このサインは不登校のはじまり? 保護者にできるたった1つの大事なこと
子どもが不登校になる前には、小さなサインが現れることがあります。例えば「学校に行きたくない」と言葉にしたり、体調不良を訴えたりするなどです。
しかし、それらの小さなサインは見過ごされがちで、単なる「疲れ」「一時的な反抗」と捉えられることも少なくありません。
筆者自身も、子どもが学校を休みがちになった時期に、「なんで行かないの?」と問い詰めたり、無理に登校させようとしたりした経験があります。しかし、そうした対応がかえって子どもを追い詰め、子どもと学校との距離がむしろ広がったと感じました。
筆者の経験から、「まずは子どもに寄り添って話を聞く」ことの大切さをお伝えしていきます。
小さなサインに気づくためのチェックポイント
不登校の前段階の時期には、子どもの行動や発言にいくつか特徴的なサインが現れることがあります。以下に、具体的な例を挙げてみます。
①発言
「学校が嫌い」「友だちと話したくない」など、学校に関するネガティブな発言が増える。
②体調
頭痛や腹痛などの体調不良を訴える頻度が増える。とくに朝の登校前に現れることが多い。
③朝の様子
学校に行く準備をわざとゆっくりする。着替えすら嫌がるなど、準備を極端に拒否する。
④感情
急に怒りっぽくなる、些細なことで泣くなど、感情が不安定になる。
⑤趣味・興味
これまで夢中になっていたゲームや漫画など、好きなことへの興味を示さなくなる。
不登校の原因を探る前に考えたいこと
子どもが学校へ行きたがらなくなったときに、原因を探したくなるのは、保護者として当然のことです。
しかし、無理に原因を聞き出そうとすると、子どもがプレッシャーを感じたり、親子の信頼関係を損ねたりする可能性があります。原因を知りたいという気持ちをおさえ、焦らず、子どものペースを尊重することが大切です。
子ども自身が原因を明確に言語化できない場合や、そもそも「これ」という一つの理由がないことも珍しくありません。不登校の背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っていることもあります。そのため、特定の「原因」に固執せず、子どもの状況を広い視野で見てみましょう。
ただし、原因のなかには専門家によるケアが必要なもの、早めに気づいて対処したほうがよいものもあります。現段階で保護者が見落としていることがないかチェックしておくことは、子どもの気持ちを理解するのに役立ちます。
以下は、考えられる原因の例です。
- 人間関係の悩み:クラスメイトや友だちとのトラブル、先生との相性など。
- 学業の負担:授業についていけない不安や、成績へのプレッシャー。
- 身体的・精神的な不調:疲れやすさ、体調不良、不安症状や抑うつ感など。
- 学校環境の変化:クラス替えや担任変更、新しいルールへの適応が難しい場合。
- 家庭内の影響:生活リズムの乱れ、保護者の仕事の状況、家庭の雰囲気など。
これらはあくまで参考例です。必ずしもどれか一つが当てはまるわけではありません。いくつものことが複雑に絡み合っている場合もあります。
保護者は「原因探し」にとらわれず、「子どもが今どのように感じているのか」を理解しようとする姿勢をもちましょう。少しずつ、子どもの心の中を知る手がかりが見えてくるかもしれません。
親にできるサポートは子どもに「寄り添う」一択
この時期の子どもに対して、保護者にできる最善のサポートは、「寄り添い、話を聞くこと」です。具体的には、以下のようなアプローチが効果的です。
①聞き役に徹する
子どもが自分の気持ちを話したいと思ったとき、保護者はその気持ちをそのまま聞いてあげてください。そして、「そう感じているんだね」と共感を示すことが大切です。否定されたり、問いただされたりしない状況なら、子どもは安心して自分の気持ちを話すことができます。
②焦らず待つ
子どもが自分の気持ちを言葉にできるようになるまでには、時間がかかることがあります。保護者が焦ると、その焦りが子どもにも伝わり、さらにプレッシャーを感じさせることになります。子どもが安心して話せる環境を整えながら、その時を待ちましょう。
③家庭を安心できる居場所にする
子どもにとって、家庭は学校で感じるプレッシャーから解放される場所、「逃げ場」です。保護者がリラックスした態度で接してくれると、子どもは安心感を得られます。
④学校以外の居場所を検討する
フリースクールや地域の学習スペースなど、学校以外で子どもが無理なく過ごせる場所を見つけることも、プレッシャーを減らす手助けになります。
保護者のセルフケアも忘れずに
保護者が不安やストレスを抱えすぎると、その負担が子どもにも伝わります。保護者が自身の心身のケアをすることも、間接的に子どものサポートにつながります。
①相談先を持つ
信頼できる友人やカウンセラー、不登校経験者のコミュニティなどに相談することで、自分の気持ちを整理できます。
相談先については、記事「不登校のサポート団体・専門家(相談先)の例と探し方を紹介します」をご覧ください。
②負担を分かち合う
子どものケアを一人で抱え込まず、配偶者や家族と分担しましょう。学校の先生が協力的なら、積極的に相談してください。
③自分の時間を持つ
子どもと向き合うためには、保護者自身がリフレッシュする時間も必要です。趣味や散歩など、自分を労わる行動を心がけましょう。
登校だけが正解ではない
「登校再開」が唯一の正解というわけではありません。学校以外にもさまざま学びや成長の場があり、それぞれの子どもに合った選択ができます。
フリースクールや通信教育は、学校の枠にとらわれず、自分に合った方法で学びを進めていくことができます。
また、地域のクラブ活動や趣味を通じて、新しい人間関係を築いていくこともできます。
筆者の子どもが不登校だった時期には、フリースクールにも通いましたが、残念ながら馴染むことができませんでした。しかし、家庭で一緒に過ごす時間を増やし、子どもの好きなことを一緒に楽しむことで、少しずつ子どもの心が安定し始めました。
子どもとの時間を大切に過ごすなかで、無理に学校に行かせることが最良の方法ではないことに気づきました。
今、再び学校に通い始めたものの、いつまた休むようになるか分かりません。「登校し続けること」だけを目標にするのではなく、子どものペースに合わせて柔軟に対応しようと、夫婦で話し合っています。
子どもの未来には多様な可能性があります。「登校」にとらわれすぎず、子どもの個性やペースや気持ちを尊重しながら、一緒に未来を模索していきましょう。
まとめ
不登校の前段階のサインに気づくことは、子どもが抱える不安に親子で向き合うための第一歩です。
この記事を通して、かつての筆者と同じように悩んでいる保護者のみなさんの力になれることを願っています。
子どもはもちろん、親もまた試行錯誤を重ねながら成長していきます。一人で悩みを抱え込まず、子どもと一緒に安心できる道を探していきましょう。