私のなかのモヤモヤを言葉に 不登校経験者が実体験をもとに読む短歌
今年2月、不登校経験者が集まって短歌を詠み合う、前代未聞の「不登校歌会」が開催されました。不登校だからこそ、詠める歌がある。不登校歌会を企画した「不登校ラボ」のかんたさんに、歌会のようすや披露された歌を紹介していただきました(※画像はイメージです)。
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昨年7月、『不登校新聞』が歌人の俵万智さんにインタビューをしました(586号掲載)。僕はその取材に同席こそできませんでしたが、完成した記事を読んでとても感動しました。「自分のなかのもやもやとした感情を、言葉にすることで一度立ちどまって見つめなおすことができる」と俵さんはおっしゃっていました。僕はすでに不登校は明けていますが、そんな今の状態でも大事にしたい言葉だと深く感じました。
よい作品とは、見た人に「自分も何かしたい!」と思わせるものだと言います。僕は俵さんの作品に感化されました。これは自分でもつくるしかない、と考えた僕は不登校経験者数人を招き「不登校歌会」を開催しました。今回は歌会当日に出された作品の一部を、作者の解説とともに紹介していきたいと思います。
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向かえども 答えの見えぬ 学び舎へ 今日も急げと くぐる踏切(かんた)
【解説】当時、学校に到着するためには、その手前にある線路を横断しなければいけなかった。遅刻して通学していた作者は、行きたくもない学校に不信感を持ちつつ渋々、それでも焦りながら高架をくぐっていた。
家のなか 外の賑わい 聞きながら ゲームにふける 心そこかな(もりっち)
【解説】家が学校に近かった作者は、放課後終業を告げるチャイムと下校しているであろう同級生の喧噪をかすかに聞きながら、意識半ばにゲームと向き合うことしかできなかった。