児童精神科看護師・こど看さんが“不登校の親の悩み”に答えます（2）〜母親にだけ当たり散らす息子。思春期も重なり、どうしたらいいかわからない〜
2025年10月24日（金）、「学校休んだほうがいいよチェックリスト（※）」を運営する3団体が、児童精神科看護師・こど看さんをお招きして、無料のオンライン講演会を実施いたしました。
テーマは「【児童精神科看護師×不登校支援のプロ】不登校の子どもの気持ちとは…？保護者のギモン解決SP」。
オンライン講演会でのこど看さんからのメッセージと、不登校のお子さんがいる親御さんからお寄せいただいた質問へのご回答を、全3回に分けてご紹介します（一部の表現は、不登校オンライン編集部が編集を行っております）。
※学校休んだほうがいいよチェックリストとは
子どもが「学校休みたい」「学校行きたくない」と言っているけど、休ませていいのかな？と心配になっている保護者の方に向けたチェックリストです。簡単な質問に答えるだけで、精神科医からの回答結果が届きます。運営は、不登校ジャーナリスト・石井しこう、好きでつながる居場所「Branch」、不登校の子のための完全個別指導塾「キズキ共育塾」の3団体が行っています。
質問3：指摘に過剰な反応をする息子。物事をどう教えたらいい？
中里：
小学校3年生のお子さんの保護者さんからです。背景と質問に分けていただいています。
背景。
完全不登校になり、もうすぐ丸2年になる小3の息子がいます。自閉スペクトラム症、診断済み。不登校になった当初は、不安が強く、お母さんが死んだらどうしようと毎日怯えていましたが、少しずつ回復し、今は服薬なし、家で日々笑って過ごせています。
学校への不安はありますが、笑顔が多く、明るい子です。質問。
指摘されると過剰に反応する子に、どう物事を教えていけばいいのでしょうか？全てに過剰反応するわけではなく、服が後ろ前、逆だよには、あ、失敗失敗と笑って直せるけど、シャンプーの時の後ろの頭も洗おうねと声掛けすると、頑張っているのにひどい。そんな言い方しないで。説教しないでと、涙目になります。苦手だけど頑張っているポイントだったかと反省しつつ、こうも過剰反応されてしまうと今後、新しいことを教える時に、どう伝えればいいのか？と悩ましいです。指摘されると傷つく子どもが身構えず聞けて、染み込む伝え方をアドバイスいただけたら嬉しいです。
こど看：
質問者さんの「苦手だけど頑張っているポイントだったかと反省しつつ」という視点は、素敵だなと思います。
「頑張っていたんだな」と気づけるということは、本人がもう既にできているポイントにもたくさん気づけていると思うんですよ。
なので、「服が後ろ前、逆だよ」と言いたくなったら、まず服が着られているっていうところに注目してはいかがでしょうか。シャンプーについては、「シャンプーっていう行動をまずとろうとしている」ところ。
私は、指摘の前段階で、今できているところに気づく、そしてそこにまず声を掛けるようにしています。
なので、「服着られたんだね。いいじゃん。今日もバッチリじゃん」みたいな感じで言って、その後に「あれ？これ、後ろだったっけ？」と。お子さんからは「そんな言い方しないでよ」とか言われるかもしれないんですけど。
お子さんは家で日々笑って過ごせているので、家の環境は整っている上での、質問者さんにちょっとした甘えがあっての反発だと思います。
ですので、今の視点を大事にしつつ、私が言ったポイントも取り入れてはいかがでしょうか。
中里：
できている点や、ここまでできたねっていうスモールステップの前段階のようなところをちゃんと褒めつつ、ということですよね。
こど看：
そうですね。小学校3年生で、特に男の子だとプライドもかなり出てくるので。「自分は、もう何でもできるぞ」みたいな感じで、できることもどんどん増えて、万能感が前面に出てくる時期でもあるので。
だから、ちょっと指摘されると。「できなかった。そんな。うわ、もうなんでそんなこと言うんだ」みたいな感じになります。
「自分は何でもできちゃう」みたいなところも成長には必要なので、ぜひそのままの素敵な視点を持っていてもらっていいんじゃないかなと思います。
質問4：母親にだけ当たり散らす息子。思春期も重なり、どうしたらいいかわからない
中里：
中学1年生のお子さんの親御さんです。
不登校3年。今年から適応指導教室に行ったり、別室に行ったり、いろいろと回復してきたんだなと思っていたのですが、夏休み明けから全てできなくなりました。
本人の意思で動いていたと思っていたのですが、頑張って頑張ってエネルギーがなくなったんでしょうか？今は、家でゆっくり好きなことをしているはずなんですが、目が虚ろで元気がないです。
また、それと同時に特性もあるのですが、癇癪がひどくなりました。母親にだけ当たり散らかします。私の対応が間違っているから癇癪が起きているんだと思います。
何も言わないで言わなければ癇癪で、何か楽しく話していても気に入らないことがあると癇癪。思春期も重なり、どう接したらいいのか分かりません。
こど看：
この質問者さんも、お子さんのことをすごく観察されているなと思います。だからこそ、「エネルギーがちょっとなくなってきているから、好きなことをしていても目が虚ろなんじゃないか」と気づいているのかなと思います。
大人もそうですけど、疲れているときや考え事をしているときは、イライラしやすかったり、物事をネガティブに捉えたり、大切な人に当たっちゃったりすると思うんですよね。
このお子さんも、まさにそんな感じでお母様に当たっている可能性はあります。専門的な言葉になるんですけど、「両価的」ですね。アンビバレンス。中学1年生だと、「好きだけど、嫌い。甘えたいけど、ウザイ」みたいな、両極端の気持ちを両方同時に持ち合わせる時期に入ってくるんですよね。
だからこそ、親としては、子どもから「親はウザイけど頼りにしたい」などのメリハリが急に出てきて、困惑するんですよね。「こんなに癇癪を起こして、こんなんじゃなかったのに」と、親御さんの気持ちも穏やかではなくなると思います。
そういったときは、語弊があるかもしれないんですけど、放っておく、距離を置くっていうのは大事なのかなと思います。
「甘えたいけど甘えたくない」という両方の面があるので、「手助けするところは手助けするけれども、本人ができるところは少し距離を置く」。
これは、親御さんのためでもあります。なので、「どう接したらいいか？」よりも、「どう接さずにその子が安全に暮らせるか？」を考えていくのも1つの方策かなと思いますね。
伊藤：
こど看さんのお話を伺って思ったのは、コミュニケーションって、「そのときだけのやり取り」じゃないんですよね。一緒に暮らしていく中で、1年も2年も10年も何十年もずっと続いていく、その一連が全部、親子コミュニケーション。その中で、どうやって信頼を築いたりしていくかということなんですよね。
例えば、「これを言うと子どもは嫌がるから必要なことを言わない」と遠慮するのが良いのではなくて、伝えなきゃいけないことは伝えなきゃいけないんだけれども、伝え方をどうしたらいいかという、その工夫が大切。また、それだけじゃなくて、普段から信頼関係があれば伝わりやすくなるみたいな長期的な作戦なんだなと思いました。
石井：
こど看さんからは「よく観察されているな」という言葉が出てきていまして、この感覚が私たちには新鮮というか、ないところだと思うんですね。
私たちは「何をアドバイスしたらいいか？どういうふうにやったらいいか？」という「アプローチ」を考えてしまうんです。
子どもを見れば見るほど、子どもの話を聞けば聞くほど、子どもの状況は良くなると。何もしていないかのように感じるんですけど、実は、そこがスタートだということを、お話からずっと感じました。
中里：
観察が、染み込んでいる感じがしますよね。
こど看：
はい。そうですね。どうしてもやっぱり見ちゃいますね。
また、「親御さんが、そのお子さんをどう見ているか。どう捉えているか」という視点で見ると、親御さんがこれまでしてきた工夫や苦労が浮かんで見えてきます。
そこから、「じゃあ、親御さんには、こういう支援が必要なんじゃないか」というところに繋げていけるので。もちろん声掛けとか、距離感っていうのもありますが。
（第3回に続きます。）
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