通信制高校ってどうなの? 不登校中高生の親が知っておきたい通信制高校の「今」

#不登校#行き渋り#通信制高校

親世代の高校時代とは様変わりした通信制高校。少子化で高校生の総数は減っているにもかかわらず、通信制高校の生徒数は年々増えています。
不登校の子どもの進学先・転校先としてもニーズが高まっている、通信制高校の「今」に迫ります。

高校生の11人に1人が通信制高校の生徒

29万0,118人 

これは、全国の通信制高校に在籍している生徒の数です(2024年5月1日現在)。
日本の高校生は318万8,533人*ですので、高校生のおよそ11人に1人が通信制高校の生徒ということになります。

親世代が高校生だった平成2(1990)年はおよそ35人に1人、平成7(1995)年はおよそ32人に1人。
当時と比べると「今は意外に多いな」という印象をもたれたのではないでしょうか。

なお、通信制高校には年度途中入学もできます。
公立校の約17%、私立校の約30%の生徒が年度途中入学者です(令和3年のデータ)。

*全日制、定時制、通信制および専攻科、別科の生徒の総数。


通信制高校って実際どんな高校?

地域にもよりますが、親世代が中高生だったころ、通信制高校への進学者は少数派でした。
「働きながら勉強」「独力で勉強」あるいは「(経済的理由等で)進学できなかった大人が学ぶ学校」というイメージがありました。
中高生時代には、通信制高校の存在を知らなかった人もいるかもしれません。

高等学校通信制課程は、「勤労青年に高等学校教育の機会を提供するもの」として戦後に制度化されたものです。
近年では、教室授業に限定されない学び方が注目されています。自分のペースで学ぶことができるため、不登校経験のある生徒などのニーズが高まっています。

昭和57(1982)年には、6割が正社員として働きながら学ぶ生徒でした。
令和5(2023)年には正社員はわずか数%**。一方で、6割超が小・中学校・前籍高校での不登校経験者、2割が心療内科等に通院歴のある生徒です。

こうした状況から、私立校を中心に柔軟な学習カリキュラムを用意する学校が増えています。株式会社立の通信制高校などでは、AI技術などの先進的な学びを提供している例もあります。

**狭域校2.7%、広域校6.3%。狭域・広域については後述。


通信制高校での学び方

通信制高校は、制度上、以下のような学習方法が定められています。

・通信手段を主体とし、生徒が自宅等で個別に自学自習することとして、添削指導・面接指導・試験の方法により教育を実施。
・これらに加えて多様なメディアを利用した指導を行うことができる。

 

■添削指導

生徒が提出するレポートを教師が添削し、生徒に返送することにより指導を実施。

通信教育用に低価格の郵便料金区分があります(第四種郵便)。
現在は、メールなどインターネットの利用が増えています。

■面接指導(スクーリング)

教師から生徒への対面指導、生徒同士の関わり合い等を通じて、個々の生徒のもつ学習上の課題を考慮した個人差に応ずる指導を実施。


学校によっては、オンラインで行うこともあります。
また、生徒同士の交流のため、学校行事と合わせて行う場合もあります。

■試験

添削指導・面接指導等による指導を踏まえ、個々の生徒の学習状況等を評価。


登校して受ける学校と、オンラインでも受けられる学校があります。

■多様なメディアを利用した指導

ラジオ・テレビ放送やインターネット等を利用して学習し、 報告課題の作成等を通じて指導を実施。


テキストでの自習だけではなく、映像授業等を受けられる学校もあります。
また、高等学校学習指導要領には、所定の面接指導(スクーリング)時間数を、メディア利用の学習によって減らすことができる特例があります。

通信制高校でも「場所」は重要

基本的に通学しない通信制高校ですが、どの学校でも選べるわけではありません。
通信制高校には、次の2つの種類があります。

狭域通信制高等学校学校のある都道府県と、隣接する1つの都道府県の生徒が対象。公立校に多い。
広域通信制高等学校3つ以上の都道府県の生徒が対象。地域を限定している学校も、全国から入学できる学校もある

■協力校の場所もチェック

現在、全国の通信制高校は、独立校=通信制課程のみ設置の高校が136校(うち公立6校)、併置校=全日制課程と通信制課程を併置している高校が167校(うち公立73校)あります。

そのほかに「協力校」が全国に297校設けられています。
協力校とは、スクーリングと試験のために校舎を貸すなど、通信制高校に協力している学校のことです。必ず「高等学校」でなければならないという条件があります。
特に広域通信制高等学校は、スクーリングや試験で学校へ行くのに不便なケースがあります。協力校が近くにあれば、在籍している通信制高校まで行かなくても、そこでスクーリングと試験を受けることができます。
学校を選ぶときには、協力校が近くにあるかどうかも要チェックです。

日常的に通学できる通信制高校もある!

自習が基本の通信制高校でも、日常的に「通学」できる学校もあります。
「一人だとサボってしまいそう」「友だちとの高校生活がないのは寂しい」という人には、「通学コース」のある通信制高校が適しています。
「通学コース」は「週1日以上通学して学習するコース」です。
通学の機会があれば、本人が望まない孤独・ひきこもり状態を避けられます。さらに、学校によっては全日制高校の生徒と同じようなライフスタイルを選ぶこともできます。
通信制高校の生徒のうち、半数以上が何らかの「通学コース」を利用しています(平成29年のデータ)。

通学コースは、以下の2つに分けられます。

■自校通学コース

通信制高校の校舎などに通って、高校の教職員の指導を受けるコースです。

■提携通学コース

通信制高校が提携する教育施設(いわゆる「サポート校」)へ通うコースです。
「サポート校」は、民間企業や学校法人などが運営している「塾のようなもの」です。在籍校への学費とは別途費用がかかります(試験やスクーリングのための協力校とは別のものです)。
通信制高校のウェブサイトやパンフレットなどに「在校生が利用可能な通学コース」として紹介されています。
私立校の「提携通学コース」では、約7割が週5日の登校コースを選んでいます(平成29年のデータ)。

親もこっそり情報収集を

不登校の子どもも、進学や勉強について心配しています。しかし、心身が回復するまでは具体的なアクションができないのが現実です。
親が先回りして「ここがいいよ!」と教えたくなるところです。
でも、最終的に進路を選ぶのは子ども自身。

とはいえ、不登校の中高生にとって、進学・転校先として通信制高校は有力候補。
いざというときに慌てないように、こっそり情報収集しておいてはいかがでしょうか。

次回は、通信制高校へ「転校」したい場合について、ノウハウをご紹介します。

参照:
文部科学省 令和6年度学校基本調査(速報)、令和6(2024)年8月28日付
文部科学省 第14回高等学校教育の在り方ワーキンググループ(参考資料5)「検討を進めるための参考資料」、令和6(2024)年9月14日付

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