オーバードーズとは?概要、対応法、相談先などを紹介します
「不登校のお子さんがオーバードーズをしている」という話は、聞かないわけではありません。
この記事を読んでいるあなたは、お子さんがオーバードーズしていることを知り、不安を抱えている保護者の方でしょうか。または、オーバードーズで悩んでいるご本人かもしれませんね。
オーバードーズについては、下記のようなお悩みをお聞きします。
- オーバードーズをやめたい
- 具体的な対処方法を知りたい
- 相談できる支援機関を知りたい
このコラムでは、オーバードーズの概要、自分でできる対処法、保護者ができる対応、相談先などを紹介します。
大前提として、不登校やオーバードーズのお悩みは、ひとりで(保護者だけで、ご家庭だけで)抱え込む必要はありません。専門家やサポート団体に相談するようにしましょう。
目次
1.オーバードーズの概要・症状・薬の種類
この章では、オーバードーズの概要や症状などについて解説します。
①オーバードーズの概要
オーバードーズとは、基準値以上に大量の医薬品を摂取することです。(参考:厚生労働省「一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について」)
近年は、感覚や気持ちの変化を起こすために大量の医薬品を摂取するケースが増えており、若者世代を中心にオーバードーズが増加していることが社会問題となっています。
2021年度に行われた国立精神・神経医療センターによる調査では、高校生の60人に1人が「過去1年以内に市販薬の乱用経験がある」と回答しています。(参考:国立精神・神経医療センター「薬物使用と生活に関する全国高校生調査2021」)
高校生以外も含めた全体としては、2012年から2020年にかけて、「精神科医療施設における市販薬を主たる薬物とする依存症患者」は6倍に急増しています。
そして、「オーバードーズをしているけれど、病院を受診していない人(などの、薬物関連精神障害患者)」もいると考えられます。
②オーバードーズの症状
オーバードーズには、軽度から重度の症状が見られます。具体的には、以下のような症状はあります(他にもありえます)。(参考:厚生労働省「わが国における市販薬乱用の実態と課題「助けて」が言えない子どもたち」、岐阜市「オーバードーズについて」)
- 嘔吐
- 下痢
- 頭痛
- めまい
- 意識障害
- 呼吸困難
- 心停止
- 覚醒度の低下
- 幻覚
- せん妄(意識の混乱)
- 痙攣(けいれん)
- 粘膜の乾燥
- 尿閉(膀胱から尿をまったくまたはほとんど排出できなくなった状態のこと)
- 散瞳(瞳孔が開いた状態)
- 頻脈(心拍数が増加している状態)
- 致死的な心室性不整脈
症状は摂取した薬と量によって異なります。中には命にかかわるような症状が起こることもあります。オーバードーズの危険性を理解することが大切です。
③オーバードーズの対象となっている市販薬の種類
オーバードーズの対象となっている市販薬には、さまざまな種類があります。例えば、次のようなものがあります。(参考:厚生労働省「わが国における市販薬乱用の実態と課題」)
- 鎮咳去痰薬(咳止め)
- 総合感冒薬(風邪薬)
- 解熱鎮痛剤(痛み止め)
- 鎮静剤
- 抗アレルギー薬
- 眠気防止薬(カフェイン製剤)
これらの市販薬は、必要に応じて適切な量を摂取するのであれば、まったく問題はありません。
しかし、過剰に服用した場合は、大麻などの違法薬物と同じく健康障害を引き起こすリスクが高まります。
2.オーバードーズをする3つの理由・背景
この章では、オーバードーズをする理由や背景について解説します。
※「この理由・背景のある人は必ずオーバードーズをする」「オーバードーズの理由・背景はこれらに限る」というものではありません。参考としてご覧ください。
理由・背景①社会的孤立
オーバードーズをする理由の1つが、社会的孤立です(続く②③も、社会的孤立に含まれるかもしれません)。
日常生活の中で孤独を感じていると、孤独を忘れるため、気分を変えるためにオーバードーズをすることがあります。
より具体的には、次のような言い方もあります。
- ひどい精神状態から解放されたかったから
- 死にたかったから
- どれほど絶望的だったかを示したかったから
- 誰かに本当に愛されているのかを知りたかったから
特に、2020年以降の新型コロナウィルス感染症流行拡大に伴う自粛期間中にオーバードーズをする人が増え、市販薬の過量服薬による救急搬送がそれまでの2倍になったという調査もあります。(参考:厚生労働省「わが国の市販薬乱用の実態と課題」)
先ほど同様、実際にオーバードーズしている人は、さらに多いと考えられます。
理由・背景②生きづらさを感じている
2つ目の理由・背景として、生きづらさを感じているケースが挙げられます。例えば、以下のようなことから生きづらさを感じることがあります。(参考:厚生労働省「わが国における市販薬乱用の実態と課題」、NHK「オーバードーズがやめられない 市販薬を大量摂取する若者たち」)
- 学校でのいじめ
- 不登校
- 保護者からの虐待・暴力
- 保護者との不仲
これらによる生きづらさを和らげるためにオーバードーズするということが考えられています。
理由・背景③相談できる相手がいない
相談できる相手がいないことも、オーバードーズをする理由のひとつです。
学校や家庭で相談できる相手がいないがゆえに、ストレスを抱え、そのストレスを解消する手段として、オーバードーズをするケースがあります。
周囲に迷惑をかけたくないという気持ちから、孤独感や生きづらさ、そしてオーバードーズをしていることについても、周囲に相談できない人もいるでしょう。
周囲の人や専門機関に相談してみてください。
また、学校のスクールカウンセラーに相談するのもオススメです。スクールカウンセラーは、学校や公立教育相談機関に配置され、児童や保護者の心理相談や助言、教育相談などを担当する専門職です。
3.オーバードーズをやめたいあなたができる2つの対処法
この章では、オーバードーズをやめたい本人ができる対処法について解説します。大切なことは、「ひとりで抱え込まず、相談すること」です。
対処法①専門機関に相談する
オーバードーズをやめたいと思ったら、専門機関に相談することが大切です。
オーバードーズには依存症の側面があります。やめたくてもやめられない場合は、専門の医療機関での治療も必要になります。
自分ひとりで問題を解決しようとすると、かえって症状が悪化するリスクがあります。
ひとりで悩まず、医療機関や精神保健福祉センターなどの専門家に相談してみましょう。
対処法②家族に相談する
医療機関などのサポートを受けつつ、家族が頼れそうなら相談しましょう。保護者、きょうだい、親戚など、自分が相談しやすい相手で構いません。
身近にいる人のサポートを受けることで、オーバードーズをやめやすくなります。
ひとりで抱え込まず、近くにいる人を頼ることがオーバードーズをやめる第一歩になるのです。
4.子どもがオーバードーズしている場合に保護者ができる4つの対応
この章では、子どもがオーバードーズしている場合に保護者ができる対応について解説します。
対応①支援機関に相談する
大前提として、オーバードーズについても不登校についても、またそれ以外についても、「子どものこと」を保護者だけ、家庭だけで抱え込む必要はありません。
オーバードーズをしているお子さんの対応は、専門家・支援機関に相談しながら進めることがとても大切です。
「対応②」以下で紹介するものも、専門家に相談する中で「実際の、あなたのお子さん、あなた自身、あなたのご家庭」のための具体的な方法がわかっていくと思います。
専門家・支援機関の例は、次章で紹介します。
対応②保護者が元気でいる(元気を取り戻す)
保護者が元気でいる(元気を取り戻す)ことも、お子さんがオーバードーズを克服する上で重要な要素です。(参考:厚生労働省「ご家族の薬物問題でお困りの方へ」)
保護者の心身が疲れていると、お子さんのオーバードーズを解決するための方法を見つけたり、そのための行動をしたりすることができません。
いま元気でないのなら、元気を取り戻すための方法の一つに、「オーバードーズ当事者やその家族との交流」があります。
ダルクと呼ばれる専門機関では、薬物依存の当事者やその家族と交流ができる機会があり、家族の経験談や回復した方の体験談を聞けます。
また、ご自身の話を聞いてもらうことで、悩みや不安を解消したり軽減できたりすると、元気を取り戻すことにつながります。
対応③薬の正しい使用方法を理解する
薬の正しい使用方法を理解することが大切です。
薬の正しい摂取量や過剰摂取のリスクを知ることで、オーバードーズの深刻さを理解できます。
薬には目安となる量が定められているので、理解しておきましょう。
対応④オーバードーズについて学ぶ
オーバードーズについて学ぶことも大切です。
当事者と家族の共通の敵であるオーバードーズについて正しく理解することで、対策しやすくなります。
オーバードーズの背景には孤独感や生きづらさがあり、それらを理解して寄り添う姿勢が大切です。
そのため、医学や心理学などに関する情報を得て、お子さんに寄り添いながらサポートしてください。
また、回復に必要なサポート方法やどのような支援機関があるのかを知っておくとよいでしょう。
5.オーバードーズに関する相談先4選
この章では、オーバードーズに関する相談先の例を紹介します。オーバードーズの困りごとやお悩みは、ひとりだけ・ご家族だけで抱え込まず、専門家に相談することが大切です。
相談先①依存症専門病院
依存症専門病院は、依存症の治療を受けられる医療機関です。
依存症の専門知識を持つスタッフがいるため、適切なサポートを受けられるのはもちろん、依存症克服のためのプログラムも受けることができます。(参考:依存症対策全国センター)
相談先②精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、精神保健の向上及び精神障害者の福祉の増進を図るための機関です。心の健康センターとも呼ばれています。
精神医療や社会復帰、アルコール・ギャンブル・薬物・依存症など、精神保健福祉に関する幅広い相談を電話や面談で受け付けています。
各センターの規模によって異なりますが、医師や看護師、精神保健士などの専門職の方が在籍しているところもあります。
各都道府県及び政令指定都市に設置されているので、利用を検討する際は公式サイトで確認するか直接電話をして確認してください。(参考:精神保健福祉センターの全国一覧)
相談先③NPO法人日本ダルク
NPO法人日本ダルクは薬物依存症者の回復や社会復帰を支援し、その家族・関係者に対して啓発活動を行っています。
薬物・アルコール依存症者に共同生活の場を提供しており、専門的な治療プログラムを受けることが可能です。
医療サポートと回復サポートなどを提供しており、家族相談も実施しています。(参考:日本ダルク公式サイト)
相談先④自助グループ
自助グループとは、同じ問題を抱える当事者やその家族が集まり、交流したりお互いを助け合ったりできるコミュニティです。
同じような経験をしたメンバーと交流することで、回復へのヒントを得たり悩みを相談したりできます。(参考:依存症対策全国センター「自助グループリスト」)
6.オーバードーズはひとりで・家族だけで悩まず専門家に相談しましょう
決められた量以上に医薬品を摂取するオーバードーズは、とても危険な行為です。
症状は薬や摂取量によって異なりますが、最悪の場合、命に危険を及ぼすことがあります。
不登校についても、オーバードーズについても、ひとりだけで・家族だけで悩まず、周囲の大人や専門機関に相談してみましょう。