子どもがつらい思いをしているかも? 無意識に出しているSOSサイン5
不登校の経験者に聞くと、学校に行かなく(行けなく)なる前に、本人にサインが出ていたとよく聞きます。
学校での環境がつらいと感じていたり、ストレスがかかっているとき、どんなサインが出ているのでしょうか。
不登校ジャーナリスト・石井しこうさんの著書から、教えてもらいます。
※この記事は石井さんの著書をもとに不登校オンライン編集部で作成したものです。
SOSだと気づきにくい代表的なサイン5つ
学校でのストレスが原因とは、すぐには結びつかないSOSサイン。
学校で過ごす時間がつらいのに頑張って行っているときにこそ、こんなSOSが出されている場合があります。
宿題(勉強)に手がつかない
とくに気づきにくいのは「宿題が手に付かない」です。(中略)宿題が手に付かないのは、やる気がないとかサボりたいからではありません。とても大きな不安があると、宿題を提出しなければならないとわかっていても、ひと文字も書けなくなることがあります。
他に夢中なことがあって、宿題に手が回らないのではなく、不安要素が大きくて手がつかない状態です。
大きなストレスを抱えていなくても、「宿題をやりたくない」ときはあるので、SOSのサインとはわかりにくい部分があります。
ただ、可能性の一つとして、こんなサインもあるということを頭の隅に入れておくのがいいかもしれません。
体調不良
頭が痛い、お腹が痛いと訴えるけれど、病院に行くと問題がないことも。また、(学校に行く前などに)突然始まったり、収まったりすることもあります。
食欲不振
よく食べるはずだった子どもが急に食べなくなるのもよく耳にするサインです。食事を共にすることは多いはずなので、比較的わかりやすいサインかもしれません。
情緒不安定
思春期であれば、イライラしたり、親に理不尽に当たるのはよくあることです。とはいえ、数週間単位などで明らかな変化がある場合は、SOSサインとなっている可能性も。
不眠
子どもと寝室を分けている場合は、睡眠時間がどれくらいか、わかりにくいこともあります。
ゲームやスマホをやっていて夜更かししている場合もあるかもしれません。とはいえ、明らかに「眠りたいのに眠れない」状態になってないかは気を配っておきたいところです。
「何かしら、子どもの調子がよくない」というのはわかるはずです。
しかし、これが学校でのストレス、不登校の兆候かもしれないというのは、すぐに結びつきにくいのではないでしょうか。
サインがあるとき、保護者はどう対応したらいい?
不登校経験者の多くが発していたSOSサイン。子どもに当てはまっているとき、保護者はどんな対応をすればいいでしょうか。
接するときは、あくまで子どものペースで
子どもが不安定なときにどう対応するか、気をつけておきたいポイントです。
これは、子どもが不安定でなくても、常に子どもとのコミュニケーションの際には気をつけておきたいポイントでもあります。
雑談をしてみる
子どもは雑談をしたがっています。「チャイルドライン」という子どものための電話相談機関での相談内容トップ3に入っているのは「雑談をしたい」とのこと。
雑談は相手に何も求めない時間とも言い換えられると思います。そういう時間をシェアすることで、「あなたはそこにいていいんだよ」というメッセージを子どもは受け取ることができます。
子どもの好きなことをやってみる
子どもが不安を抱えていたり、あるいは思春期だと、なかなか雑談できる状態にはなっていないかもしれません。
そんなときは、子どもの興味があるものを保護者も実際に試してみてはどうでしょうか。
例えば、ゲームをやったり、動画を見たりしているのなら、保護者も「興味を示して」みてください。
子どもだけの世界で保護者に入ってほしくない場合もあるかもしれませんが、子どもが許容してくれるなら、トライしてみます。
必ずしも同じゲームや動画でなくてもOK。
実際にやってみたら「ゲームを⚪︎分で切り上げるのは難しい」と感じたり、「動画をついつい見てしまうシステムになっている」という発見もあるはず。
「ゲームやスマホばかりやっている」という目線が少し変わるかもしれません。
聞き手に徹して、話をコントロールしない
子どもが話し始めたら、先に立って話を先導しようとせず、あとをついていくように話を聞いてあげてください。(中略)まずは聞き手に徹してあげてください。子どもの話をコントロールしようとしたり、保護者の方が期待する結論に結びつけようとしたりするのは、やめてあげてほしいのです。
当たり前ですが、子どもより大人のほうが人生経験が豊富で、たくさんのことを体験しています。
あるいは、子どもの発言が自分の考え方と違うこともあるでしょう。
ゆえに、つい先回りして話をしたり、アドバイスしたくなることもあります。
例えば、「宿題が終わらなかった…」と言われたとき、「終わらなかった」ことに隠れている不安や焦りがあるかもしれません。
「だから早めにやりなさいと言ったよね!」と口を挟まずに、「そっか、宿題ができなかったんだね」と受け止めてみましょう。
「終わらなかったのが、つらかった?(不安になった?)」と、子どもを主体にして話を聞いてみると、子どもも安心して話ができるかもしれません。
心配していることは伝えてもいい
子どもが何か悩んでいそうなら、つらそうだなと思ったら率直に聞いて大丈夫です。「心配している」という気持ちを伝えて「何か悩んでいるの?」「何か不安があるの?」と聞いてみてください。
「『心配している』という気持ちを伝えて」という部分がとても大切ではないでしょうか。
原因を掘り下げる必要はなく、子どもを心配している(大切に思っている)ことを伝えることが大事です。
子どもの意思を尊重する=学校を休みたがったら休ませる
子どもから「学校を休みたい」と申し出たときは、素直にその要求に寄り添いましょう。
その発言はサインではなく、自覚をもって学校での生活はつらいと訴えていることと同じです。
子どもが風邪を引いたら誰かが付き添うのと同じく、同じように保護者も一緒に家で過ごしてみましょう。
しかし、仕事をもっていたり、介護があるなど、保護者が外に出なくてはいけない場合もあります。
1日、2日はいいけれど、これが長くなったら?と焦る気持ちもあるかもしれません。
それでも、いったんは子どもの気持ちに寄り添ってみましょう。
長期的な対応は保護者だけでなく、積極的に学校や第三者機関へ相談することが大切です。
保護者側から見ていないか?NGな対応は?
良かれと思ってした発言が、子どもにとっては負担になることもあるので、とっさに発言、対応する前に、一呼吸おいて考えてみましょう。
「もう少し頑張ってみよう」はNG
子どもが学校を休みたいと伝えてきたときに、保護者がつい言いがちな言葉です。
しかし、子どもはすでに大いに「頑張って」きている状態での訴えです。
自分のことを理解してもらえないと考えてしまうかもしれません。
学校を休みたいと言う子どもは、強いストレスを受けています。(中略)「もう少しがんばってみよう」と言われると、子どもはすごく苦しくなります。まわりの人が励ますつもりで言った言葉も、子どもを追い詰めてしまうのです。
「気にするな」「仕方がない」はNG
上記の2つの言葉を良かれと思って言うことがあるかもしれません。
しかし、この言葉で子どもが抱えている不安が取り除かれることはありません。
不安や葛藤に対しては、共感を示してください。
「気にしないで」「仕方がないよ」というのは、あるシーンでは励ましにもなり得る言葉です。しかし、「問題を取り合わない」というサインにも感じる可能性もあります。
そんなときは、子ども自身が抱えている不安に寄り添ってください。とはいえ、共感は「ふり」だけでもOKです。
「傾聴」が大事です。でも、聞いているとイライラすることもあるでしょう。(中略)できない場合は「傾聴役」という芝居を打つと心に決めてください。本心までコントロールしなくてもいいんです。素晴らしく理解のある親、子どもの苦しみをまるごと受け止める親になんて、誰もなれないんですから。
ゲームやスマホを取り上げる
不安な状態で「やらなくてはいけないこと」があるとわかっていても手がつかない。
それでも、ゲームやスマホならば触っていられるという場合は多いかもしれません。
ストレスから一時的に解放される場所として、「逃げ場」になっているものを取り上げれば、余計にストレスがかかったり、反発されてしまうことにもなりかねません。
無闇にゲームやスマホを取り上げるのは、子どものニーズに寄り添っていないことになります。
無理に将来の話をする
ひとつ気をつけたいのは、無理に勉強や将来の話をしようとしない、ということです。子どもがその話に触れてきたら話を聞いてあげてください。
あくまで子どものペースで話を聞くのが基本です。
ちょっと会話ができたから、それを機会にいろいろと聞きたくなってしまうのは保護者として自然なことです。
しかし、少しだけ自分の気持ちを抑えて、子どものペースを優先してください。
子どもと接するとき、保護者側のペースにもっていかないことが大切ですが、すべてにおいて子どもを優先すべきというわけではありません。
保護者の不安やつらさ、思いなどは、第三者機関など家族以外で頼れる場所を探して、サポートする側のケアも忘れないでください。
自分をケアすることで、家庭では子どもに寄り添う余力が出てくるはずです。
・子どもがのびのびと育つためにできること
・子どものSOSをキャッチするためにできること
・子どもが学校に行かないときにできること
・子どもの将来のためにできること
などが書かれています。ぜひ、手に取ってみてください。
石井さん著書:『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき、親ができること』