文部科学省に聞きました! 2学期からクラス変更はできる?
クラス(担任の先生やクラスメイトなど)が合わずに子どもが不登校になったという親御さんから、こんな相談をいただくことがあります。
「2学期からクラスを変えてもらいたいのだけど、そんなこと可能なんでしょうか?」
2024年4月には、新年度の「クラス替えやり直し」が各地で行なわれたことが、大きなニュースになりました。
新学期開始直前の在籍人数の変更や、子ども同士の人間関係への配慮など、理由はさまざま。本格的に学校生活が始まる前に学年全体をシャッフルした「やり直し」事例は、記憶に新しいところです。
では、(2学期の始まり以外の時期も含めて、)不登校から登校を再開したい場合に、学年の途中で1人だけクラスを変更することは可能なのでしょうか?
文部科学省に聞いてみた!〜「しくみとしては可能」です〜
学年の途中でクラス変更が可能なのか。
「不登校オンライン」が文部科学省大臣官房総務課広報室に電話取材を行ったところ、ていねいな回答を得られました。
文部科学省として、積極的にクラス変更を勧めてはいませんが、できなくはありません。詳細については、昨年3月に出されたCOCOLOプランの通知(「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策について(通知)」)を、お読みいただければと思います。(取材日:2024年8月1日)
つまり、しくみとしては可能なようです。その上で、実際にクラスを変わるためには、学校との調整が必要でしょう。
文部科学省の文書にも「学級替え」は「可能」と書かれている
「COCOLOプランの通知」は、文部科学省のウェブサイトで公開されているので、誰でも閲覧することができます。さっそく見てみましょう。
いじめや教員による体罰や暴言等の不適切な言動や指導が不登校の原因となっている場合、こうした問題の解決に真剣に取り組んだ上で、適切な教育的配慮の下に学級替えや転校の措置を活用することも可能であり、児童生徒又はその保護者が希望する場合には丁寧な相談を行うことが求められること。(太字は編集部。以下同様)
参照:「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策について(通知)」(令和5年3月31日)1-(5)
この文書は、各教育委員会や都道府県知事、学校長などにあてて書かれたものです。
では、私たち国民一般に向けて出された「COCOLOプラン」そのものには、どのように書かれているのか、こちらも見てみましょう。
学びたいと思った時に学べる環境を
COCOLOプランには、3つの「目指す姿」が掲げられています。
- 不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整えます。
- 心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援します。
- 学校の風土の「見える化」を通して、学校を「みんなが安心して学べる」場所にします。
1つめの目指す姿「不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整えます。」の箇所には、こう書かれています。
学校に戻りたいと思った時にクラスを変えたり、転校したりするなど本人や保護者の希望に沿った丁寧な対応がされている(p. 4)
続いて、3つの目指す姿について、より具体的な取り組みが記載されています。1つめの目指す姿については、次の5つの取り組みと、それぞれについての詳細が紹介されています。
- 01 不登校特例校の設置を促進
- 02 校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)の設置を促進
- 03 教育支援センターの機能を強化
- 04 高等学校等においても柔軟で質の高い学びを保障
- 05 多様な学びの場、居場所を確保
「05 多様な学びの場、居場所を確保」の箇所を見てみると、意外なことに最初にクラス変更のことが取り上げられています。
学校に戻りたいと思った時に、本人や保護者の希望や状況に応じて、クラスを変えたり、転校したりすることについて丁寧な相談が行われるようにします。(p. 6。参照:「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」(令和5年3月31日))
COCOLOプランでは、2箇所に「クラス変更に対応する」ことがしっかり明記されていたのです!
データに見るクラス変更の実際
では、学年の途中でのクラス変更は実際どの程度行われているのでしょうか。
文部科学省が毎年行っている「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」に、興味深いデータが見られます。
現時点での最新データである令和4(2022)年度の調査結果によると、いじめへの特別な対応として「年度途中での学級替え」が行なわれた件数は、下記のようになっています。
- いじめられた児童生徒……小学校39件、中学校17件
- いじめる児童生徒……小学校17件、中学校23件
「不登校についての対応」ではなく「いじめへの特別な対応」ではありますが、学年途中のクラス替えそのものは行なわれています。しかし、いじめの認知件数(小学校55万1,944件、中学校11万1,404件)を考慮すると、ごくごくわずかであることは否めません。
なお、令和元年から3年の「いじめられた児童生徒の学級替え」の件数を見ると、次のように、最新のデータよりも大幅に件数が多くなっています。
- 令和元(2019)年……小学校111件、中学校119件
- 令和2(2020)年……小学校100件、中学校60件
- 令和3(2021)年……小学校103件、中学校85件
ただしこちらは、「年度途中での措置」と明記されていません。「進級時に全体のクラス再編を実施しないケースで、特別に個人のクラス替えを行なった事例」などが含まれているものと考えられます。
令和4年度の調査から「学年途中の学級替え」と明示されたことで、COCOLOプラン実施前後の比較がある程度は可能になったと言えるでしょう。
「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果は、例年秋に公表されます。
COCOLOプラン実施後初のデータとなる、令和5(2023)年度の調査結果の公表が待たれます。
参考:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
2学期からのクラス変更は「できなくはない」
2学期からのクラス変更はできるのか。
結論としては「『できる』と言えそうですが、現実的には『できなくはない』」といったところでしょう。
COCOLOプランが出されてまだ1年あまり。COCOLOプランの浸透や、方針への理解はまだまだ十分とは言えません。
そして現状では、クラス変更には保護者と学校のていねいな話し合いが欠かせません。冒頭の文部科学省担当者のことばには、COCOLOプラン推進のための体制を整えることが難しい地域・学校への配慮も見て取れます。
公教育は変わってきています。学年途中でのクラス変更も、事例が増えていけば、変更のタイミングなどのノウハウが蓄積され、後に続く子どもたちへも道が拓かれていくのではないでしょうか。
COCOLOプランはまだ始まったばかり。今使えそうなところはしっかり活用して、将来のよりよい施策につなげていきましょう。
今後も「不登校オンライン」は、学年途中のクラス変更など、不登校の子どもたちと学校の関係のあり方を、さらに深掘りしていきます(※今回の続編として、「校長先生などの見解を紹介する記事」を作成中です)。