夏休み明け直前の今 すべての親に知っておいてほしい子どものSOS【全文公開】
夏休み明け直前の今は、不登校の子どもにとっても、それまでがんばって学校へ行っていた子にとっても、非常につらい時期です。そんなとき、子どもが自身の限界を訴えるために発するSOSをご存じでしょうか。子どもの命を守るために、親御さんに知っておいていただきたい対応の原則について考えます。
* * *
夏休みにあたる8月は、不登校の子どもにとって、すごしやすい時期と言われます。しかし、お盆がすぎると、だんだんと2学期の足音が近づいてきます。フリースクール関係者に話を聞くと、夏休み明け前後は相談や体験見学などの問いあわせが増えると言います。不登校をしている子どものみならず、1学期のあいだ、必死にがんばって登校していた子どもにとっても苦しくなってしまう時期でもあります。そこで今回は、夏休み明け直前の今、親に知っておいて頂きたいことについて考えます。
カウントダウン
Aさんは、中学1年生の夏休み明けから不登校になりました。理由は夏休みの宿題が終わらないこと。2学期初日から1週間休んだことにより、勉強が遅れてしまったと感じたAさんは、その後いっさい行けなくなったと言います。また、小学5年生の夏休み明けから不登校になったBさんも夏休みの宿題が終わらせられなかったと言います。当時の気持ちについて「2学期が始まる直前は、『行きたくない』って毎日思いながら、始業式までの日にちをカウントダウンしていました」とふり返っています。Aさんは進学校に在籍し、Bさんは中学受験に向けて塾通いをするなど、勉強もでき、何事もなく学校へ通えていたと親の目には映っていたと思います。
AさんとBさんに共通している「夏休みの宿題が終わらない」というのは、子どもが発する大事なサインです。宿題の量がたんに多すぎるということでなく、「宿題をしようとしても手につかない」という場合、これこそが子どもからのSOSだと私は考えています。「このまま不登校になっては困る」と思い、なんとか宿題を終わらせるよう働きかける親もいるかもしれませんが、それでは子どものSOSを見落としてしまうかもしれません。子どもが「学校へ行きたくない」と言ってきたり、宿題が手につかない場合、それは限界を知らせる合図です。親はどうか、その子どもの訴えや言葉にならないSOSを受けとめて頂き、無理をさせないということを第一に考えていただければと思います。
2学期から行く 約束の背景には
つぎに、すでに不登校をしている子どものなかには「2学期から登校してみる」と言う子もいます。親と約束を結ぶ子もいます。そうした発言、約束の背景には「心機一転、がんばりたい」という思いもありますが、「学校へ行かなければ」という焦りがあることがすくなくありません。この場合、さきほど紹介したBさん同様、今この瞬間、始業式までの残り日数をつらい気持ちでカウントダウンしているかもしれません。
北海道函館市でフリースクールを運営している庄司証さんは「親は自身の経験から、休み明けに学校へ行くことがそれほどまでにつらいことだろうかと感じるかもしれない。しかし、本当に子どもはそれほどまでにつらいのです。親だからこそ紡ぎ出せる温かい一言を伝えてほしい」と言います。
夏休み明け前後のこの時期は、子どもの自死が1年でもっとも多くなる時期です。たしかに、学校は大切です。しかし、それ以上に大切なのは、子どもの命です。子どもの未来と地続きにつながる子どもの今を大事にするためにも、子どものSOSに耳を傾け、無理をさせないための声がけ・対応をすることを大事にしていただきたいと思います。(編集局・小熊広宣)
(初出:不登校新聞584号(2022年8月15日発行)。掲載内容は初出当時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)