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【不登校進行期】声かけが重くなる?親の「頑張って」が届かない理由【不登校の知恵袋】

#不登校#行き渋り

不登校の子どもを励ます・元気づけるつもりで「頑張って」と言ったら、子どもはますます沈んでいった。そんな経験はありませんか?

不登校の進行期にある子どもにとって、親の善意の声かけは、時に大きな負担になることがあります。

  • 頑張って
  • きっとできるよ
  • もう少しだけ行ってみようか

そうした言葉は、親の愛情や期待のあらわれです。

けれども、子どもが不登校の進行期にいる場合、その善意がかえってプレッシャーとして作用し、子どもをさらに追い詰めることもあるのです。

本記事では、不登校進行期の子どもに対する声かけの難しさと向き合いながら、「なぜ届かないのか」「どんな言葉なら支えになるのか」を丁寧に解説します。

登校を再開させることを目的とせず、子どもと信頼関係を保ちながら、安心できる環境を整えるためのヒントをお伝えします。

【不登校進行期とは】
不登校は、前兆期→進行期→混乱期→回復期という経過を辿ることがよくあります。進行期とは、不登校が始まり、心理的な落ち込みが激しくなり、やがてその状態が固定化されるまでの期間のことです。この記事は、主にこの時期のお子さんがいる保護者さんのための内容です。もちろん、それ以外の時期の方にもお役立ていただけます。不登校進行期の記事一覧はこちら

 

【サポート団体を利用しましょう】
お子さんにどのように声掛け・対応をすればいいのかは、お子さんや親御さんの性格や状況によって、一人ひとりで異なります。お子さんへの対応は、親だけ(家庭だけ)で抱え込まず、サポート団体を利用するようにしましょう。サポート団体の探し方は、こちらの記事をご覧ください。

編集

不登校オンライン編集部

「頑張って」が響かない理由

子どもを思ってかけた言葉が、なぜ届かないのか。そこには、不登校の子どもの心理状態と、親の焦りや期待が複雑に絡み合っています。

子どもは「頑張り切った末」に動けなくなっている

不登校進行期の子どもは、表面上は「無気力」に見えても、内面ではすでに限界まで頑張った結果として動けなくなっています。

「行かなければ」と思いながらも、体が動かず、できない自分に苦しみ、罪悪感、恥ずかしさ、無力感に押しつぶされているのです。

そんな状態にいる子どもに「頑張って」と声をかけると、子どもは、次のような思いから、自分を否定されたように感じたり、プレッシャーを覚えたりすることがあります。

  • 今の自分ではダメなのか
  • もっと努力しないといけないのか
  • また期待されてしまった
  • 応えなきゃいけないのに、できない

このような感情が子どもをさらに苦しめ、親子の間に距離を生むことも少なくありません。

抽象的な言葉が混乱を深める

また、「頑張って」という言葉は、具体的に何をどう頑張れば良いのかが伝わらない場合が多く、子どもを混乱させます。

目標も方法も曖昧なまま努力を求められると、「できない自分はダメなんだ」と感じやすくなり、回復から遠ざかってしまいます。

子どもに届く関わり方とは?

本当に子どもを支えるためには、「励まし」よりも「理解」と「受容」が必要です。焦らず、信頼を育てるような声かけを心がけましょう。

子どもの心理状態を理解する

子どもが学校に行けない背景には、表に出てこない様々な理由や心理的負担があります。自己否定感、恐怖、不安、疲弊―そうしたものが複雑に絡み合っています。

「学校に行きたくても行けない」「どうしたらいいかわからない」という葛藤の中にいることを理解することで、親の視点も変わってきます。

まずは、「行けないことには理由がある」「何もできないのではなく、今は休むとき」と捉える視点が大切です。

「頑張って」以外の言葉を使う

気持ちを伝えるための言葉は、他にもたくさんあります。次のような言葉は、子どもに「受け入れられている」と感じさせる力を持っています。

  • 「あなたの気持ちを大切にしたいと思ってるよ」
  • 「話したくなったら、いつでも聞かせてね」
  • 「無理に学校に行かなくて大丈夫。今はゆっくり休もう」

これらによって、親の愛情や信頼を、プレッシャーなく届けることができます。

また、「何か手伝えることがあったら教えてね」「一緒に考えてみようか」といった言葉は、子どもの主体性を尊重し、自立的な感覚も支えてくれます。

小さな変化を見逃さず、言葉にする

たとえ登校できていなくても、子どもは日々、少しずつ変化しています。例えば、次のようなものがあります。

  • 食欲が戻ってきた
  • 少しだけ笑顔が見えた
  • 興味のあることを話してくれた
  • スマホ以外の時間の過ごし方が出てきた

こうした小さな変化を「変化」として認め、「昨日よりも元気そうだね」「〇〇の話をしてくれてうれしかった」と言葉にして伝えることは、子どもにとって大きな励みになります。

「見てくれている」「理解しようとしてくれている」と感じることで、安心感が育ちます。

結果ではなくプロセスを評価する

「学校に行けた」「テストを受けられた」などの結果だけに目を向けるのではなく、子どもが何かに向かおうとしている「姿勢」や「準備」そのものを評価する視点を持つことが大切です。

たとえば、「少しだけでも宿題を開いてみようとしていた」「興味のあることを調べていた」など、それだけで立派なプロセスです。

次のように声をかけることで、子どもは自分の努力を肯定され、自信と意欲を少しずつ取り戻していきます。

  • 「〇〇について調べていたんだね。すごいね」
  • 「やろうとした気持ちって、本当に大切だと思うよ」

親自身の心のケアも忘れずに

子どもを支えるには、まず親自身が安定していることが不可欠です。不安や罪悪感を抱える自分を責めすぎないでください。

不登校の渦中にいる子どもを支えるには、親の心の持ちようが重要です。

「このままで本当にいいのか」「将来どうなってしまうのか」といった不安は、当然の感情です。しかし、その焦りが家庭内の空気に影を落とし、子どもにとってさらに居心地の悪い場所になることもあります。

だからこそ、親自身が話せる場・頼れる場を持つことが必要です。例えば、次のような相手・方法があります。

  • 信頼できる家族や友人に話す
  • カウンセラーに相談する
  • 同じ境遇の保護者の集まりに参加する

こうした手段によって気持ちを整理し、余裕をもって子どもに向き合えるようになります

具体的な声かけの例

以下に、不登校進行期の子どもに対する実際の声かけの例を紹介します。大切なのは「言葉の内容」よりも、「気持ちをこめて、プレッシャーなく伝えること」です。

  • 〇〇の気持ちを、いつも大切に思っているよ
  • 何か困っていることや、話したいことがあったら、いつでも聞かせてね
  • 無理に学校に行こうとしなくても大丈夫だよ
  • 〇〇が元気でいてくれることが、いちばんうれしいよ
  • 〇〇には、〇〇のいいところがたくさんあると、私は思ってる
  • 昨日より少し顔色が良くなったね。何かあった?
  • 〇〇について教えてくれてありがとう。面白かったよ
  • あなたのこと、ちゃんと見てるからね
  • いつもそばにいるからね

これらの言葉は、あくまで一例です。子どもの個性や今の状態に合わせて、自然に使えるものから選び、心をこめて伝えていくことが何より大切です。

専門家のサポートをぜひ選択肢に

不登校のお子さんへの対応は、親だけ、家庭だけで行う必要はありません。専門家・サポート団体の力を借りることをためらわないでください。例えば、次のようなものがあります。

  • 学校内のスクールカウンセラー
  • 教育支援センター(適応指導教室)
  • 不登校支援NPOや民間カウンセリング機関
  • 通信制高校やフリースクール

専門家・サポート団体の視点を取り入れることで、家庭では見えにくかった支援の方向性や新たな可能性が具体的に見つかっていきます。

探し方の例は、次の記事をご覧ください。

頑張って系の声掛けで、つまづきがあったケース

不登校オンライン(キズキ)が見聞きした、「不登校のお子さんに『頑張って』系の声掛けをしたことでつまづきが生じたエピソード」を紹介します。

※個人の特定に紐づかないよう、複数の事例を統合・編集・再構成しています。
※これまでに同じような対応をしている親御さんを不安にさせるつもりはありません。その上で、「お子さんへの対応」は親だけ・家庭だけで対応しようとせず、不登校のサポート団体を利用することをお勧めします。

1.「頑張れると思ったんだけど」

優斗さん(中学1年生)は、中学入学直後に部活動での人間関係に悩み、不登校になりました。

最初は原因もわからず、家では静かに過ごしていましたが、ある日ぽつりと「部活、ちょっとしんどかった」と漏らしました。

母親はその言葉に少し安堵し、「よく頑張ったね」と返しました。

しかし、夏休み明け頃から「体育祭、出られそう?」と尋ねた後に、「少しだけでも頑張ってみようか」と声をかけるようになりました。

母親としては、前向きな気持ちを引き出したい一心だったのです。

ところが、優斗さんは次第に口数が減り、ある日ついに「もう頑張れないのに、どうしてそんなこと言うの」と怒りをぶつけました。

それ以降、彼はリビングにも顔を出さなくなり、母親との会話を避けるようになりました。

「元気そうに見えても、それと“頑張れる”は違う」と、母親はようやく気づいたそうです。

2.「無理しなくていい」から「少しは頑張って」に変わった日

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