【世界の不登校】多様性の国・マレーシアで不登校に!?「マイノリティでも独りじゃない」不登校を経験したジーバンさんの実話

マレーシアで不登校を経験したジーバンさんにインタビュー
多様な文化を持つ人が共存する、多民族国家のマレーシア。
マレー系、中華系、インド系をはじめ、さまざまな背景を持つ人々が一緒に暮らしています。
今回インタビューしたのはマレーシア人のジーバンさん。
小学生のときにマレーシアで不登校を経験したひとりです。
キズキ共育塾(※)の不登校相談員である寺田が、旧知の友人ジーバンさんにお話を聞きました。
(※キズキ共育塾:不登校オンラインと同じく、株式会社キズキが運営する「不登校の人たちのための完全個別指導塾)
ルーツの違いで友達づくりに苦戦した小学校時代
それぞれ違う文化を持つ人同士、共存することが当たり前のマレーシア。
しかし、ジーバンさんの学校には同じルーツを持つ友だちが少なく、マイノリティとして見た目や習慣をからかわれることが多い学生時代だったといいます。
彼は宗教上の理由から髪とひげを長く伸ばし、ターバンを巻いています。
その珍しさから、小学校ではいじめを受けました。
マレーシアでは、異なる民族が一緒に暮らしているけれど、仲良しグループとしては同じ民族同士で固まることが多いんです。生活習慣や食事の違いもあるから、自然とそうなってしまう。でも、僕は同じルーツを持つ友だちが学校に少なく、仲良しグループができづらかったんです。

キズキ共育塾不登校相談員・寺田(左)と、中学時代のジーバンさん(右)
先輩からのアドバイスで不登校から脱出
小学生の頃から、「ルーツや見た目がみんなと違う」ことでいじめを受け、不登校の時期もあったジーバンさん。
そんな彼の支えになったのは、同じルーツを持つ人々の週末の集まりでした。
仲間と共に食事をし、語り合うときが、彼にとって一番の安らぎの時間だったといいます。
ある日、ジーバンさんは集会の中で、学校でのつらい経験を打ち明けました。
すると、驚くほど多くの友人が「自分も同じ思いをした」と共感してくれたのです。
自分だけの悩みだと思っていたジーバンさんは、友人の意外な反応に衝撃を受け、仲間が傷ついていることに怒りを感じましたが、同時に「ひとりじゃない」ことの安心感もあったといいます。
さらに、先輩がこんな言葉をかけてくれました。
「学校だけが世界じゃない。自分が心地よくいられる場所を探して、そこを自分の中心にすればいいんだよ。」
その言葉をきっかけに、ジーバンさんは自分の居場所を学校の中だけに求める必要はないと気がつきました。
どうしても子どものころは「学校が社会のすべて」のように感じていました。
しかし、歳の離れた先輩が他にも居場所があることを教えてくれて、パッと世界が広がったことを覚えています。
また、先輩の言葉を通じて、もう一つ気づいたことがあったといいます。
「この人と自分は違うから友達になれない」と、自分自身も無意識に壁を作っていたのかもしれないと思い直したんです。
そう気づいてから、意を決して学校に戻り、自分から積極的にクラスメイトと関わるように行動を変えました。すると、次第に学校も自分にとって居心地の良い場所に変わっていきました。
もちろん、理不尽にからかわれたりする経験がなければ、もっと楽に学校になじめたと思います。
しかし、違いを認め合う雰囲気づくりは自分から仕掛けていくこともできると思い、行動しました。
万国共通の合言葉「ひとりじゃないよ」
マレーシアには “Satu Malaysia(マレーシアはひとつ)” という有名なスローガンがあります。
異なる文化を持つ者同士が互いを尊重しあい、一丸となって国を成長させていこうという理念です。
違いを認め合い、尊重し合うマレーシア国民の理念を誇りに思っています。
しかし、そんな素晴らしい理念のもとでも、学校や個別の人間関係に焦点を当てると、差別やいじめが存在するのも事実です。
国が違っても、人間関係の悩みには共通点が多いのではないでしょうか。
「見えている場所だけが世界のすべてではないこと」
「同じ悩みを持つ人は自分だけではないこと」
僕の経験から得たこの2つのヒントは日本で悩むお子さんの力にもなるかもしれません。
日本にも不登校やいじめの問題があることを、このインタビューを受けるまで想像もしていなかったというジーバンさん。
「国が違っても同じような悩みを抱えている人がいる。それをこのインタビューを通して知ったことで、ますます『ひとりじゃない』という確信が強まりました。」と話してくれました。
「見えている世界が全てだと思わないでほしい。
今の場所がつらくても、必ず理解者と居場所は存在している。」
それが、過去のつらい経験を乗り越えたジーバンさんが、今、不登校に悩む日本の親子に最も伝えたいことだといいます。