不登校の子が”自分から動き出す”ために、保護者ができるコミュニケーション法
家でずっと過ごしている不登校の子を見ていると、多くの親は「そろそろ何かはじめてみない?」と声がけしたくなると思います。
- 「そろそろ宿題やってみようか」
- 「フリースクールに見学に行ってみない?」
しかし、タイミングを見計らったつもりで、やっとの思いで声がけしたのに、子どもの顔がみるみるうちに曇っていく…という経験をされた親御さんも多いと思います。
「わかってるよ!」
そう言って部屋に入って行く子を見て、親は途方にくれます。
- 家で暇そうにしているのに…
- ゲームばかりしているのに…
- どうして何もしようとしないのかしら?
不登校の子の多くは、親が何かを言えば言うほど反発しがちです(≒そういう時期もあります)。
それでは、不登校の子が自ら動き出すためには、どうすればいいのでしょうか?
自発性のカギ、「内発的動機づけ」
「内発的動機づけ」「外発的動機づけ」という言葉を聞いたことがありますか?
「内発的動機づけ」とは、「好奇心や楽しさによって、自ら物事に取り組むこと」を指します。
「英語が喋れるようになりたいから勉強する」「面白いと思いながら数学パズルをどんどん解いていく」といったものが内発的動機づけになります。
「外発的動機づけ」とは、「報酬や罰など、他者からの働きかけによって動くこと」をさします。
「テストでいい点を取ったら褒められるからがんばる」「宿題を出さないと怒られるからやる」といったものが「外発的動機づけ」になります。
これはアメリカの心理学者エドワード・デシ氏とリチャード・ライアン氏によって提唱された「自己決定理論」に基づいています。
子育ての本などでも多く取り上げられているので、ご存じの方も多いかもしれません。
内発的動機づけは、外発的動機づけよりも「長期的にやる気を保つことができる」というメリットがあるだけでなく、行動スピードも早まると言われています。
勉強に限らず、不登校の子が一歩踏み出すときも、「外発的動機づけではなく、いかに内発的動機づけを引き出すか」がカギになります。
「内発的動機づけ」を引き出す働きかけ
不登校の子が「自分から動き出したい」と思うような内発的動機づけをするためには、どうすればいいのでしょうか?
ここまでお読みになられた方はおわかりになると思いますが、「勉強しないと叱る」「ご褒美で釣って学校やフリースクールに行かせる」といった外発的動機づけは、真に効果のある方法とならないことがあるのです(ただし、お子さんの状況によっては、外発的動機づけが適切なケースもあるので一概には言えません)。
ポイントは、子ども自身に選ばせることです。
「子どもに決定させたらいつまでもゲームばかりで、動き出さないんじゃないか」というお気持ちもよくわかります。
ただ、人間はコントロールされることを嫌う生き物です。
たとえば、多くの親は、不登校の子どもを塾やフリースクールに行かせたい場合、「食卓の上にフリースクールのパンフレットを置いておく」「●●くんは塾に行ってるんだってと、塾に通っている他の子の話題を出して気を引こうとする」というようなことしがちです。
しかし、「パンフレットを手にとって興味を持ってほしい」「塾に行っている●●くんの話をしたら自分も行きたいと思ってくれるかもしれない」という親の期待は、子どもにとってはコントロールであり、とても不快なものなのです。
遠回しにコントロールするよりも、正面から勧めたほうが効果的です。
もちろん、「フリースクールに行ってみない?」「勉強をはじめてみない?」と言った瞬間、不機嫌になる子もいるでしょう。
ですが、そのときは不機嫌になったとしても、親の言葉は子どもの心に残ります。
子ども自身が「このままじゃいけないな」「なんか暇だな」などと思ったとき、「お母さんが言ってたフリースクール、ちょっと見てみようかな」と思い出すタイミングが来ます。
このように、子どもが自分で決めるタイミングを待つのです。
子ども自身が決めた場合、「フリースクールに行きたい」という気持ちは「内発的動機づけ」となります。
自分で決めたことなので、何かあったとしてもがんばりやすくなったり、続けやすくなったりします。
ちなみに、正面から勧めるとき、「しつこく勧める」「あなたのためと恩着せがましくすすめる」「叱ったり脅したりする」ことはNGです。
まとめ
以上、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」のご紹介でした。
不登校の子がなかなか動き出さないとお悩みの親御さんは、ぜひ、「内発的動機づけ」を意識してみてください。
不登校オンラインでは、これからも、不登校のお子さん(と親御さん)が「次の一歩」に進ための方法を発信していきます。
※ただし、親御さんだけでお子さんのことを対応する必要はありません。また、お子さんには休養が必要な時期もあります。そして、外発的動機づけ(に見えるコミュニケーション)や、他のコミュニケーション法が効果的な場合もあります。不登校の親子をサポートする団体はたくさんありますので、そういうところもぜひ探してみてください。