せず、1日15分でもよいので勉強をする習慣をつける
- 集中力が続かない場合は、5分勉強→5分休憩のように、細かく区切る
- お子さんに向いた勉強法を探す(※)
※勉強の方法は、「机に向かってノートに書く」だけとは限りません。特に暗記については、歩きながら/立った姿勢で/音読する/目で読む/耳で聞くなどの方法が向いていることもあります。
③ 基礎学力の確認と復習
- 中学校の教科書や参考書を使って、基礎学力の確認と復習を行う
- 苦手な教科や単元を丁寧に復習する
- お子さんに向いた教材(Webサイトやアプリも含む)を探す
- 不登校の子どもに対応した塾、学び直しから受験勉強まで対応している塾などを探す
2. 大学受験資格を得る
大学受験を行うためには、基本的には「高卒資格」または「高卒認定資格」のどちらかが必要です。お子さんの状況に合わせて、どのルートで資格を取得するかを検討しましょう。
- 現在在籍している高校を卒業する
- 別の高校(通信制高校など)に転校・再入学して卒業する
- 高卒認定試験(旧大検)を受験する
高卒認定試験は、高校に在籍していても受験可能です。「高校に在籍して卒業を目指しつつ、同時並行的に高卒認定の合格も目指す」という方法もあります。
3. 大学受験に向けた具体的なステップ
大学受験に向けて、具体的なステップを踏んでいきましょう。なお、①〜④は「お子さんが不登校(だった)かどうか」は関係なく、大学受験生に共通して重要な部分です。
① 情報収集
- 大学の学部・学科を調べて、興味のあるところを見つける
- 入試の方法・科目・日程を調べる
- 大学のウェブサイトを見たり、オープンキャンパスに行ったりする
② 学習計画
- 目標の大学の入試科目に合わせて計画を立てる
- 過去問を分析し、得意・不得意を把握する
③ 受験勉強
- 基礎学力の定着を重視し、教科書や参考書を中心に学習する
- 問題集や過去問で実践力を養う
- 塾や家庭教師を活用するのも有効
④ 模試
- 自分の学力を客観的に把握し、弱点を克服する
- 模擬試験の結果を分析し、今後の学習計画に役立てる
⑤ 不登校に関連した検討
- 高校までの不登校の原因と関係しそうなことを、可能な範囲で洗い出す
- 同じことが起きなさそうな大学・学部を探す(※)
※例えば、次のような観点があります。
- 朝が苦手なら、朝に必須の授業がない大学・学部を探す
- 多人数とのコミュニケーションが苦手なら、人数の少ない大学・学部を探す
- 少人数での人間関係が苦手なら、人数の多い大学・学部を探す
- 環境の変化が苦手なら、「留学が必須」などの大学・学部を避ける
- 発達障害の特性があるなら、サポート環境の整った大学を探す
4. 不登校からの大学受験、親御さんにできるサポート
不登校で勉強から離れていた場合には、学力や勉強習慣を取り戻すために苦労があることは否定しません。そんなお子さんのために、親御さんにできるサポートはもちろんあります。
ただしその上で、お子さんのことは、親御さんだけでなんとかしようとする必要はありません。繰り返す通り、不登校のお子さんの勉強をサポートする塾などはたくさんあります。ぜひ、そうしたところを積極的に活用してください。
以下に紹介する「親御さんにできるサポート」も、その前提でご覧ください。
① お子さんの気持ちに寄り添う
- お子さんの不安や悩みに耳を傾け、共感し、励ます
- お子さんのペースを尊重し、焦らずに見守る
② 学習環境を整える
- 勉強に集中できる環境を作る
- 必要な教材や参考書を用意する
③ 情報を提供する
- 大学の入試情報など、役立つ情報を提供する(一緒に調べる)
- 進路について話し合う時間を作る
5. お子さんの「学びたい」という気持ちを尊重する
最も大切なことは、お子さんの「学びたい」という気持ちを尊重することです。
不登校という経験は、お子さんにとって大きな試練だったかもしれません。しかし、それを乗り越え、再び大学進学という目標を持ったお子さんは、きっと大きく成長できるはずです。
親御さんは、お子さんの可能性を信じ、温かく見守ってあげてください。そして、お子さんが自分の未来を切り拓いていけるよう、ともに歩んでいきましょう。
6.不登校からの大学受験について、つまずきのあった事例
不登校からの大学受験について、不登校オンライン(キズキ)が見聞きした、つまずきのあった事例(ストーリー・エピソード)を紹介します。
なお、「その年の受験」でうまくいかなかったとしても、それ以降にやり直すことはもちろん可能です。
※個人の特定に紐づかないよう、複数の事例を統合・編集・再構成しています。
※「不登校からの大学受験」は、不登校のお子さんに対応した塾などを利用することをお勧めします。
エピソード1:通信制高校に転校したが、自主学習の壁にぶつかった
高校1年の途中で不登校になった美月さんは、全日制高校から通信制高校に転校しました。
最初は「これなら自分のペースで学べる」と意気込んでいましたが、通信制高校の学習は想像以上に自己管理が求められるものでした。
学校から送られてくるレポートを提出するだけで単位が認定される仕組みだったため、最初のうちは「まだ大丈夫」と余裕を持って過ごしていました。
しかし、少しずつ「今日やらなくても明日やればいい」という考えが積み重なり、気づけば数か月分のレポートが溜まっていました。
「そろそろやらなきゃ」と思い、必死で取り組もうとするものの、基礎学力が落ちていて、簡単な数学の問題でも苦戦するようになっていました。
やる気を取り戻そうと家庭教師をつけたり、オンライン学習を利用したりしましたが、いざ問題を解こうとすると分からないところが多く、焦りばかりが募る日々。
結果的に、通信制高校は卒業できたものの、模試の成績は思うように伸びず、志望校には届きませんでした。
この経験から、美月さんは「自主学習が得意でない場合、通信制高校に入るだけでは学力はつかない」と痛感しました。
美月さんは浪人をして、予備校に通いながら再チャレンジを目指しています。
エピソード2:高卒認定試験に合格したものの、受験勉強の計画が甘かった
悠翔くんは、高校2年の途中で中退し、しばらく自宅で過ごした後、「大学に行きたい」という気持ちが湧いてきました。
まずは高卒認定試験を受け、無事に合格。これで大学受験の資格を得たものの、「高卒認定を取ったから大学受験も大丈夫」と思い込んだのが問題でした。
高卒認定試験は、高校の基礎学力を確認する試験ですが、大学受験のレベルとは大きく異なります。
高卒認定合格後の悠翔くんは、安心して、勉強のペースが落ちていきました。さらに、「独学でやれるはず」と考え、予備校には通わず、教材も最低限のものしか用意しませんでした。
結果、いざ受験シーズンが近づくと、「思ったよりも問題が解けない」という事態に直面しました。
特に数学と英語の演習不足が深刻で、模試の偏差値は伸び悩んだまま本番を迎えました。
結果として、共通テストでは目標点に届かず、第一志望の国公立大学には不合格。第二志望の私立大学に進学することになりました。
悠翔くんは、「第二志望に合格できたので満足はしてるけど…。高卒認定に合格しただけで受験勉強を進めた気になっていたのはよくなかった」と悠翔くんは話しています。
エピソード3:学力は十分あったのに、精神的なプレッシャーで崩れた
芽生さんは、高校1年の途中で不登校になりましたが、自宅学習を続け、高卒認定を取得しました。
そこから1年間、予備校に通い、難関大学を目指して努力しました。模試の成績も順調に伸びており、周囲からも「絶対合格できるよ」と励まされていました。
しかし、受験が近づくにつれて、「不登校だった自分が、大学に本当に合格できるんだろうか」というプレッシャーが大きくなり、体調を崩しました。
試験前は眠れない日が続き、集中力も低下。試験当日は極度の緊張で、いつもなら解ける問題ですらミスを連発してしまいました。
結果として、合格ラインにわずかに届かず、不合格に。
芽生さんは「勉強だけでなく、メンタルの管理も大事だった。『不登校と大学受験は関係ない』と割り切れていたらよかった」と振り返ります。
翌年は心のケアにも気を配りながら再受験に臨み、無事合格しました。
エピソード4:オンライン学習だけで受験勉強を進めたが、アウトプット不足で失敗した
颯真くんは、高校2年のときに不登校となりました。最低限の出席日数と成績は確保して、その高校をなんとか卒業。その後はオンライン教材を活用して、独学で大学受験を目指しました。
オンライン教材の利点を活かし、自由な時間に好きなだけ学習できたことで、基礎知識はしっかりと身についたように思えました。
しかし、受験直前になって「過去問を解くと全然できない」と気づきました。
颯真くんの利用していたオンライン教材は、インプットには適していたものの、演習(アウトプット)の機会があまりなく、知識を問題に適用する力が育っていなかったのです。
特に、英語の長文問題や数学の応用問題は、手を動かして解く習慣がなかったため、本番でも時間配分に苦戦しました。
結局、第一志望には届かず、浪人を決意。翌年はオンライン教材だけでなく、予備校の演習講座を活用しながらバランスよく学習を進めました。
エピソード5:自分の学力に合わない大学を受験して、不合格となった
百花さんは、高校不登校・中退を経て高卒認定を取得し、大学受験に挑戦しました。
学力的には中堅私立大学に合格できるレベルでした。しかし、「高校中退から大学受験するんだから、難関大学を目指したい。周りを驚かせたい」と考えて、自分の学力よりもレベルの高い大学だけを受験しました。
一方で、勉強のペースなどを変えることはありませんでした。
結果、第一志望から第三志望まで全て不合格。その年に大学に進学することはできませんでした。
この経験から百花さんは、「難関大学を本気で目指すならもっと勉強するべきだった。または、今の学力で行ける大学で納得するべきだった」と反省しました。
ただ、「今年進学できないなら、また来年も受験をすることになる」と気づいた百花さん。
「自分の学力を上げれば、今年の不合格校も来年には現実的な選択肢になる」と思いを新たにしました。
実際に勉強を続けて学力を上げ、前年度に不合格だった志望大学に合格しました。
つまずきがあったケースのまとめ
以上のエピソードは、不登校や中退を経験した方が大学受験で直面するさまざまな課題を示しています。
どのケースも「少しの工夫で回避できた可能性がある」「不登校からの大学受験に詳しい人に聞いていれば回避できていた可能性がある」というつまずきです。
事前に戦略を練り、適切な学習法を取ることで、大学受験の成功率を高めることができるとも言えます。
不登校からの大学受験を、上手に進めた事例
不登校からの大学受験について、不登校オンライン(キズキ)が見聞きした、上手に進めた事例(ストーリー・エピソード)を紹介します。
※個人の特定に紐づかないよう、複数の事例を統合・編集・再構成しています。
※「不登校からの大学受験」は、不登校のお子さんに対応した塾などを利用することをお勧めします。
エピソード1:高校を中退し、独学で学び直した
一輝くんは、高校1年の冬に不登校になり、そのまま高校を中退しました。
当時は将来のことを考える余裕がなく、数年間はアルバイトをしながら自宅で過ごしていました。そして20歳になったとき、「このままでいいのか」と考え、高卒認定試験を受けることを決意しました。
勉強を始めた当初は、ブランクが長かったため基礎学力が落ちており、簡単な数学の計算にも苦労しました。そこでオンライン教材を活用し、独学で少しずつ学習を進めました。
高卒認定試験には半年で合格し、そのまま大学受験を目指すことにしました。
独学には限界があると感じ、「不登校経験のある人の大学受験に強い塾」に入塾し、英語と数学の問題演習を増やしました。過去問も徹底的に解き、模試での成績が徐々に上がると、自信がついていきました。
最終的に、第一志望の国公立大学に合格。高校を中退してから5年以上経っての進学でした。
一輝くんは、「塾に『不登校経験者の学び直し』のノウハウがあったため、大学受験に成功できた」と振り返っています。
エピソード2:通信制高校とサポート校を活用した
玲奈さんは、高校2年生のときに不登校になりました。人間関係のストレスから学校に行くことができなくなり、そのまま通信制高校に転校しました。
しかし、通信制高校では授業のほとんどが自主学習形式で、「どうやって勉強すればいいのかわからない」と悩むようになりました。
そこで、高校と提携するサポート校にも通うことにしました。
サポート校では、週に数回、先生と個別面談をしながら学習計画を立てることができたため、勉強のリズムが整いました。また、同じような境遇の仲間と出会い、精神的にも支えられました。
受験勉強では、オンライン学習とサポート校の指導を組み合わせ、計画的に学習を進めました。
特に英語は、サポート校の先生に添削指導を受けながら英作文を練習し、得意科目にすることができました。
結果、玲奈さんは推薦入試を活用し、第一志望の私立大学に合格しました。
「通信制高校だけでは難しかったかもしれないけれど、サポート校があったおかげで勉強の習慣がつき、受験を乗り切れた」と語っています。
エピソード3:高卒認定試験を活用し、総合方選抜入試で合格した
樹くんは、高校1年のときに体調を崩し、不登校になりました。回復するまでに時間がかかり、高校に戻る選択肢が難しくなったため、中退を決断しました。
その後、「大学で自分の好きな分野を学びたい」と考え、まずは高卒認定試験を受験。1年で全科目に合格し、大学受験の資格を得ました。
入試の方法としては、総合型選抜(旧AO入試)を利用することにしました。
入試では、「なぜこの大学・学部で学びたいのか」「不登校の経験をどう乗り越えたのか」を論理的に伝えることが重要だと考え、小論文や面接対策に力を入れました。
予備校で総合型選抜対策講座を利用し、文章の書き方やプレゼンの仕方を徹底的に練習しました。
結果、第一志望の社会学部に合格。不登校という経験をポジティブに捉え、それを大学受験に活かしたことが、合格の大きな要因だったと話しています。
エピソード4:不登校や中退の人のサポートを行う塾を利用して成功した
絢音さんは、高校2年のときに不登校になりました。とは言え、「卒業に必要な出席日数と成績」は確保できそうです。
そこで、「高校は最低限度の関わりで卒業を目指しつつ、学校の外で学んで大学受験を目指す」ことにしました。
勉強から離れていた絢音さんのために、親御さんは、調べて見つけた「不登校や中退の人を支援する専門塾」の存在を伝えました。
一般的な予備校とは異なり、個別対応が充実しており、一人ひとりに合わせた学習計画を立ててくれるのが特徴でした。
親御さんはそこに通い始めて、最初は基礎学力を取り戻すことからスタートし、少しずつ勉強の習慣を身につけました。
先生はメンタル面のサポートも行い、モチベーションが落ちそうになると適切なアドバイスをくれました。
1年半の学習の末、絢音さんは無事に高校を卒業し、志望校にも合格。「塾がなければ、途中で挫折していたかもしれない。自分に合った環境を選ぶことが成功の鍵だった」と話しています。
エピソード5:浪人を経て、学習習慣を取り戻した
琉斗くんは、高校2年のときに不登校になり、そのまま高校を中退しました。高卒認定試験には合格したものの、受験勉強を本格的に始めたのは20歳を過ぎてからでした。
最初の大学受験は失敗に終わりましたが、予備校に通い、浪人生活を送りながら学習習慣を取り戻しました。
最も苦労したのは「毎日勉強を継続すること」でした。予備校のカリキュラムに沿って学習を進めることで、少しずつ集中力が上がっていきました。
浪人1年目の終わりには、模試の成績が安定し、2年目の受験で無事に第一志望の大学に合格しました。「遠回りしたけれど、その分、学ぶ楽しさを知ることができた」と語っています。
うまく行った事例のまとめ
どのケースも、「自分に合った学び方を見つけ、適切なサポートを受けながら努力を続けること」が成功の鍵になっています。不登校や中退を経験しても、大学受験に挑戦し、新たな道を切り開くことは十分に可能です。
最後に〜大学受験は、サポート団体を利用しながら〜
不登校や中退を経験していても、大学受験の合格はもちろん可能です。
ただ、勉強習慣が定着していなかったり、基礎の学力が身についていなかったりすると、お子さんだけで進めることが難しいケースもあります。
不登校からの大学受験をサポートする塾などはたくさんありますので、そうしたところにまずは相談してみてください。
きっと、お子さんに向いた具体的なルートが見えてくるはずです。